表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
29/43

復帰

バレンタインの翌週、渉が学校に戻ってきた。


昇降口で靴を履き替えているとき、向こうの廊下を歩く背中に気づく。


「……あ」


振り返った渉と一瞬目が合った。

けれど彼はすぐに視線を逸らし、そのまま自分のクラスの方へ歩いていった。


「戻ってきたね」


隣で真美が小声で言う。

私は頷いた。胸の奥に、ほっとしたような、言い表せない感情が広がっていく。


------


放課後。

私と真美は、渉の教室へ向かった。

ホームルームが終わったばかりで、教室にはまだ数人の生徒が残っていた。

扉の前で足を止めると、真美が「行こ」と小さく囁く。


扉を開けると、駿の横に渉の姿があった。


「駿!うっちー!」


真美が呼びかけると、駿が手を振り、渉が顔を上げた。

一瞬驚いたようにこちらを見て、ゆっくり立ち上がる。


「これ、この前の誕生日に渡そうと思ってたんだけど……」


私は小さな紙袋を差し出した。中には、あの日買ったチョコレート。


真美も「おめでと、うっちー!」と明るく笑い、クッキーを渡す。


渉は少し視線を落としたまま、黙って袋を受け取った。


「……ありがとうね」


いつものように静かに笑うその顔に、胸が温かくなる。


私は、以前よりは緊張していなかった。ただ普通に、友達として会話できている。それが、嬉しかった。


------


その夜。

宿題をしていた私のスマホが、不意に震えた。


画面に表示された名前は「内田渉」。


「……え?」


驚いてすぐに開く。


『心配かけてごめん。知ってると思うけど、実は悪いことをして警察に捕まって。もう反省したから、2度としないよ。ありがとう』


今まではほとんどなかった、渉が自分から話す自分の事。

胸の奥がじんわりと熱くなる。


私は急いで返信した。


「ううん、全然! 無事に学校に戻って来れてよかったね」


それ以上の返事は来なかったけれど、初めて自分から気持ちを打ち明けてくれたことが、何よりも嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ