第11章:王都への使者と意外な縁
ゴーレムによる防衛網が完成し、村の安全はひとまず確保された。
しかし、アリス嬢の表情は晴れなかった。
「物理的な攻撃は防げても、政治的な圧力はどうにもなりませんわ」
ガラム男爵は貴族だ。
「ココノエ村が反乱を企てている」などと嘘の報告を王都に上げられたら、正規軍が派遣されてしまうかもしれない。
「お父様(領主)だけでは、男爵家の背後にいる派閥に対抗しきれないかもしれません。もっと強力な後ろ盾が必要です」
「心当たりは?」
「王都に、私の幼馴染がいますの。今はある公爵家に嫁いでいるはず……」
公爵家。それは王家に次ぐ権力を持つ大貴族だ。
一縷の望みをかけて、俺たちは王都へ向かうことになった。
留守はガルドさんとテツジンたちに任せ、俺とアリス嬢、そしてリコ(世話係兼観光)の3人で出発した。
俺が舗装した街道のおかげで、馬車の旅は快適そのものだった。
数日後。
巨大な城壁に囲まれた都市が見えてきた。
「うわぁ……大きい!」
リコが窓から身を乗り出す。
王都「ルミナス」。
石造りの建物がひしめき合い、多くの人々が行き交う大都市だ。
「まずは宿を取りましょう。それから情報収集ですわ」
宿に荷物を置いた後、俺たちは商業区へ向かった。
アリス嬢の幼馴染への手土産を探すためだ。
「あそこ、すごく賑わってるね」
リコが指差した先には、『銀の翼商会』という看板を掲げた立派な店があった。
店先には、どこか見覚えのある椅子が並んでいる。
「あれって……俺が作った『人をダメにする椅子』?」
「おや? その声は……」
店の奥から、恰幅の良い男性が出てきた。
見覚えのある口髭。
「トマスさん!」
「おお! ケンタ様ではありませんか! よくぞお越しくださいました!」
かつて村に来ていた行商人のトマスさんだった。
彼は今や、この大商会の幹部に出世しているという。
「あの椅子が大ヒットしましてね。王都の貴族たちもこぞって買い求めていますよ」
俺たちが事情を話すと、トマスさんは真剣な表情で頷いた。
「なるほど、ガラム男爵ですか……。あの男には私も商売の邪魔をされたことがあります」
「何か、対抗する手立てはないでしょうか」
「ふふふ、お任せください。実は、我が商会のお得意様に『鉄血宰相』と呼ばれる方がいましてね」
「て、鉄血宰相!?」
アリス嬢が絶句する。
それは公爵家どころか、国の政治を実質的に動かしている超大物だ。
「その宰相閣下も、ケンタ様の椅子の愛用者なのですよ。『これがないと執務ができん』と仰るほどで」
トマスさんはニヤリと笑った。
「私が仲介しましょう。ケンタ様の技術と、ココノエ村の特産品があれば、閣下も必ず興味を持ってくださるはずです」
「ありがとうございます!」
思いがけないところから、最強のコネクションが繋がった。
俺の【DIY】スキルが、国のトップにまで届いていたなんて。
「よし、リコ。宰相への手土産に、最高級の家具を作るぞ!」
「うん! 手伝うよ!」
俺たちはトマスさんの工房を借りて、外交のための「武器(家具)」作りに取り掛かるのだった。




