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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
15/43

補泳

翌週。

渉の小指の包帯は、もう取れていた。


(あ…)


廊下ですれ違ったとき、ちらりと左手に目がいってしまう。久しぶりに見る渉の小指は、ほんの少しだけ曲がっていた。


(綺麗な指だったのに…)


胸が痛んだ。


------


「ねえねえ郁奈」

休み時間、真美が声をかけてきた。


「うっちー、先週怪我で水泳休んだから、今週末の放課後の補泳、出るんだって」


「補泳…?」


「授業に出られなかった人が、あとから泳ぐやつ。本当に話聞いてないじゃん。男女合同だよ」


(内田くんの!水着姿…!)


胸がドキンと跳ねた。


(補泳に行けば、見られるんだ…)


でも、そのためには私もプールの授業をずる休みして、わざと補泳に参加しなきゃいけない。


「どうする?ちょうど私は今週の水泳休まなきゃだし、一緒にサボっちゃう?」


真美が悪戯っぽく笑う。


(でも…ずる休みってなんだか…ダメな気がする…)


しばらく迷ったけれど、私は結局「やめとく」と首を振った。


「えー!もったいない!バレないよ!」


口を尖らせて真美が言う。


まじめな性分が勝ってしまった。


------


月曜日の朝。

1限目の移動教室に向かおうとすると、真美がにやにやしながら近づいてきた。


「補泳、やっぱりうっちー来てたよ」

「そ、そうなんだ」


私は、興味を抑えながら言う。


「普通に泳いでた。もう治ったみたいだね。うっちーの水着姿、写真に撮って郁奈に送ってあげたかったよ〜」


カメラのレンズを覗き込むような仕草をしながら言う真美に「……元気ならよかった」とだけ返した。


やっぱり、あのときサボってでも行けばよかった。


(私って、ほんとに…バカだな)


教室の天井眺めながら、そんなふうに後悔していた。


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