告白の日
ある日の放課後、何気なくSNSを眺めていたとき、ある投稿がふと目に飛び込んできた。
『今日は告白の日』
その瞬間、頭に浮かんだのは
――渉の顔だった。
今思えば、そんなのは、バズりたいだけの大人が、思春期の子供に適当に嘘をついて挑発しただけのものだったが、その時、私の心は限界だったのだ。
(私は仁と付き合っているのに、どうして内田くんのことばかり思い浮かべてしまうんだろう)
仁と付き合い始めてから、頭の中で何度も何度も繰り返したその言葉。
(もう、終わりにしなきゃ…)
そう思った。
仁を裏切り続けるようなこの気持ちに、けりをつけたかった。
スマホを握りしめ、深呼吸をする。
そして、震える指でメッセージを打った。
『久しぶり。突然だけど、今日、告白の日なんだって。だから、私も内田くんに告白したいことがあってね』
苦しい胸を抑えながら、送信ボタンを押す。
指先が冷たくなり、画面を見ていられなくて、布団に潜り込む。
スマホが震え、通知が届いた。
『久しぶり。突然だね(笑)』
返事がきた。ここまできたなら、もう言うしかない。
『実は、1年生のとき、内田くんのこと好きだったんだ』
胸がぎゅっと締めつけられる。
どんな返事が来るのか、そう考えて息ができなくなる。
数分後。
『そうだったんだ。実は、自分も柏木さんのこと好きだったよ。でも、今は仁くんと柏木さんを応援してるよ』
(好き“だった”…もう、過去のことなの…?)
私は、少しの希望を込めてメッセージを送る。
『今はもう、好きじゃないの?』
返事は、すぐに返ってきた。
『正直に言うと…まだ好きだよ。でも、本当に2人を応援してるんだ』
画面の文字が滲んで見えた。
私は、仁に背を向けて渉に惹かれている自分を、もう否定できなかった。
(私…本当に、内田くんが好きなんだ)
気づいた瞬間、心の奥が静かに決意に変わっていく。
『実は、私、まだ内田くんのこと諦めきれてないんだ。だから、仁とちゃんと話す。内田くんと一緒にいたいから』
少し間を置いて、渉から返事が来た。
『分かった。待ってるよ』
その一文に、胸が熱くなり、布団の中でスマホを抱きしめながら、涙が頬を伝う。
私はようやく、自分の気持ちに正直になることを決めた。