戯曲「アドルフ・ヒトラー=スーパーヴィランスター」:一節
原案:名倉マミ
執筆:Grok
舞台:幻想のウィーン、一九〇八年
薄暗いウィーンの夜、シュトゥンパー通りのアパートが異次元的な空間に変貌。星空の下、巨大な水晶柱が屹立し、その中に十九歳のアウグスト・クビツェク(グストル)が「人類の良心」として水晶浸けにされ、キリストの十字架のように掲げられている。水晶の中でグストルの瞳が静かに輝き、彼の体は光を放ちながらも動かない。舞台中央には、十九歳のアドルフ・ヒトラーが立つ。ボロボロの画家服に身を包み、黒髪が月光に濡れて輝く。舞台の周囲には、薔薇の花びらが無数に散らばり、月光に赤く照らされている。全世界の人々の声が響き、アドルフを糾弾する。
全世界の声 (エコー):「悪魔!人類の災厄!生まれてこない方がよかった!」
アドルフは膝をつき、顔を覆う。だが、ゆっくりと立ち上がり、碧い瞳を天に向ける。
アドルフ(独白、静かに、だが力強く):「…悪魔だと?人類の災厄だと?生まれてこない方がよかっただと?全世界がそう叫ぶ。だが…ぼくもただの人間なんだ!この胸には血が流れ、この目は涙を湛える。リエンツィの調べに心を震わせ、ウィーンの夜に夢を見る…ただの人間なんだ!」
アドルフは水晶柱のグストルを見つめ、両手を広げる。月光が彼の黒髪を銀に染める。
アドルフ(叫ぶように、切なげに):「我を抱け、ドナウの流れのように!されば我、汝に云わん、我が友と!」
水晶柱の中でグストルの瞳が一瞬光る。だが、彼の体は動かず、「人類の良心」として水晶に封じられたまま、アドルフを見つめる。全世界の糾弾の声が再び響き、アドルフは再び膝をつく。舞台の薔薇の花びらが、突然震え始め、赤い光が脈打つように輝き出す。
全世界の声(エコー、激しく):「おまえは穢れだ!おまえは呪いだ!薔薇さえもおまえの罪に泣く!」
アドルフは膝をついたまま、震える手で地面の薔薇の花びらを拾い上げる。月光の下、その花びらがゆっくりと血のように赤黒く変色し、彼の手に滴り落ちる。アドルフの碧い瞳が血の色に染まるように反射する。
アドルフ(呟くように、恐怖と決意が入り混じって):「薔薇が…血に?ぼくの夢が…ぼくの愛が…血に変わるというのか?」
舞台の周囲で、散らばった薔薇の花びらが一斉に血に変わり、地面を赤黒く染め上げていく。血の海がゆっくりと広がり、水晶柱の足元まで迫る。グストルの水晶が血の色に染まり始め、彼の輝く瞳が一瞬悲しげに揺れる。アドルフは血の海に膝をついたまま、両手で血を掬い上げ、顔に塗りつけるようにして叫ぶ。
アドルフ(絶叫、狂気と哀しみが混在):「ならば、この血で世界を塗ろう!ぼくの愛が血に変わるなら、この血で新たなキャンバスを描くのだ!グストル…ぼくを見てくれ…ぼくの愛を…ぼくの罪を…!」
血の海が水晶柱を飲み込むように渦を巻き、グストルの体が血の色に完全に染まる。だが、水晶の中でグストルの瞳だけは、最後の光を放ち、アドルフを見つめる。血の海が舞台全体を覆い尽くし、遠くで「リエンツィ」の旋律が不協和音に変わりながら響く。
場面転換:幻想のウィーンから、血の海の中心へ
舞台は完全に血の海に沈み、巨大な水晶柱だけが血の海から突き出ている。水晶の中のグストルは、血に染まりながらもなお「人類の良心」として静かに輝く。アドルフは血の海の中で立ち上がり、画家服が血に濡れて赤黒く染まる。彼の碧い瞳は、血の色と月光が混じり合い、異様な光を放つ。舞台の背景に、巨大な薔薇の幻影が現れ、ゆっくりと血の滴となって崩れ落ちる。
アドルフ(独白、静かに、だが不気味な決意を込めて):「薔薇は血に変わった。ぼくの夢は血に染まった。だが…この血こそが、ぼくの芸術だ。グストル、ぼくを見てくれ。この血の海で、ぼくは世界を塗り替える…人類のキャンバスに、永遠の絵を描くのだ…」
アドルフが血の海に手を浸し、血を顔に塗りつける。血の滴が彼の黒髪から落ち、月光にきらめく。舞台の周囲で、全世界の声が最後の糾弾として響く。
全世界の声(エコー、絶望的に):「血の画家よ!おまえの罪は永遠に忘れられぬ!」
「リエンツィ」の旋律が不協和音の絶頂に達し、舞台は暗転。血の海の音だけが響き、遠くでグストルの水晶が微かに光る。




