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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
28/43

「誰の金でメシ食ってると思ってるんだよ!!」


まただ。


「私だって昼間は働いてるんです!」


まただ。


「どの口が言ってんだよ!1日4時間のパートの分際で!」


また。


「あなたの収入だけじゃ、翔の学費が払えないじゃない!まだ、渉も昴もいるのに!」


いつもこうだった。


兄が高校生の頃はまだマシだった。

県内の国立大学の受験に失敗した兄は、母の意向でせめてもと、県外のそこそこの知名度の私立大学に進学した。


そこから少しずつおかしくなった。


「金の切れ目は縁の切れ目」


本当にそうだと思う。


------


子供3人男ばかり。母も専業主婦ながら、苦労したと思う。祖母、父の母親、つまり彼女にとっての姑は、いわゆる「毒親」で、他界するまで、離れて暮らしていた。


俺が中2になったばかりの頃、兄が大学生になり、家から金がなくなった。


ただでさえ、学費が高い私立なのに家から通えないので、一人暮らしのための生活費がかかる。


兄を恨んではいない。彼も彼なりに、母の期待に応えようとして頑張った結果だった。


俺だって。


母に黙って、素行の悪い友達とつるみながらも、県内でもまあまあの高校に入学したが、一度、前期試験に落ちている。


それを知った時、絶望した母の顔が今でも忘れられない。


お兄ちゃんはできたのに。

このままじゃ、大学受験も二の舞じゃないか


そう言われているようだった。


自業自得だ。


親に言われて通っていた塾。

自習室に行くからと言って、こっそり友達と遊んでいたりもした。


でも、もう後がない。

そう思い必死で勉強したおかげで、後期試験には何とか通った。


------


正直、高校生活には少し期待していた。

中学の奴らはいないけど、入学初日に新しい友達もできた。結構気が合うんだ。


それに、


俺のことを好いてくれる子がいた。


最初はよく分からなかった。

その時はまだ、一度少し話しただけだったから。


俺の容姿は良い方じゃない。むしろ、小さい目、大きな鼻、分厚い唇、そして、高校受験が始まったあたりから悪化した、ただれたニキビ面。


どう考えてもブサイクだろ。


毎日鏡を見るたびに思っていた。

だから、夏でもずっとマスクが手放せなかった。


中学の時も、恋愛を経験していないわけでもなかった。クラスの女子のなかには、なぜか俺を好きだと言ってくれる人もいたし、不良グループの中には、一瞬だけ付き合った女の子もいた。


でも、どうしても、なぜ自分なんかを好きなのかが理解できかったし、連絡を取るのも、話すのも苦手で、上手くいかなかった。


嫌われるのが怖かったから。


何も上手くできない俺を、唯一受け入れてくれるのが中学時代からの友達だった。


今思えば、典型的な不良少年のテンプレートみたいで恥ずかしい。


でも、俺はそのくらい、どこにでもいるような、どちらかといえば良くない方の人間だった。


なのに、その子は俺がどんなにそっけない態度を取ってしまっても、ずっと優しくしてくれた。


苦手なメッセージのやり取りも、ちょうど良い頻度で返してくれて、結構楽しかった。


それに、


控えめな二重と大きな黒目が、とても可愛かった。


初めてかもしれない。

成り行きで付き合って、何だか分からないうちに振られた中学のときの彼女には、そうは感じられなかった。


俺はその、柏木郁奈のことを、好きだと思った。


そう気付いてから、今まで以上に上手く話せなくなっていた。


なんて連絡をしたらいいのか、ずっと分からないままだった。


こんな自分のことをもっと知られたら?

きっと嫌われるに違いないと思った。


そうやって、どんどん郁奈からの連絡頻度も減り、ついに連絡は途絶えた。


それから少しして、その事実は勝手に耳に入ってきた。


「7組の柏木さん、4組の塩崎くんと付き合ってるらしいよ」




カゲロウ

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