第16章:魔王からの招待状
魔王リリスがダンジョンを攻略してから数週間。
ココノエ村は、人間と魔族が共存する不思議な観光地として賑わっていた。
そんなある日、ギルドに一通の封筒が届いた。
漆黒の紙に、金色の文字でこう書かれている。
『拝啓、ケンタへ。私の城にも遊びに来なさい。あと、あの「お風呂」ってやつを作ってほしいの。リリスより』
「魔王からの招待状……!」
アリス嬢が青ざめる。
「罠かもしれませんわ! 行くべきではありません!」
ガルドさんも同意見だ。
「魔界は過酷な環境だと聞く。人間が生きて帰れる保証はないぞ」
しかし、俺は少しワクワクしていた。
異世界に来てから、村と王都しか見ていない。
魔界……どんな場所なんだろうか。
「大丈夫ですよ。リリスは悪い子じゃないし、何より『お風呂を作って』って頼まれてるんです。職人として断れません」
「ケンタさんらしいね……」
リコが呆れつつも笑った。
結局、俺とリコ、そして護衛としてガルドさんが同行することになった。
リリスが指定した場所にある転移魔法陣に乗ると、視界が一瞬で歪んだ。
次に目を開けた時、そこは別世界だった。
「うわぁ……空が紫だ」
頭上には毒々しい紫色の空が広がり、地面は赤茶けた荒野だ。
遠くには禍々しい形の山々が見える。
「ようこそ、魔界へ!」
出迎えてくれたのは、ゴスロリ服のリリスだった。
相変わらず可愛いが、背後には屈強な魔族の兵士たちが控えている。
「待ってたわよケンタ。さあ、私の城へ案内するわ」
案内された魔王城は、巨大だが……ボロボロだった。
壁には亀裂が走り、窓ガラスは割れ、冷たい隙間風が吹き抜けている。
「こ、これは……」
「酷いでしょ? 前の魔王が勇者と戦った時に壊れちゃって。直せる職人がいないのよ」
リリスが肩をすくめる。
魔族は戦闘には長けているが、生産や建築は苦手らしい。
「……燃えてきました」
俺の職人魂に火がついた。
こんな隙間風だらけの家で、女の子を暮らせておけるか!
「リリス、お風呂の前に、まずは城のリフォームです!」
「えっ? 本当に!?」
「スキル【DIY】――『城郭修復』!」
俺は壁の亀裂を一瞬で塞ぎ、割れた窓には断熱効果のある二重ガラス(魔石加工)をはめ込んだ。
さらに、床には断熱材を敷き詰め、フカフカの絨毯を敷く。
「おぉ……暖かい……!」
「風が入ってこないぞ!」
魔族の幹部たちが、涙を流して喜んでいる。
意外と苦労していたんだな……。
城の住環境を改善した後、いよいよ本題の温泉作りだ。
「この辺りに、熱源反応があるな」
俺は【DIY】の探査機能で、地下深くのマグマ脈を探り当てた。
ここなら、良い温泉が湧くはずだ。
「掘ります! スキル【DIY】――『大深度掘削』!」
ドリル状に変形させた土魔法で、一気に地下を掘り進める。
数分後。
プシューーーッ!!
勢いよく湯柱が上がった。
硫黄の香りが漂う、極上の源泉だ。
「やった! 温泉だ!」
リリスが目を輝かせる。
「ここを魔界一の保養地『魔界温泉郷』にしますよ!」
俺の宣言に、魔王城が歓声に包まれた。
こうして、俺の魔界での大仕事が始まったのだった。




