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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
2/43

素顔

翌日の昼休み。


「今日は親子丼にしよ〜!」


そう言いながら、真美が食堂の扉を開けると、昨日よりも賑やかで、ざわざわとした声と食器の音が混ざり合っていた。


「なんか今日は人多いね。先に席取ろうか」

あやかがあたりを見渡し、空いている席を確認する。私も釣られて、辺りを見渡したとき、


「あっ」


思わず声に出た。昨日の彼がいたのだ。


「え?何?」


真美はすぐさま聞いてきた。


「え、あ、あの、昨日の人があそこに」


昨日、水筒を取って教室に戻った後、私は真美とあやかに、彼のことを話したのだ。


「え!どこ!あれ?あの人!?」


騒ぎ立てる真美。


「真美、お願いだから静かにしてぇ〜」


泣きそう。


「あそこに座るみたいだぞ」


4人がけのテーブルに友達3人と座る彼を見て、あやかが言う。


「え!じゃあ隣行こうよ!郁奈、あの人の隣座りなよ!」

「へ?いやいや!無理!無理無理!!」


(恥ずかしすぎてご飯どころじゃなくなるよ…)


「いいじゃん。ほら行こう」


あやかはそう言うと、私の手を引いた。彼女にしては積極的だ。


「ちょっと、待って待って無理だって!」


強引に手を引かれ、結局彼の隣の席に座った。


------


(ほんっっっっとうに、やばい…)


緊張しすぎて、上手くおかずを口に運べない。彼の方も見れない。


『ねえ、ちょっと!もったいないからもっと見なよ!』


親子丼を頬張りながら、真美が小声で言う。


『無理だって!恥ずかしすぎる…』

『今マスク外してるよ!チャンスチャンス!素顔!』


私だって見たいんだよ…


『無理だよ…ねぇ、どんな顔してる?』

『普通の顔』


(普通って何だよ!)


真美の当てにならない感想にうんざりした私は、勇気を振り絞って、少しだけ彼の方を見た。


なんだ、真美の言う通り。普通の顔だった。普通。可もなく不可もなく。


(…でも)


彼の柔らかく細い髪を食堂の大きな窓からの光が照らして、薄らと茶色く見えた。女の子みたいに白い肌が際立って、より儚げな雰囲気を出している。


(完全な黒髪じゃないんだ…)


少し彼のことを知れた気がした。


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