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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
9/43

日常

あれから少しずつ、渉とメッセージをしたり、部活で言葉を交わしたりするようになった。


それでも、


(内田くんって、あまり自分のことを話さないんだよな…)


渉の方から何か自分自分についての話をすることはほとんどなく、私の質問に答えることが多かった。


会話が苦手なのか、それとも


(私って、うざい…?)


どうやったら、渉に話してて楽しいと思ってもらえるのか、ちゃんと会話術とか勉強しよう…


それでも、話しているうちに、ちょっとずつ渉のことがわかってきた。


意外だったのは、好きな芸人や女性アイドルの話になると少しだけ楽しそうに語ってくれること。

中でも、あるアイドルグループを推しているらしく、私も名前を調べて動画をこっそり見たりしていた。


(あの子たち、かわいいし、パフォーマンスもかっこいいな…

 内田くん、こういうのが好きなんだ)


そんなふうに、彼の“普通の男の子”らしい一面を知るたびに、胸がくすぐったくなる。


------


5月に入ったある日のこと。

移動教室の途中、廊下の窓からふと外をのぞくと、自動販売機の前に立つ渉の姿が見えた。


(あっ…内田くんだ)


距離があるから声をかける勇気は出なかった。

でも目は自然と、彼の仕草を追いかけてしまう。


外の光を受けたからか、彼の髪は前に食堂で見た時より茶色っぽく見えた。

風に揺れるその色がやけにきれいで、私は思わず見とれてしまう。


(本当にきれい…)


買うものが決まったのか、制服の腰ポケットの財布に手をかけたとき、何か光るものが見えた。


(腕時計してるんだ)


最近は暑い日も増えてきて、徐々に学ランを脱いで腕まくりをしている生徒が増えた。


渉はというと、身長を伸びることを考慮してか、少しオーバーサイズのカッターシャツの袖を、控えめに2回ほど腕まくりをしている。


そこからチラリと見える銀色の腕時計が、太陽光を反射していた。よく見るとパワーストーンのようなブレスレットもしている。


(アクセとかするんだ…ちょっと意外)


私は、小学生の時に女子の間でパワーストーンが流行ったことを思い出す。


(内田くんの誕生石って何なんだろう)


そういえば、私は、渉の誕生日を知らなかった。今度聞いてみよう。


そんな彼が自販機で選んだのは、いちごミルクだった。


「……かわいい」


思わず小さくつぶやいてしまった。


------


「郁奈!何してんの?」


背後から声をかけられて振り向くと、真美が立っていた。


「あ、ううん!なんでもない!」


慌てて首を振りながら、私は足早に移動教室へと向かう。

真美に隠すようにして、心の中でそっと思った。


(またちょっとだけ、内田くんのことが知れたな)


胸の奥がほんのり甘くなった気がした。

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