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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高二編
41/43

更衣室

月曜日。

仁と別れて、初めての学校。


教室に入ると、あやかが「おはよう」といつものように声をかけてくれた。


「…おはよう」


私は小さく答える。


「聞いたよ」


仁が言ったのだろうか。


「仁、土日の部活休んでた。今日も来るかわからないみたい」


(私のせいだ)


私は何も言えず、黙り込んでいると、あやかが口を開く。


「仕方ないよ。あんまり落ち込まないで。…内田くんと何かあったんでしょ?」


そう言われて私は「なんで知ってるの?」と聞き返す。渉のことは誰にも言ってなかったのに、あやかがそう言うので驚いた。


「知ってない。わかるよ」


そう言って笑うあやか。


「実は…」


私がそこまで言った時、予鈴が鳴り、真美が教室に入ってきた。


「みんな、おはようー!…おい、郁奈!」


真美はいつも遅刻ギリギリに登校してくるが、今日は5分前登校でいつもより早かった。


「お、おはよう、真美。今日早いね」


私がそう言い切るのを待たずに、こちらに真っ直ぐ歩いてきた真美は、ズンッと私に顔を近づけて小声で言った。


「別れたの?」


さすが、情報が早い。

この調子だと、今週中には他の生徒にも噂が広がるだろう。


「うん…」


私は頷いて、真美の顔色を伺う。


「…うっちー?」


真美もあやかも、本当に私のことを分かってる。


「…そうだよ」


真美が深く息を吸って天を仰いだので、大きな声を出すのかと思って、慌てて静止する。


「待って待って、説明するから!…仁には、秘密にしてほしい」


------


生憎、月曜の午前中には体育の授業がある。

男子と女子は別れて授業を受けるが、私も仁も体育館競技を選択していたし、顔を合わせることになる。


(仁、来てるのかな…)


そう考えながら、更衣室への廊下を真美たちと歩く。


すると、既に着替えた男の子たちが男子更衣室から出てくるところに出会した。


「あ…」


私は、その集団の中にいた仁と目が合う。


「おはよう」


仁は、いつものように声をかけてくれた。

私も小さな声で「おはよう」と返事をする。


ただ、それだけ。


いつもと変わらないはずなのに、今までとは全然違う。


全て私が蒔いた種なのに、こんなに寂しい気持ちになるなんて。


そんなことを考えながら体操服に着替える。


すると、真美が私の手を取り、まるで「大丈夫だよ」と言っているかのような笑顔を向けてくれた。


「ほら、授業始まるよ。急げ」


あやかがそう言って、更衣室の出口の方を指す。


私たちは、こうやって1秒も待ってくれない理不尽な時間に背中を押されながら、少しずつ大人になっていたのかも知れない。


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