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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
23/43

「好きな人とかいるの?」


俺は気になっていたことをちゃんと確認しておきたかった。


「え、えっと…」


困った顔で言葉を詰まらせる郁奈。

数秒間の沈黙を俺は待つしかできなかった。


「カッコいいと思ってる人なら、いるよ」


それは、誰だろう。

アイツだろうか。

それとも、


「誰?」


そんな訳はないと言い聞かせながらも、俺は聞かずにはいられなかった。


「……5組の内田くん」


思った通りだった。


どうして俺は、こんな分かりきったことを聞いてしまったんだろう。


------


初めて見たのは、入学してすぐだった。先輩があやかの紹介で、いらない楽器を譲るとかで。


何回も深々とお辞儀をする姿を見て、すごく良い子なんだと思った。それに、


控えめな二重と大きな黒目が、とても可愛かった。


どうにか声をかけたが、あやかに軽くあしらわれて話すこともできなかった。


名前だけでもと、あやかに懇願して教えてもらったが、あの子は柏木郁奈というらしい。


------


それから、数日。


バレー部の友達が、7組に可愛い子がいるというので、一緒に覗きに行くことにした。


7組はあやかのクラスで、郁奈もいるクラスだった。


俺は、郁奈に会えるかもしれないと期待して、教室の前までやってきた。


「どの子?」

「ほら、あの子だって」


友達は、お目当ての子を指さしながら「ホントだ!めっちゃ可愛いじゃん!」などと騒いでいる。


確かに、小柄で華奢、綺麗な二重で優しく笑うその子も可愛いと言えば可愛かった。


でも


(柏木さんは、いないのかな)


教室を見渡すと、椅子に腰掛けるあやかの隣に、郁奈がいた。


(…!いた…!)


俺は胸が弾んだ。

それと同時に、あやかの声が飛ぶ。


「ちょっと!あんたたち、何してんの?」


「やば!」「バレた!」と慌てる俺たちは、あやかに追い払われ、仕方なく帰ることにした。


「ちょっとしか見れなかったじゃねーか」

「でも、本当に可愛かったな」

などと話しながら、元来た廊下に戻る友達たち。


俺は、(もうちょっとだけ…)と、もう一度少しだけ教室を覗いてみた。


すると、さっきまで俯いていた郁奈がらこちらを見ており、一瞬目が合った。


この間は、少し距離があったし、何だか初めて目が合ったみたいで、ドキッとした。


------


それから数日間、どうしても郁奈と接点を持ちたかった俺は、あやかに何度も断られながらも、郁奈の連絡先を手に入れた。


(やった!これで話せる!)


俺はウキウキしながら、部活終わりの下校のバスの中で、早速メッセージを送った。


すぐに返事が来たので、俺はバスの中でずっと、スマホの画面に釘付けだった。


------


ある日、気になっていたことをあやかに聞いてみた。


「柏木さんって、彼氏いるの?」


あやかは少し考え込んだ後に


「好きな人はいるってさ」


と答えた。


ショックだった。


だって、俺のはずがなかったから。

まだ郁奈と連絡先を交換してから数日だし、一度も直接話したことがない。


「誰?どんなやつ?何組?」


俺は前のめりになって聞く。


「うざ。5組の内田くんだよ。いつもマスクしてる人いるでしょ?」


5組、内田、マスク…


(ああ、アイツか)


このクソ暑いのに、マスクをしてる奴がいるのは知っていた。


------


それから、内田を見かけるたびに、色々と観察をしていた。


(…そんなにカッコいいか?)


というか、インキャっぽくて、どっちかというとモテそうにない。グループでいる時も、端の方であまり喋ってる風でもない。背は俺より高いけど、猫背だし、細くて色白だし、ナヨナヨしている。そのクセに、ちょっと腰パンでイキってる感じがして、癪に障る。


(俺は、コイツに負けてるのか…)


純粋な嫉妬だった。


でも、学校で内田と郁奈が話しているところを見かけたことはない。同じ軽音部らしいけど、内田はいつも授業が終わるとすぐに帰っているようだったので、部活には顔を出していないのだろう。


(仲が良いわけじゃないのか…?)


それなら俺にも、と自分を奮い立たせていた。


------


それから、郁奈とはずっとメッセージのやり取りをしていた。


部活終わりにあやかやみんなと一緒に、少しずつ話す機会があったり。夏祭りは断られたけど、あれは少し時期が早かっただけ。体育祭でも、応援してくれたり、郁奈が怪我した時には、少しだけ2人で話すこともできた。


(今ならいけるかもしれない…!)


そう思って、思い切って図書室でのテスト勉強に誘ってみた。数学が苦手らしい。


断られるかとも思ったが、答えはOK。これで初めてじっくりと2人で過ごす時間が作れる。


俺はチャンスを逃さないように、数学だけ猛勉強した。


------


「へ〜、そうなんだ!内田くんか〜、見たことあるよ。確かにカッコいいよね〜!」


全然思ってなかったが、そう言うしかなかった。


自分がいたたまれなくなり、急いで帰路に着く。


正直、メッセージのやり取りも良い感じだし、今日も来てくれたので、少し希望を抱いていた。


(今のままじゃ、ダメなのかもしれない…)


俺は、これからのことについて考えていた。

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