表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
24/43

想い

ある日、机の上に置いたスマホが小さく震えた。

画面をのぞくと、仁からのメッセージだった。


『明日の放課後、ちょっと話したいことがあるんだ。時間ある?』


(えっ……これって……)


一瞬で胸が高鳴る。


(少女マンガで見たやつだ…!)


どう考えても、告白の流れだった。


(そんな……どうしよう……)


仁は、いつも私を気にかけてくれて、優しくて、話していると楽しくて――嫌いじゃない。むしろ、好意を抱いているのは確か。

でも……仁のことを考える時は、いつも渉のことも思い出していた。


(行かないのは……違うよね。せっかく勇気を出してくれたんだもん)


私は震える指で、『わかった』と返事を送った。


------


放課後、人気のなくなった教室。

カーテン越しに傾いた夕日が差し込み、床にオレンジ色の影を落としている。


私が1人になってから少しして、仁が教室に入ってきた。少し緊張した面持ちで、それでも笑顔を見せてくれる。


「待っててくれて、ありがとう」


「ううん……」


声が小さくなってしまう。

心臓がどくどくと音を立て、呼吸が浅くなる。


仁は、机の横に立ったまま、まっすぐ私を見つめた。


「俺、ずっと前から……柏木さんのことが好きです」


そのストレートで簡潔な言葉は、教室の静けさの中にすっと落ちて、私の心臓に直接触れたように感じた。


「う、うん…」


何か言わなきゃと思うのに、これ以上口が動かない。

頭の中では渉の顔が浮かんで、仁の笑顔が浮かんで、ぐちゃぐちゃになってしまう。


そんな私を数秒見つめていた仁は、柔らかく続けた。


「急に答えを出してほしいわけじゃないんだ。俺のこと、もっと知ってほしい。それで……考えてくれたら嬉しい」


真剣なまなざしに、胸が熱くなる。


「……うん」


それしか言えなかった。

でも、それだけはちゃんと伝えたかった。


仁は少し安心したように笑って、「ありがとう」と言い、右手を私の前に差し出した。


「じゃあ、改めて、よろしくね」


急に握手を求められて、一瞬戸惑ったが、「うん、よろしく」とだけ言い、私はその右手を握り返した。


(私の手と全然違う…)


初めて、男の子の手を握った。仁の手は、緊張しているからなのか、少しだけ冷たく湿っていた。


窓の外はすっかり茜色に染まり、グラウンドに伸びる影が長くなっていた。


仁が教室を出てから、私は心の奥に残る渉の存在と、目の前に立つ仁の温かさの間で、身動きが取れなくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ