Episode 8
ギルドの門をくぐった瞬間、世界が変わった。
外の喧騒は遠くに消え、空間全体から力がうねるように押し寄せてくる。
胸の奥がざわりと震え、背筋に小さな鳥肌が立った。
目の前に広がるホールは、思ったよりも広大で、天井は遠く高くそびえる。
壁には無数の紋章、戦績の記録が刻まれ、床に反射する光が煌めく。
人々は剣や魔法を振るい、壁際では武器の手入れや魔法の研究に没頭している。
視線を合わせる者は誰もいないのに、全身の神経が張りつめ、存在そのものが試されている気分だった。
「……すごい……」
思わず息を漏らした。小さな声でも、胸の高鳴りを抑えられない。
歩みを進めると、中央の広場に、見覚えのある人物が立っていた。
黒いマントを羽織り、大剣を背にした――街の入口でちらりと見かけたあの人だ。
彼の目が僕に向くと、鋭さと好奇心が同時に宿る視線が突き刺さった。
片手を軽く挙げ、にやりと笑う。
「お、さっきぶりだな」
その仕草に、思わず息を呑む。
マントの影に隠れた目は、まるですべてを見透かしているようだった。
「え、あ、はい……さっきぶりですね」
僕は少し照れながら返す。名前も知らないのに、なぜか安心できる顔だった。
彼は肩をすくめ、目を細める。
「ここがギルドだ。力のある者が集まる場所だ。初めてでも、学ぶことは多いぞ」
地面を見つめ、深く息を吸い込む。
(ここで学び、挑戦するんだ……!)
胸の奥で、震えるような熱が走った。
足の裏に床の冷たさが伝わり、手がわずかに握りしめる。
彼はホールの奥に続く階段を示す。
「まずは登録と初歩の訓練だ。準備はいいか?」
僕は胸を張り、小さく頷いた。
「はい……やります!」
小さな一歩かもしれない。
けれど、この瞬間、僕の冒険は確かに、新たなステージに動き出した。




