表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高二編
35/43

嫉妬

「内田くんとバンドすることになって…」


私は小さな声で言った。

「え?」と聞き返す仁。


「文化祭のバンド足りなくて、部長に普段部活来てない部員に声かけてって言われて」


事実。事実だからそう伝えた。


「なんで?」


(さっき言ったじゃん…)


「え?だから、バンドが足りなくて」


いや、そうじゃなくて、と言いたそうな顔。


「なんで内田と郁奈がバンド組まなきゃなんないわけ?」


(だから、さっき言ったのに)


「だから、バンド足りなくて、内田くんのバンド解散したから、内田くんの友達と3人で文化祭に出るの」


何回も同じこと聞かれて、少し語気が強くなる。


「どうして内田なの?内田じゃなきゃダメなの?他の部員は?」


(なんか怒ってる…)


今まで見たことのないような表情をする仁。


「他の部員と接点ないし、茉莉も知ってる人には何人か声かけてくれてるの」


「じゃあ、その大久保の知り合いと内田とでやればいいじゃん」


「その人たちは内田くんと別のバンドだし、担当楽器の兼ね合いとかあるから、急に1人だけ入れてもらうとかできないよ」


渉に嫉妬してるんだと思った。


でも、部活だし友達だから、別にいいじゃん。私は仁の彼女なんだから、それでいいんじゃないの?


「そんなの…じゃあさ、俺もそのバンド入れてよ」


突拍子もないことを言い出すので、私も混乱した。


「え?何言ってるの?仁、楽器やってないし、軽音部じゃないじゃん」


「俺も軽音入るよ。まだ文化祭まで十分時間あるから、楽器も練習すればいいし、前からやってみたかったから」


「それなら、バレー部はどうするの?」


「休みの日とか軽音部の方にいけるし、家で練習すれば、いいでしょ?」


無理がある。そもそも、私と内田くんが一緒にいるのが嫌だからって、そんなことしたら、みんなびっくりする。


だって、みんな私が渉のことを好きだったことも、それを知ってて仁が私と付き合ってることも知ってる。


(それはちょっと、気まずすぎる…)


「本当に、何言ってるの?無理だよ。仁だって、2人と面識ないでしょ?演奏する曲も、もうスリーピースで決まったんだから…」


私がそう言うと、仁は黙り込んでしまった。


正直、ここまでの反応をされると思っていなかった。いつもみたいに許してくれると思っていた。仁に悪いことをしていると分かっていたけど、渉と友達として付き合っていくのは、別にいいんじゃないかと思っていた。


たとえ、私がまだ渉のことを好きだったとしても。


(ただの友達だから…)


渉は私のことなんか何とも思ってないんじゃ、どうしようもない。その先なんかないも同然だった。


そうやって自分に言い訳をしていると、仁が口を開く。


「ごめん。ちょっとびっくりしたから…」


私が悪いのに、謝られて申し訳なくなった。


「ううん、私こそごめん。勝手に決めちゃって」


仁が顔を上げる。


「ひとつ聞いてもいい?」


「なに?」


「郁奈はもう、内田のことは何とも思ってないんだよね?」


そう聞かれて、心臓が跳ねる。


「…うん。ただの友達だよ」


嘘をつくしかなかった。

仁がじっと私を見つめる。


「わかった。じゃあ、さっきの話はナシで。文化祭頑張ってね。俺、見に行くよ」


そう言って、いつもの穏やかな笑顔を見せる。


「うん。ありがとう。頑張るね」


私がそう言うと、仁はいつものように私を抱きしめる。


私は、自分の気持ちをどうすればいいのか分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ