男子
昼休み。
私たちは食堂でお昼ご飯を食べた後、教室に戻って、午後の授業の準備をしていた。
ふと廊下に目をやると、数名の男子生徒が廊下からこちらを覗いていた。
「どの子?」
「ほら、あの子だって」
隠す気もないのだろう。こちらまで聞こえる声で話している。
1年7組の教室は、校舎の1番端。廊下の先には階段しか無いので、クラスメイト以外が前の廊下を通ることはまずない。
「あれ、バレー部の男子じゃない?」
真美が言う。
「うわ、アイツら来やがった」
顔を歪めるあやか。
(まただ…)
男子たちは笑いながら、誰かを指さしている。どうやら、クラスの人気のある子を見に来たらしい。
(関わりたくない…)
私はすぐに視線を逸らし、小テストが出る英単語帳を開いた。
「ちょっと!あんたたち、何してんの?」
あやかの声が飛んだ。
男子たちが一瞬ひるむ。
けれどすぐに「いや別に〜」とごまかして笑っている。
「別にじゃないでしょ。早く帰れ!」
あやかは腕を組んで、堂々と彼らを睨みつける。
その迫力に押されて、男子たちは「はいはい」と苦笑いしながら、そそくさと廊下を去っていった。
(さすが…)
「まったく、しょーがない奴らだな!」
あやかはため息をついて、私の隣の席に腰を下ろした。
私は小さく笑ってみせる。
「ありがと、あやか」
「別に。クラスにまで押しかけてくるとか、うざすぎでしょ」
それだけ言って、あやかは何事もなかったように単語帳を開く。
私はもう一度、廊下の方を見やった。
するとバレー部の男子が1人だけまだ残っていたようで、目が合った。
(うわ、最悪だ…)
そう思い、すぐに視線を逸らす。
「おい!仁!帰れって!」
気付いたあやかが、再度追い払い「まったく…」とため息をついた。
(やっぱり、ああいう男子は苦手だな)
私は、心の中でそうつぶやいて、英単語に集中した。