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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高二編
40/43

ごめん

1学期の期末テストの最終日、私はいつものように仁と2人で帰路についていた。


「テスト、ヤバかったぁ〜」


そう言う仁に「そうだね」と返事をする。


私は、今日、仁に別れを告げると決めていた。


今年の夏は梅雨明けが早く、鳴き始めた蝉の声がいつもよりうるさく思え、仁の話が頭に入ってこない。


「なんか、元気ない?」と聞く仁。


「ううん!テスト疲れちゃって。一夜漬けしたしなぁ〜」


と元気なフリをして誤魔化した。


(今日、言わなきゃ…)


そればかりが頭を巡る。


------


少しして、いつものように家に着くが、今日はテストのおかげでまだ昼間。おばあちゃんはパートに出かけていて、いなかった。


シーンとした廊下を通り、私は仁を連れて自分の部屋へ向かう。


ずっと仁と話していたはずなのに、全く何を話したのか覚えていない。


部屋に入ると、2人でテーブルの脇に腰掛ける。


「ねえ、本当にどうしたの?大丈夫?」


私があまりにも上の空なので、仁が心配して声をかけてきた。


「うん。あの、実は話したいことがあって…」


「え?何…?」


私の深刻な表情を見て、仁は不安そうに聞く。

私はしばらく、何も言えないまま、床を見つめていた。


「…」


仁も何かを察したのか、黙って私が口を開くのを待っている。


(黙ったままじゃダメだ。言わなきゃ…)


私は意を決して、仁に伝えた。


「私と別れてほしい」


それを聞いた仁は、「え?」と驚きと他にも何か別のものが混じったような、複雑な顔をして答える。


「別れたいの」


私は追い打ちをかけるようにもう一度言う。


「え?なんで?」


そう聞く仁に、私は渉のことを言えなかった。


「仁のこと、好きかどうかわからなくなって」


それは事実だった。


「え?どうして?俺、なんか嫌なことした?」


そう仁に聞かれると、今まで仁と過ごした時間が蘇ってきた。


仁は、1度も私が嫌がることはしなかった。いつも優しくて、なんでもしてくれて、一緒にいて楽しかった。


そんな仁に、こんな酷い仕打ちをしている自分が、本当に嫌になる。


どうして私は、仁の気持ちに応えられないんだろう。どうして、こんなにも好きでいてくれる人のことを、好きになれないんだろう。


そうやって自分を責めていると、涙が溢れてきた。


「ごめん…ごめんなさい…」


仁は、謝る私の涙を拭いながら「泣かないで」と言う。


どんな時でも優しい。泣きたいのは、仁の方だろうと思ったが、我慢できなかった。


「…内田が関係あるの?」


そう聞かれた私は、本当の事を言うべきではないと思った。


あの時ーー渉とバンドをすることになった時、仁には、渉のことはなんとも思っていないと嘘をついていたし、私が別れを切り出したことに渉が関係していると仁が知れば、渉を恨むかも知れない。


でも、1番は


私と仁が過ごした時間を、あんなに幸せそうだった仁の気持ちを、私がずっと裏切り続けていたなんで、そんな酷いこと伝えられなかった。


私は、最後まで嘘をつこうと思った。


「内田くんは関係ないよ。私が悪いの…」


私が悪い。全部。


「そう…じゃあ、仕方ないね。郁奈は悪くないよ。わかった。友達に戻ろう」


そういって笑う仁の顔は、今にも泣き出しそうだった。

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