第13章:娯楽がないなら作ればいい
ガラム男爵の一件から数ヶ月。
ココノエ村は「王家直轄・技術開発特区」として、平和な日々を送っていた。
平和なのは良いことだ。しかし……。
「あー……暇だ……」
村の広場で、非番の騎士たちが地面に大の字になって寝転がっていた。
ガルド隊長も、手持ち無沙汰に剣を磨いている。
「平和なのは結構なことだが、こうも刺激がないとな。体が鈍っちまう」
「贅沢な悩みですね」
俺が苦笑すると、ガルドさんは真剣な顔で言った。
「笑い事ではないぞ。我々は騎士だ。いざという時に動けなければ意味がない。かといって、ただの素振りや走り込みでは、実戦の勘は養えん」
なるほど。
確かに、適度な緊張感と達成感のある訓練が必要かもしれない。
俺は少し考えて、提案した。
「じゃあ、作りましょうか。『ダンジョン』を」
「は?」
俺が案内したのは、村の裏山にある洞窟だ。
以前、鉄鉱石を採掘していた場所だが、今は使われていない。
「ここを改造して、魔物が出る迷宮を作ります」
「魔物が出る!? それは危険ではないか?」
「本物の魔物じゃありません。俺の【DIY】と、アリス嬢の幻影魔法を組み合わせた『仮想敵』です」
攻撃されれば痛みはあるが、死ぬことはない。
倒せば消滅し、たまにアイテム(景品)をドロップする。
そんなゲームのようなダンジョンだ。
「なるほど……それなら安全に実戦訓練ができるな!」
ガルドさんが乗り気になった。
早速、工事に取り掛かる。
第1階層のテーマは「森の迷宮」だ。
「スキル【DIY】――『迷宮構築』!」
洞窟内の壁を変形させ、複雑な通路を作る。
さらに、床にはスイッチを踏むと矢が飛んでくる(先端はゴム製)トラップや、突然壁が迫ってくるギミックを設置した。
「楽しそう! 私も手伝う!」
リコがやってきて、宝箱の設置を手伝ってくれた。
「中身は何にする?」
「うーん、回復薬とか、お菓子とか?」
「いいね。当たりは『満腹亭の食事券』にしよう」
こうして、手作り感満載ながらも、本格的なダンジョンが出来上がっていった。
数日後。
完成したダンジョンの前には、完全武装した騎士たちが並んでいた。
「よし、一番槍は俺が行く!」
ガルドさんが意気揚々と突入する。
数分後。
「うわぁぁぁ!? 床が抜けたぁぁ!?」
「なんだこのスライムは! 剣が効かん!?」
洞窟の中から、悲鳴と怒号が聞こえてくる。
どうやら、物理攻撃無効の「ぷるぷるスライム(ゴム製)」に苦戦しているようだ。
さらに数十分後。
ボロボロになったガルドさんが出てきた。
しかし、その顔は晴れやかだった。
「……面白い! これは面白いぞケンタ殿!」
「そうですか?」
「ああ! 久しぶりに命のやり取り(のようなもの)をした気分だ! 他の者も挑ませろ!」
騎士たちは次々とダンジョンに挑み、そしてハマっていった。
その噂はすぐに村中に広まり、やがて村の外からも「安全に冒険ができる場所」として、多くの人々が訪れるようになるのだった。




