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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
13/43

アプローチ

それから、私は渉と少し気まずくなってしまった。

それに加えて、最近渉たちのバンドは、めっきり部活に顔を出さなくなっていた。


「こうやってみんな、幽霊部員になっていくんだよ…」


部長が遠い目をして言っていたのを思い出す。

まあ、部室が広々使えて練習しやすいからいいんだけどね。


一緒に練習する、茉莉とほのを眺めがら思う。


それにしても、


(私ばっかり意識しすぎなのかな…)


そんなふうに悩んでいるうちに、渉とのメッセージのやりとりもなくなり、私は毎日、廊下で渉を見かけては、眺めるだけになっていた。


------


「そういえばさ、郁奈」


昼休み。隣に座ったあやかが、何気なく切り出した。


「バレー部のやつに、郁奈と連絡先交換したいって言ってる人がいるんだけど…」


「えっ?」


意外すぎる話に、思わず聞き返した。


「誰だと思う?」と、真美が私に聞いてくる。どうやら、真美も事情を知っているらしい。同じ体育館で部活をしているので、面識があるようだ。


「4組の仁ってやつ。ほら、この前ベースもらった時、手ぇ振ってた男子いたでしょ?あれ」


(……え、あの時の?)


確かにそのことは覚えていたけど、顔までは全然印象に残っていなかった。


「郁奈、ああいうの苦手かと思って、ずっと断ってたんだけど、本当にしつこくてさ。嫌だったら断っていいよ」


そう優しく言うあやかに対して、「で、どうするの?交換するの?」と真美が捲し立ててきた。


「え〜…」


一瞬迷った。けれど、渉との進展は期待できないまま。


(ちょっとくらい…いいのかな)


そう思って、私は小さく頷いた。


------


後日。

夕飯が終わって、ゆっくりしている私に、初めて仁からのメッセージが届いた。


『はじめまして!仁です!突然連絡先聞いてごめん!これからよろしく!』


(わぁ…元気な感じだ)


なんだか眩しい。


「全然大丈夫だよ。こちらこそよろしくね」


そう送ると、すぐに


「ありがとう!」

「柏木さんって、軽音部なんだよね?俺もツーオクとか好きなんだ。柏木さんはどんな音楽聴くの?」


と立て続けにメッセージが来た。


(ツーオク…)


ツーオクは渉の好きなバンドだった。それを知ってから私も結構聞いてるし、好きといえば好きだったので


「ツーオク、私も好きだよ。蜃気楼とか」

「え!そうなんだ!蜃気楼良い曲だよね。俺は未完全列車とか!」


仁の返事のペースは早くて、会話も結構楽しい。


(内田くんと全然違う…)


そんなことを思いながらも、仁とのやり取りは絶え間なく続いた。


------


数日後の部活。

私はふとした拍子に、茉莉とほのが仁と同じクラスだった事を思い出し


「ねぇ、仁くんってどんな人?」


と聞いてみた。

5〜7組は、体育の授業が合同になっていて接点があるものの、4組とは全く接点がなく、仁の普段の顔について私は何も知らなかったのだ。


すると2人は顔を見合わせて、同時に笑った。


「仁くん?めっちゃお調子者だよ」


「そうそう!イケメンって感じじゃないけど、明るいし元気だし、誰とでも仲良くできるタイプ!」


口を揃えてそんなふうに言う。


(やっぱりそうなんだ)


スマホ越しに感じた印象そのままの評判に、なんだか安心した。


「それがどうかしたの?」と、ほのが不思議そうに聞いてきたので「最近連絡先を聞かれて…」と事情を説明した。


「そうなんだ!」とテンションが上がった茉莉を見て、私は少しこそばゆい気持ちになる。


こうして私は、仁に対してほんの少しだけ、好印象を抱き始めていた。


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