表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
25/43

答え

それからの日々、仁は以前よりもずっと積極的に私へ関わってくれるようになった。


「今日、一緒に帰らない?」

バレー部の部活が早く終わる日は、いつもそうやって誘ってくれる。


バス通学の仁は、私を家に送った後だと家着くのは遅くなるだろうに、そんなことはお構いなしという感じだった。


最初は戸惑いながらだったけれど、何度も誘われるうちに、私も自然と「うん」と返事をするようになっていた。


仁は話題が豊富で、部活のことや友達のこと、何気ない学校の出来事を楽しそうに話してくれる。

その合間に――


「俺、やっぱり柏木さんといると楽しい」

「笑った顔が一番かわいいな」


そんなふうに、ストレートに「好き」を伝えてくるようになった。


少し赤くなりながらも、真っすぐに言葉を届けてくれる仁に、私は次第に惹かれていった。

歩幅を合わせてくれる優しさや、ふと見せる真剣な横顔。

それらが、胸の奥にじんわりと広がっていく。


------


告白から2週間が過ぎた。

相変わらず渉との関わりはほとんどなく、進展の気配もない。


(このままずっと仁くんを待たせるのは……よくないよね)


胸の中にある負い目は日に日に大きくなっていた。

それに、仁と一緒に過ごす時間は確かに心地よくて、楽しくて――私もまた、仁のことを考える時間が増えていた。


放課後、2人で並んで歩いている帰り道。

夕陽が顔を隠し、青緑色になった歩道を街灯が照らしている。私は立ち止まって小さく息を吸った。


「仁くん」


「ん?」と振り向く彼の目は、期待と少しの不安が入り混じっているように見えた。


「……私、ずっと答えを出せないままで、ごめんね」


仁は首を横に振る。

「いいよ。待つって言ったし」


その優しさにまた胸が熱くなる。


「でもね……やっぱりもう、答えを出したいの」


数秒の沈黙。心臓が痛いくらいに早く打っている。


「私も……仁くんと一緒にいたい。だから……よろしくお願いします」


言葉にした瞬間、少しだけ視界がにじむ。

仁の顔がぱっと明るくなって、強く頷いた。


「……! 本当に? ありがとう。めちゃくちゃ、嬉しい…!」


目を輝かせて、私を見つめる仁。


「すごい…嬉しい。めちゃくちゃ…」


そう言いながら拳を握りしめている。


「ねえ、ハグしてもいい?」


「え!?」


急に言われて驚いた。人目が気になった私が、あたりを見渡すと、山手の小さな住宅街なので、人通りはなくシーンとしている。


(大丈夫か…)


そう思った私は「いいよ」と返事をした。


「ありがとう!」と言い、優しく私を抱きしめる仁。私の頬に、首筋の赤いアザが重なり、温かい体温が伝わってきた。


こうして私は、仁と付き合うことになった。


(これでいいんだよね……)


心の奥にまだ渉の影があることを、自分でもわかっていた。

でも、仁のぬくもりが、それを静かに包み込んでいくように感じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ