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第6章:騎士たちの宿舎と大浴場

アリス嬢の別荘が完成してから数日後。

俺が工房で新しい家具(リコに頼まれた本棚)を作っていると、ドアが控えめにノックされた。


「ケンタ殿、少しよろしいでしょうか」


現れたのは、アリス嬢の護衛を務める騎士隊長、ガルドさんだ。

いつもは厳格な表情の彼だが、今日はどこか切羽詰まったような顔をしている。


「どうしました? お嬢様がまた何か?」


「いえ、お嬢様は……その、毎日お風呂に入り浸ってご機嫌麗しいのですが……」


ガルドさんは言い淀んだ後、意を決したように頭を下げた。


「頼む! 我々にも、あのお風呂を作ってくれ!」


「えっ」


「実は、村長宅での寝泊まりも限界なのだ。狭い部屋で男6人が雑魚寝……。疲れが取れるどころか、ストレスが溜まる一方で……」


屈強な騎士の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

アリス嬢が「極楽ですわ〜」と毎日自慢してくるのも、彼らの精神を削っていたに違いない。


「分かりました。俺としても、村の警備をしてくれている皆さんには快適に過ごしてほしいですから」


「本当か! 恩に着る!」


早速、設計に取り掛かる。

場所は、アリス嬢の別荘から少し離れた平地。いざという時にすぐに駆けつけられる距離だ。


「要望はありますか?」


「贅沢は言わん。とにかく、足を伸ばして寝られる個室と……あとは、風呂だ。広い風呂があれば何も言わん」


「了解です。では、銭湯スタイルでいきましょう」


「セントウ?」


俺は地面に図面を描いて説明した。

1階には食堂と大浴場、そして訓練場。

2階にはプライバシーを確保した個室。

構造は、魔物の襲撃にも耐えられるよう、石と鉄筋(風の補強材)を使った堅牢な作りにする。


「素晴らしい……! これなら王都の騎士団寮よりも立派だ!」


ガルドさんは図面を見ただけで興奮している。


工事は順調に進んだ。

アリス嬢の別荘よりも規模が大きいが、俺の【DIY】スキルも熟練度が上がっているのか、イメージ通りにサクサクと進む。


「壁はこうして……」


大浴場の壁には、遊び心で絵を描くことにした。

銭湯といえば富士山だが、この世界にはないので、村から見える名峰「ココノエ山」を描く。

絵心のあるリコに手伝ってもらった。


「わぁ、大きなキャンバスみたいで楽しい!」


リコはペンキ(植物染料)まみれになりながら、見事な山の絵を描き上げた。


そして、脱衣所には特製の冷蔵庫(氷の魔石使用)を設置。

中には、牧場から仕入れたミルクと、森の果実をミックスした「フルーツ牛乳」を冷やしておく。


「よし、完成だ!」


その日の夜。

完成したばかりの宿舎に、騎士たちが集まった。


「こ、これが俺たちの風呂……?」


湯気で曇るガラス戸を開けると、そこには広々とした石造りの浴槽が。

壁には雄大なココノエ山の絵。

そして、なみなみと注がれた適温のお湯。


「入るぞ!」


ガルドさんの号令と共に、騎士たちは服を脱ぎ捨て、一斉に湯船に飛び込んだ。


ザブーーーン!!


「うおおぉぉぉ……!!」

「き、効くぅぅぅ……!!」

「生き返る……これが風呂か……!」


野太い歓声と、深い吐息が浴室に響き渡る。

彼らは互いに背中を流し合い、日頃の疲れを洗い流した。


風呂上がりには、腰に手を当ててフルーツ牛乳を一気飲み。


「ぷはぁっ! 上手い!」

「なんだこの飲み物は! 甘くて冷たくて最高だ!」


翌朝。

訓練場では、見違えるようにキレのある動きを見せる騎士たちの姿があった。


「はっ! せいっ!」


剣を振る速度が明らかに上がっている。肌艶もツヤツヤだ。


それをテラスから見ていたアリス嬢が、不思議そうに首を傾げた。


「あら? なんだかお父様の近衛騎士より強そうに見えますわね。……まあ、私の護衛なら当然ですわね!」


俺とガルドさんは顔を見合わせ、ニヤリと笑った。

こうして、ココノエ村の防衛力(と騎士たちのQOL)は大幅に向上したのだった。

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