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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
21/43

通学路

体育祭も終わり、夏休み前の日常が戻ってきた。

ある朝、私は目覚ましを止めたまま二度寝してしまい、慌てて飛び起きた。


(やばっ、遅刻する!)


自転車に飛び乗り、急いで学校へ向かう。

秋らしいいわし雲が浮かび、風が少し涼しくなったが、必死で自転車を漕いでいると汗が出てくる。


ふと、前方に見覚えのある背中があった。


(……内田くん!?)


赤信号で停まっているその自転車に、私は思わずスピードを上げた。


「……お、おはよう!」


声をかけると、渉はちらりと振り向いて「おはよう」とだけ返してくれた。

低くて淡々とした声。

でも、それだけで胸が跳ねる。


「……」

「……」


数秒間の沈黙とは裏腹に、行き交う車の音が2人を包む。


頭の中で必死に言葉を探していると、信号が青に変わり、渉はすぐにペダルを踏んで渡って行ってしまった。


(えっ……こういう時は、一緒に行くんじゃないの?)


追いかけるように私も渡ったけれど、渉の背中はぐんぐん遠ざかっていく。

そのまま学校に着いてしまい、結局、挨拶以外なにも話せなかった。


------


(でも……今まで通学路で会ったことなんて一度もなかったのに。奇跡みたい)


その偶然が嬉しくて、次の日も同じ時間に家を出てみた。

もしかしたらまた会えるかもしれない。

そんな淡い期待を抱きながらペダルをこぐ。


でも、その日、道に渉の姿はなかった。

落胆のまま校門の前に着くと、反対方向からやってくる渉の姿が目に入った。


(……え? そっちから?)


昨日とは違う通学路。

私の胸に嫌な予感が広がる。


(……もしかして、避けられた?)


偶然を喜んでいた自分が、急に滑稽に思えた。

胸の奥がずん、と沈む。


(やっぱり……嫌われてるのかな)


下を向いたまま、校門をくぐった。

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