表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
5/43

部活

「郁奈!今日軽音部、頑張ってね」


真美が教室で私の肩をポンと叩く。それに続いてあやかも「頑張ってね」と声をかけた。


「2人とも、ありがとう」


私が緊張を隠すように笑いかけると、2人は教室を出て行った。


真美は、あれから予定通りバスケ部にマネージャーとして入部。運動部は毎日部活があるし、真美のあの性格からして、もうすっかり慣れた様子だった。


(今日はちゃんと内田くんと話すんだ…!)

私は、心の中で決意表明をし、部室へ向かった。


------


軽音部の部室は、何というか、親戚の家みたいだった。


学校の敷地の端の方に、なぜが一軒だけ木造の平屋が建っていて、縁側の窓は全開にされていたので楽器の音が聞こえ、中の様子が伺えた。


板間に黒いアップライトピアノが置かれていて、奥には古い畳が敷き詰められた12畳ほどの部屋が2つあり、数人の人影が見える。襖がないので、結構広々としている。


玄関側に回ると、アルミの引き戸は開け放されていて、中を覗き込むと1人の男性と目が合った。


「いらっしゃ〜い!」

説明会で司会をしていた部長が、優しく声をかけてくれた。


「あ、こんにちは…あの、ここ軽音部の部室ですか?」

「そうだよ〜。1年生かな?」

「そうです!柏木といいます」


とりあえず、名乗った。


「柏木さん、よろしく。さあ、中に入って」


私は部長の誘導に従い「お邪魔します」と小声で挨拶しながら、部屋の中に入った。


------


部室に入ると、少し埃っぽい匂いがして、親戚の家というよりは、集会所のような雰囲気だった。あたりを見渡すと、エレキベースを弾いている男性とその横に女性がおり、雰囲気的に上級生と思われた。あとは、綺麗な制服を着た数名の生徒が雑談をしている。1年生だろう。


(内田くんは…)


私は学ランを着ている生徒の顔を、1人ずつ確認していくが、マスクをしている生徒は見当たらない。


(まだか…いや、来ないのかな…)


残念に思ったとき、玄関に数名の男の子が入って来て、挨拶をする。1番後ろの方に、マスク姿が見えた。


(内田くんだ!)


私は素直に喜んだが、徐々に自分の身だしなみが気になりソワソワと前髪をなおす。渉は私には気付いていないようだ。というか、あまり周りと目を合わさないようにしているように見えた。


「人数的にもう揃ったかな?今から今日の部活について話すから聞いてね」


部長がそういうと、楽器の音が止んだ。


「今日は、各時担当楽器を決めて、バンドを組んでください。決まったら、僕に報告して、あとの活動は各自に任せます」


(結構放任主義なんだ)


幸い、女子は私を含めて3人だったので、女子バンドで決定だなと思っていると、早速2人の女の子が私の方へ近づいて来て、声をかけた。


「女の子は私たちだけだし、3人でバンド組もうよ」


そういったのは、綺麗なストレートの長い髪をした女の子だった。


「うん、もちろん!でも、みんな何の楽器を希望してるの?」


私が聞くと、その子が答えた。


「私はドラム。あ、私、茉莉って言うんだよろしくね。こっちはギター志望のほの。2人とも4組なんだ」

「よろしくね」


ドラムの茉莉、ギターのほの、と。


「私は郁奈。あ、あの、私もギター志望なんだけど…」


何だか気まずくて、小さい声で言う。


「え、マジ!郁奈はギター経験あるの?ほのは中学の時からギター習ってて、エレキは初めてだけど、アコギなら弾けるんだよ」


ほのがギター経験者だと知って、私はさらに気まずくなった。


「え、そうなんだ。じゃあ、私はベースにしようかな…」

「え、いいの?」


遠慮がちに言う私に、ほのが心配そうに言った。実はギターは、安物ながら春休みに既に購入しており、やる気満々だったのだが。


「大丈夫だよ!とりあえず何でもいいからやってみたかったんだ!はは…」


バンドが組めないなんて、軽音部としての高校生活が終わってしまうと思った私は、こうしてベース担当になった。


私ってこういうところがあるんだよな。まあ、しょうがないけど。


------


しばらく3人で今後の活動について話し合っていると、男子の方もバンドが決まったらしく、二つのグループに分かれて各時話し合いをしている。


渉は、さっき一緒にここまで来た友達と組んだようだ。


(内田くんと話したいけど、これだと全然話しかけられない…)


そうこう考えているうちに、渉のバンドは話し合いが終わったようで、そそくさと帰ってしまった。


(結局話せなかった…)


私は、がっかりするとともに、新しく始める楽器を購入しないといけないことに気づき、気が重くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ