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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
20/43

体育祭

夏休みが終わり、二学期最初の大きな行事――体育祭の日がやってきた。

校庭にはテントが並び、クラスごとに色分けされたハチマキを締めた生徒たちの声が響いている。


(競技中なら、堂々と見ていられる…)


そう思うと、私は少し浮き立った気持ちになった。

白いハチマキをした渉が走る姿を、正面から見られる。


(ハチマキ姿、可愛い…)


それに加えて、普段からおとなしい渉が、額に汗を光らせながら真剣な顔で頑張るその姿は、私にとって新鮮だった。


------


「郁奈、次は仁が出る競技だよ」


あやかに言われ、私ははっと顔を上げる。


そういえば、前に仁から言われていた。

『応援してね』って。


(ちゃんと見なきゃ…)


視線を向けると、こちらに気づいた仁が、にっと笑って大きく手を振ってきた。

その姿に胸がドキッとする。


(……そういえば)


夏休み中、仁からのメッセージは途切れることがなかった。


私が会話を切り上げても、翌日には「宿題終わった?」とか「今日暑いね」とか、どうでもいいような内容でまた送ってくる。


少し戸惑う気持ちもあったけど……正直、ほんの少し嬉しかったのも事実だった。


私は小さく手を振り返した。


------


そして迎えた障害物競走。各学年2人ずつ合計6人のリレー方式で、私は真美と2人で白組チームとして出場していた。


一年生はトップバッターだ。緊張で手のひらに汗がにじむ。


スタートの合図と同時に必死で駆け出したけれど、途中でつまずいてしまい、思い切り転んでしまった。


「郁奈、大丈夫!?」


周囲の声が飛ぶ中、顔を上げることもできず、結局私は救護テントに運ばれてしまった。


消毒液の匂いのする簡易ベッドに横たわりながら、心臓がばくばくしていた。


(……渉に見られてたらどうしよう。超恥ずかしい)


真美とあやかが付き添ってくれていたけれど、二人の出場時間が近づき、やむなく私を残してテントを出ていった。


ひとりきりの空間に、心細さが募る。


そのとき。


「……柏木さん、大丈夫?」


テントの入口に、仁が立っていた。

ペットボトルの水を片手に、心配そうに私を覗き込む。


「わざわざ来てくれたの?」

「当たり前だろ。心配だったから」


優しく笑う仁の顔を見て、胸が揺さぶられる。


(本当は、渉に来てほしかったな…)


でも、その気持ちを押し隠すように、私は小さくうなずいた。


仁の優しさが、心の奥にじんわりと沁みていく。

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