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親の気を引きたくて自殺したという記憶だけが鮮明に残っている女の子の体に私が入っているってことだけが解った。
瞬きを繰り返すけれど見える天井は柔らかそうな薄い若草色の天蓋で、やはりまた瞬きするけれど見える光景は自分の部屋のものにならなかった。
ちょっと待って、ちょっと待って!!
もうパニックですよ。
えっ?! えっ?! もしかして私、転移? 転生? してるんじゃないっ?!
そんな事、実際にあるの? あっていいの?!
皆川晴夏五十五歳がいつも通りに就寝して、朝目覚めたら知らない部屋で別人だった。
全く心当たりのない部屋で目覚めた。
手のひらと手の甲をひっくり返して何度も見たけど、見覚えのある荒れた手ではない。
顔に手をあてがうと晴夏のざらついた肌でも、たるんだ肌でもなく、プルプルもっちりしている。
弾む肌と言っていい。
若かりし頃、こんな肌だったこともあった気もするけれど遠い昔のこと過ぎて思い出せない⋯⋯。
泣ける!!
周りを見回すと大きな姿見があったのでベッドから飛び降りて慌ててそこへ駆けていく。
「うわぁ〜〜〜!! 足首ほっそ〜〜〜!!」
目の端に映った足首は晴夏の手首よりもうんと細かった。
姿見の前に立ち、その鏡に映る女の子を見て絶句する。
「絶世の美女⋯⋯⋯⋯」
すごい! すごい!!
桜の花を思いうがべることができる髪の色に、薄い青白磁の瞳って⋯⋯!
地球ではありえないと思うんだけど⋯⋯。
って、いうか、いやまぁ、想像通り⋯⋯私の顔じゃない。
年齢もぜんぜん違う!
晴夏は真っ黒な髪にちょっと薄めの茶色の瞳で黒目と白目の境目に青く縁取られている。
若い頃からそうだったので晴夏の目は決して老人環ではない!!
っと、目の前の美少女問題から逃避してしまったわ。
いや、地球でも瞳の色にブルーはありましたよ。当然、日本人じゃないけど!
あ〜ぁ⋯⋯、あの俳優さん格好良かったなぁ〜。
ハッ、そんなこと言ってる場合じゃない。
でも白に近いっ瞳って・・・。
アルビノ? かしら?
ん?
髪は染井吉野の桜色。ほぼ白に近い薄いピンク。
もしかして脱色してる?
晴夏は白髪を紫に染めてたしね⋯⋯。
オバちゃんなので紫で我慢したのよ。
本当はピンクにしたかったのよ!!
そう、若い子のあのピンク色の髪。
本当に羨ましかったよ〜〜〜!!
私もあと四十年若ければ!! って何度も思ったよ〜。
似合う似合わない別として髪をピンクに染めてみたかった夢がかなった?
いやぁ〜でもできればこんな薄いピンクじゃなくてショッキングピンクがいいなぁ〜〜〜!!
⋯⋯なんて現実逃避している場合じゃないわ!!
つい現実逃避して思考が脱線しがちだわ。
もう一度鏡を見る。
やだ、この子本当に可愛いわ⋯⋯。
十二〜三歳位? かな?
私が手を挙げると鏡の中の子も当然手を挙げる。
ちょっと可愛いくて感動してしまう。
これだけ可愛かったら人生勝ち組でしょうに。
なんで自殺なんか?!
ふと見下ろして⋯⋯あれ? 胸、小さいね⋯⋯。
まさか!! 胸が小さいことに絶望して?
なんてことはないよね〜〜〜さすがに。
晴夏はぽっちゃりさん(願望。本当は巨体)だったから胸大きかったのよね〜。
胸を鷲掴んでみる。
あっ、手がちっさいからそれなりにあるように感じる?
いや、やっぱり、ささやかだわ〜〜。
間違いなくAカップ!多めに見積もってBカップ⋯⋯は、ありえないね。
しかし、この子の記憶がないんだけどどうしたらいいんだろう?
こういうときってふつうこの子の記憶はあるもんじゃないの?!
いくら思い出そうとしてもこの子の記憶がない。
あるのは皆川晴夏の記憶だけ。
五十五年間の記憶はしっかりある。
いや、嘘吐きました。朧気です。
最近のことはちょっと忘れがちだったし、学生時代の授業中だった頃のことなんて何も覚えていない。
と言っても過言ではないっ!!
え⋯⋯っと⋯⋯。
ちょっと不味いんじゃない? 記憶がないと言葉が通じないかも?
「まじでヤバイんじゃない?!」
口をついてでてくる言葉はやはり日本語。
それもこの子の声帯が日本語仕様にできていないせいかカタコトになってる⋯⋯。
でも、さすが美少女。 声まで可愛いわ⋯⋯。
この子。
次話 1月19日 21:20 UP予定です。




