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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高二編
34/43

日々

「こっちから見た方がカッコいいね」


郁奈は不意にそう言った。


「え?」と思わず左の頬を撫でながら聞き返す。


「右からより、左からの方が好き」


俺は信じられなくて、もう一度聞き返す。


「本当に?」

「うん」


何でもないように返事をする郁奈。

俺はたまらなく、彼女を抱きしめた。


「え、なに?どうしたの?」


突然の行動に笑いながら答える郁奈に、「なんでもない」と誤魔化した。


------


郁奈と付き合い始めてから、本当に毎日が楽しくて仕方がなかった。

朝の「おはよう」も、帰り際の「また明日」も、隣に彼女がいるだけで特別になる。


最初は信じられなかった。フラれると思っていたから。

けれど一緒にといると、そんな疑いも忘れてしまうくらい、俺の日々は彼女でいっぱいだった。


今、目の前に郁奈がいる。

繋いだ手の先に、俺を好きと言ってくれる彼女がいる。

本当に幸せだった。


元々恋愛においては、あまり積極的ではないのか、いろんなことが俺主導で動いていた。でも、それに郁奈が答えてくれるのが嬉しかった。


それに、それでこそ、たまに郁奈の方から甘えたりされると、たまらなく嬉しかった。


「守りたい」とかそんな言葉よりもずっと単純で、ただ「好き」だと思えた。


ただ。


2人でいる時は、郁奈がふと切なそうな顔をすることがある。

笑っているのに、どこか遠くを見ているような。

俺じゃない誰かを思っているんじゃないか、と考えてしまう。


(もしかして…内田のことを?)


つい、そう考えずにはいられなかった。

けれど、それを認めるのは怖すぎて。


考え始めると、胸が苦しくてどうしようもなくなるから、なるべく考えないようにしていた。


ただ、俺を見て笑ってくれる、その瞬間が本当に好きだった。

将来のことなんてよくわからないけど、今は郁奈とただずっと一緒にいたいと思った。


郁奈は、最初は内田に気があったかもしれない。でも、彼女が選んだのは俺だった。


その事実が、何よりの救いであり、誇りだった。


------


だから。

だからこそ言葉は俺にとって特別だった。

ずっと、このアザのせいで自分を好きになる人なんていないと思ってきた。こんな醜い自分なんて。


だから。

その言葉は信じられないくらい嬉しかった。

泣き出しそうになるのを必死で堪えたのを覚えている。


だから。

俺は郁奈の言葉を信じることにした。

郁奈の隣にいられる、この幸せを。


だから。

なんでもいいから、そばにいて欲しかった。

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