夢
『昨日、仁と別れたよ』
郁奈からのメッセージには、そう書かれていた。
『待ってる』そう伝えた後、俺は今までの自分について考えていた。
結局、ずっと郁奈を思っていながらも、自分から何か行動を起こしたことがあっただろうか。
むしろ、逃げてばかりだった。
だから郁奈は、仁くんを選んだのだ。
何度も後悔した。
あの時、自分が約束を守っていたら。
郁奈のことを傷付けていなければ。
でも、考えても仕方がなかった。
本当にもう、何もやり方が見つからなかった。
だから、2人を応援すると決めたのに。
全部、俺のせいだろうか。
そんなことを思って自惚れていても、何も変わらなかった。
どうしようもない俺なのに、こんな奇跡が起こるなんて、思ってもいなかった。
自分の気持ちとちゃんと向き合って、今度こそ行動しなければと思っていた。
用意していた言葉を画面の中に打ち込む。
『分かった。ごめんね。ちゃんと自分の口から伝えたいから、会って話せない?』
送信ボタンを押すと、しばらくしてすぐ返事がきた。
『うん。じゃあ、火曜日の放課後。学校はみんないるから、近くの河川敷でお願いします』
月曜日は軽音の部活があるからだろう。それに、仁くんのこともあるだろうし、人に見られてはまずい。
『分かった。じゃあ、また』
郁奈にそう返事をし、ベッドに横になった俺は、ただ天井を見上げているうちに眠りについた。
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火曜日の放課後。
俺は学校の近くの河川敷にいた。
河辺を吹き抜ける風の先に、郁奈が立っている。
俺が今まで言えなかった気持ちを伝えると、郁奈はこちらを見て口を開く。
「ごめん。やっぱり内田くんとは付き合えない」
そう言われ、息が苦しくなって目を開けると、目覚まし時計が鳴っていた。
7月某日、朝8時。今日は火曜日だ。