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魔力が多すぎて親に愛されなかった子が親の気を引きたくて自殺してしまった体に入れられてしまった。  作者: 瀬崎遊


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07

 体と記憶が日常生活に困らなくなった頃、父との面会をなんとかもぎ取った。


 10回以上お願いしてやっと会ってもらえることになった。


 父親はオドオドとした態度でそれを見せられると苛ついてしまう。


 ぐっとお腹に力を入れて溢れ出そうとする魔力を抑え込む。



「お父様、わたくし、記憶の最後で婚約破棄されたと思うのですが、それはどうなっていますか?」


 父親はやはりオドオドして目を合わせてくれない。


「はっきり仰ってくださっていいですよ。何もしませんから」


「そ、そうか⋯⋯? いきなり、屋敷⋯⋯壊したりしない?」

 

「しませんよ!!」


 ちょっと強く言い過ぎたのか父親は部屋から飛び出して行ってしまった。


「あっ⋯⋯⋯」


 何度も謝って屋敷を壊さない。


 父親にも怪我を負わせない。


 という約束をして、私から一番遠くて扉に近い場所に腰を下ろしてもらうまで二時間掛かってしまった。




 そして父親はよほど言いにくいのだろう。目を合わせず、挙動不審のまま事の顛末を話してくれた。


「デイヴィットが『もう我慢できないっ!』って婚約破棄を言い出した後、ナンシーが怒り狂った事は覚えているかな?」


「怒り狂った⋯⋯でも、柔らかい表現ですよね。わたくし校舎を全壊させましたものね⋯⋯」


 その時の光景が目に浮かぶ。


「そ、そうだな。で、ナンシーが立ち去った後、デイヴィットが泡吹いて倒れて、目が覚めると『自分のせいでこんな事になって申し訳けない』と言って学校を辞めたんだ」


「えぇっ?謝るのも辞めるのもわたくしの方でしょう?」


「⋯⋯婚約自体は破棄されずそのままになっている。

 ナンシーが目覚める前に勝手なことをすると今度はどこが潰されるかわからないからと言って⋯⋯。

 自分一人の犠牲で済むなら我慢するからと⋯⋯」


 絶句するしかない。



「夜中に一度学園に行ってきます」


「い、行ってどうするんだ?」


「行ってから決めます」


「いや、もう、あれ以上校舎を壊すのは勘弁してくれっ」


「・・・いえ、直せないか試してみます」


「えっ? 直す?」









 夜中に学園に向けて馬車を走らせる。


 付いて来なくていいと父親に言ったのだけれど、どうなるのか見ておかなければならないと言って、別の馬車に乗って付いて来た。


 私の馬車に充分座れるスペースはあるのに、父は他の馬車に乗り込んだ。


 ナンシーの記憶にあるのは一階に十の教室が並んだ三階建ての校舎だった。

 今はただの瓦礫だけど。


 ダンスパーティーの最中だったとは言え教室に誰も居なくて本当によかったよ〜〜〜!!


 人が死んでいたらどうなっていたか。


 この校舎を壊した理由を口にするのも恥ずかしい。


 夜会を模した授業中、ナンシーをエスコートしているデイヴィットがナンシーではなく他の女性を見たっていうだけのことだった。


 デイヴィットは本当に不運な人だ。


 父親たちがナンシーの面倒見きれないからと幼少の頃に強引に婚約を結んで、まだ幼く何もわからないデイヴィットにナンシーの面倒を見させていた。


 ナンシーはデイヴィットは自分のものだと思っていて自分以外を見るだけで不機嫌になり、ナンシーは我儘気ままを言いたいだけ言っていた。


 そしてデイヴィットはそれをすべて受け入れてくれていた。




 神様!!


『な、何?』


 私一人でこの校舎、元に戻せます?


 魔法で直して耐久性とかが劣ると困るんですけど。


『十分直せると思うわ』



 そ、そうなんですか?


『ナンシーはその小さな体で凄い力を持っているわよ。

 残念なことに魔法の使い方を誰も教えなかったから正しい使い方を知らない子だったけど』


 そう、ですか。


 では、とりあえずやってみます。


 再生? 元に戻れ? 復元? 


 ⋯⋯復元がイメージできそう。


「復元!!」


 ビデオテープの逆再生を見ているみたいに破片になった壁が元に戻っていく。


 たっぷり15分程掛けて元に・・・いや、経年劣化も修復され新築の校舎に戻った。


 破壊した時は手を一振しただけだったのに、直すのには時間が掛かるんだね。


 一つ賢くなったよ。これからは壊さないように気をつけようっと。



 誰も死んでいないのが本当に不思議なくらいだわ。


 ナンシー、そのへん全く気にしていなかったみたいなのに。



「戻せたみたいで良かったです。お父様、申し訳ないのですが、一応、強度の検査とかの依頼お願いできますか」


 開いた口が塞がらないままの顔で、私と校舎を見比べる父親。


 何度話しかけても気付いてもらえないので、父親の手を取り、ペシペシと叩く。


「お父様、お父様ったら」


 私に触れられたと認識した途端、飛び上がり、後ずさる。


 触れたところが壊れていないか確認しているように見えた。


「あ、あぁあ・・・な、何だ」


「強度とかの必要な検査をお願いしたいんです、校舎の」


「ああ、わ、分かった」


「では、帰りましょう」

来週の月曜日 21:20 UP予定です。

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