第14章:冒険者ギルド・ココノエ支部
「ケンタさん! 大変だよ!」
朝早くから、リコが工房に飛び込んできた。
「どうしたの?」
「村の入り口に、すごい行列ができてるの!」
慌てて見に行くと、そこには長蛇の列ができていた。
剣や杖を持った若者たちだ。
「噂の『死なないダンジョン』ってここか?」
「俺もレベル上げしたい!」
どうやら、騎士たちが酒場で漏らした話が広まり、近隣の町から冒険者志望の若者たちが殺到しているらしい。
満腹亭の宿も満室、村の食料も底をつきそうだ。
「嬉しい悲鳴ですが、このままでは管理しきれませんわ」
アリス嬢も頭を抱えている。
無法者が増えれば治安も悪化する。早急な対策が必要だった。
そんな中、一台の馬車が到着した。
降りてきたのは、眼鏡をかけた知的な女性エルフだ。
「王都の冒険者ギルド本部より参りました、ミリアと申します」
彼女は厳しい表情で言った。
「貴村が未認可でダンジョンを運営しているとの報告を受けました。事実であれば、即刻閉鎖していただきます」
「へ、閉鎖!?」
「当然です。ダンジョンは危険な場所。素人が管理して事故でも起きたら、ギルドの責任問題になりますから」
ミリアさんは聞く耳を持たない。
仕方なく、俺たちは彼女をダンジョンへ案内した。
「百聞は一見に如かずです。一度、中を見てください」
数時間後。
ダンジョンから出てきたミリアさんは、興奮で眼鏡を曇らせていた。
「す、素晴らしい……!」
「えっ?」
「幻影魔法によるダメージ判定、ゴム製スライムによる物理耐性訓練、そして計算され尽くしたドロップ率……! 完璧です! ここまで安全かつ効率的に新人を育成できる環境は、王都にもありません!」
彼女は俺の手をガシッと掴んだ。
「撤回します! 閉鎖どころか、今すぐここに『冒険者ギルド・ココノエ支部』を設立しましょう! 本部には私が掛け合います!」
「は、はあ……」
あまりの勢いに圧倒されたが、ギルド支部ができれば、冒険者の管理も任せられるし、村に公的な機関ができることで信用も上がる。
断る理由はなかった。
「じゃあ、建物は俺が作りますね」
俺は【DIY】スキルで、村の広場に立派なギルドハウスを建設した。
1階は受付と酒場、2階は資料室と会議室だ。
「問題は職員ですね。すぐには手配できませんし……」
ミリアさんが困った顔をする。
そこで、リコが手を挙げた。
「私でよければ、手伝います!」
「本当ですか? 助かります!」
こうして、リコが臨時で受付嬢をすることになった。
制服(ミリアさんが持っていた予備)に着替えたリコは、いつものエプロン姿とはまた違った魅力がある。
「いらっしゃいませ! 登録はこちらですよ〜!」
その愛想の良さと笑顔は、荒くれ者の冒険者たちを一瞬で骨抜きにした。
「うおっ、天使か?」
「俺、このギルドに永住するわ」
あっという間に「ココノエの天使」という二つ名が広まり、ギルドは大盛況。
俺としては鼻が高い反面、男たちがデレデレしているのを見て、少しだけモヤッとするのだった。




