Another Daily -One day of rainy season- 01
元々は、去年の文化祭に提出する予定のものでした。なので、一応Daily本編を読んでいなくても何と無く読むことは出来ますが、出来れば本編と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
それではお楽しみ下さい。
雨が、降っている。
今は六月、梅雨の真っ只中だ。だから雨が降るのは当然なのだが、しかしこうも毎日雨が続くと流石に気が滅入る。
雨は、好きだ。しとしとと静かに降るような雨は、特に。そうした雨は、見ていると心の中のわだかまりや苛立ちを解きほぐし、そっと優しく洗い流してくれそうな気がする。
それでも、梅雨だけは別だ。梅雨はじめじめしていて、俺はどうも好きになれない。
閑話休題、日曜日の今朝に限って何故だか早く目が覚めた俺は、雨がほとんど降っていなかった事もあり、家から徒歩10分の距離にある大きな公園へと散歩に出かけたのだった。
少し歩くと雨は上がったので、俺は傘を閉じた。公園に入り、ぐうぅっと伸びをする。ふと花壇を見ると、たくさんの紫陽花が咲いている。色も青紫や赤紫、淡紅色等、様々な色があり、とても綺麗だ。携帯電話のカメラを起動させて、2、3枚写真を撮る。
カシャリ。
写真を撮り終えた俺は、公園のジョギングコースに入り、そこを歩きだす。うん、実に悪くない。朝の空気が美味しい。
そうしてしばらくのんびりと歩を進めていると、少し先に一人の少女が見えた。犬の散歩をしているらしく、犬をつないだリードを右手に握っている。但し、後ろを向いているので顔は分からない。少女であると判断したのも、腰まで届くほど長いストレートの黒髪と、白いワンピースを着ている、という理由によるものだ。…もしあの少女が実は髪の長い女装したおっさんとかだったらどうしような…。
写真でも撮るか。カメラは有ることだし。
そんな他愛もない事を思いながら、尚も歩き続ける。彼女との距離が、少しずつ縮まってゆく。そして、その少女がこちらを振り向いた。
「────ッ!」
思わず、その美しさに息を呑んだ。すっきりとした一重瞼にはっきりした目鼻立ち、薄い唇────。思わず、見惚れてしまっていた。
そうして見惚れて固まっていると、彼女が口を開いた。
「あら、暦君」
「……誰?」
こんな美少女、心当たりが────。
「…………」
俺が所属している成華学園演劇部には、何故か美少女が多い。理由は分からないが、何故かそうなのだから仕方がない。
まあそんな訳で、クラスメイトにはよく羨ましがられる。
そんなこんなでまあ美少女に関する心当たりはなきにしもあらず、といったところだが、やはり彼女のことはなかなか思い出せそうにない。