表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
19/43

夏祭り

お盆休みに入り、補講は一旦中止。家でゴロゴロしていると、仁からのメッセージが届いた。


『今度の夏祭り、一緒に行かない?』


思わず心臓が跳ねる。

嬉しかった。……けれど同時に、頭の中に浮かんだのは渉の顔だった。


(もし……見られたらどうしよう)


胸の奥に不安が広がっていく。

しばらく指が止まったまま悩んで、それから私は、


『ごめん。家族で行く予定だから』


と打ち込んでいた。


送信ボタンを押した瞬間、罪悪感がのしかかる。

仁に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


(せっかく誘ってくれたのに…)


仁の気持ちに応えられない自分が、なんだか悪者みたいに感じられた。


------


夏祭り当日。

家族と一緒に歩く夜の河川敷は、提灯の明かりで昼間みたいに賑やかだった。

浴衣姿の人たちが行き交い、同じくらいの年頃の男の子たちがはしゃいでいる。


(……内田くん、来てないかな)


無意識に人混みの中を探してしまう。

そのたびに、心のどこかで落ち着かなくなる。


「郁奈!」


名前を呼ばれて振り向くと、真美と駿くんがいた。二人とも浴衣姿で、楽しそうに並んで歩いている。


「わぁ、浴衣似合ってる!」


私がそう言うと、真美は少し照れながら笑った。

駿くんは隣で、いつもより柔らかい表情をしていた。


二人のやりとりを見ていると、胸の奥がちくりとした。

真美の笑顔は、私やみんなと一緒にいるときより、ずっと幸せそうに見える。


その姿が、すごく可愛かった。


(いいな……私も、もし内田くんと一緒に来られたら)


ぼんやりそんなことを思ってしまう。


(そういえば、仁くんは、誰と来ることにしたんだろう…)


そう思った時、夜空に花火が上がった。

胸の奥で、消えない小さなもやが、音と光に紛れて揺れ続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ