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第9章:隣領からの招かれざる客

ココノエ村から山を一つ越えた先。

そこは、ガラム男爵が治める領地だ。


「報告します。ココノエ村の発展は、一人の職人によるもののようです」


薄暗い執務室で、黒装束の男が跪いて報告していた。

報告を受けているのは、肥満体の男――ガラム男爵だ。


「職人だと? たかが職人一人で、要塞や大浴場を作れるわけがなかろう」


「それが……『DIY』とかいう謎のスキルを使っているようで……」


「ふん、まあいい。その職人を連れてこい。我が領地で働かせてやる。拒否するなら……分かっているな?」


ガラム男爵は下卑た笑みを浮かべた。

彼は強欲で知られ、近隣の村から搾取することしか考えていない男だった。


一方、ココノエ村。

俺は「開拓責任者」としての初仕事に取り掛かっていた。


「まずは、道だな」


村から王都へと続く街道までの道は、雨が降ると泥沼になる悪路だった。

これではトマスさんのような商人も来にくいし、物流の妨げになる。


「よし、やるか。スキル【DIY】――『道路舗装』!」


俺が地面に手を触れると、土が変質し、硬くなめらかな石畳のような素材に変わっていく。

アスファルトほど無機質ではなく、自然石のような風合いを持たせた。


「うわぁ、すごい! 魔法みたい!」


リコがお弁当を持って見学に来ていた。


「魔法より便利でしょ? これで馬車も揺れないし、雨の日も安心だ」


俺は数キロにわたる道を、半日足らずで舗装してしまった。

通りかかった村人たちが、口をあんぐりと開けて驚いている。


その日の午後。

舗装されたばかりの道を、数騎の馬が駆けてきた。

村の入り口で止まった彼らは、立派な鎧を着ているが、その態度は横柄だった。


「おい! この村の責任者はどこだ!」


騒ぎを聞きつけて、アリス嬢とガルドさん、そして俺が出ていく。


「私が領主代行のアリスですわ。何の用ですの?」


「ふん、子供か。我々はガラム男爵の使者だ。この村にいる『凄腕の建築士』を差し出せという命令だ」


使者の男は、アリス嬢を見下しながら言った。

アリス嬢の眉がピクリと動く。


「断りますわ。彼は私の大切な……家臣ですもの」


「断る権利などない! 男爵様の命令は絶対だ! さあ、どいつだ!?」


男は馬から降り、近くにいたリコの手を乱暴に掴んだ。

「お前か? それとも……」


「痛っ!」


リコが悲鳴を上げる。

俺の中で、何かが切れる音がした。


「その手を離せ」


俺は静かに、だがドスの効いた声で言った。


「あぁ? なんだ貴様は。薄汚い作業着を着て……」


「俺がその建築士だ。そして、リコに触るな」


「ほう、貴様か。なら話は早い。来い!」


男が俺の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。

その瞬間。


「スキル【DIY】――『即席拘束具』!」


俺は足元の土を変形させ、男の足首をガッチリと固定した。


「なっ!? 足が動かん!?」


さらに、他の騎士たちの周囲にも、一瞬で木の柵を作り出し、檻の中に閉じ込める。


「な、なんだこれは!? 魔法か!?」

「剣が……抜けない!?」


彼らの剣の鞘も、いつの間にか変形させて抜けないようにしておいた。


「お引き取りください。この村は、暴力には屈しません」


俺が冷たく言い放つと、ガルドさん率いる騎士隊も抜剣して包囲する。

完全に形勢逆転だ。


「く、くそっ……! 覚えていろ! 次は軍を率いてくるぞ! ただで済むと思うなよ!」


足の拘束を解いてやると、男たちは捨て台詞を吐いて逃げ帰っていった。


「ケンタ……ありがとう」


リコが涙目で俺の袖を掴む。

俺は彼女の頭を優しく撫でた。


「大丈夫。俺が守るから」


だが、これでガラム男爵との対立は決定的になった。

次は軍隊が来るかもしれない。

俺たちは、さらなる防衛強化を迫られることになった。

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