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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
11/43

過去

昼休み。

私たちは、もう食堂でお昼ごはんを食べるのをやめていた。


「やっぱり教室が1番落ち着くわー!教室ランチ最高ー!」


食堂で買ったカレーを頬張りながら、真美が言う。


私たちは食事をしながら、瑠夏の話題になっていた。


「ねぇ、瑠夏ちゃんってどんな子なのかな?もしかして内田くんの彼女とか…」

私は不安に思っていたことを口に出した。


「えー?うっちー彼女いないって言ってたよー?」

真美が答える。


「そ、そうなんだ!よかった…」

ほっとする私に、あやかが黙って笑いかけてくれた。


そのとき、斜め後ろの席から、ひょいと顔を出すクラスメイトの女の子。


「郁奈ちゃんって、うっちーのこと好きなの?」

「え!あ、あの、その…」


突然割り込まれ、ストレートに聞かれたので動揺する私。


「そうだよ!コトちゃん、うっちーのこと知ってるの?」


返事をして答える真美。

勝手にバラすな。まあ、教室で話してる私が悪んだけど。


コトは「もちろん!」と得意げに頷いた。


「だって、あたし中学一緒だったもん。うっちーも、瑠夏ちゃんも」


「えっ!?」

私たち3人は思わず声を揃えた。


「うっちーね、中学のときは、結構やんちゃだったんだよ。不良っぽい連中といつもつるんでてさ」


(えっ…!?内田くんが…?)


「今も髪の色、明るいよね。そろそろ黒染めしないと生徒指導行きじゃない?」


「え、内田くん、髪の毛染めてるの!?」


私はつい、前のめりに聞き返した。


「染めてるでしょ。元々黒髪だよ。どうせ春休みに金髪にでもして、入学式前に慌てて染め直したんじゃない?」


少し馬鹿にするような言い草だったが、私は金髪の渉を想像するのに忙しかったので、気にならなかった。


「でも、根は真面目だったし、図書委員とかやってたよ。親が厳しいから、勉強はちゃんとしなきゃいけなかったらしくて。それでこの高校に入ったんだって」


「へぇ〜」と真美も興味津々で聞いている。


私はというと――意外すぎる過去に、ただ驚くばかりだった。


(でも、よく考えたら、本当にそうなのかも)


私は、よくドラマなんかで出てくる「チンピラ」の映像を思い返していた。腰に入れた長財布、銀色の腕時計、パワーストーンのブレスレット。バイクも好きって言ってたな。


この間、イヌスタにあげてた画像に写ってた友達も、言われてみればヤンチャな感じだったかも知れない。


「それでね、瑠夏ちゃんは、中学の頃からずっとうっちーのこと好きだったの。何回も告白してるんだよ」


「えっ!?そ、そうなの?」

声が裏返ってしまった。


「うん。でも全部振られてる。理由はまあ、瑠夏ちゃん、中学の時はあんな感じじゃなかったし」


コトはおかしそうに笑ってみせる。


「どんな感じー?」


真美が聞くと、コトは何やらスマホを操作し、私たちの前に差し出した。


「ほら、これ。瑠夏ちゃんだよ」


そこには、クラス写真と見られる写真が表示されていて、コトが指差す先には、あの綺麗なロングヘアと


切れ長の一重の女の子がいた。


「え、これが瑠夏ちゃん?」


真美が驚いた様子で言う。


「そうだよ。高校デビューってやつ?中学の時は、もっと地味で、そんなに目立つグループでもなかったし」


私も驚いた。でも、今と変わらず顔立ちは整っていて、面影はある。


「でもさ、瑠夏ちゃん諦めてないっぽいよ。だって、この学校に入ったのも、うっちーを追いかけて来たってウワサ」


そう言いながらクスクスっと笑って、コトは元の席に戻っていった。


------


「……」

私は箸を止めたまま、言葉を失っていた。


(瑠夏ちゃんが、中学の時から…ずっと…?)


心臓の奥に、小さな棘が刺さったような痛みを感じる。


「なるほどねぇ。これはライバル強いかもね」

真美がわざとらしく呟く。


「やめてよ…!」

私は慌てて制止したけれど、胸のざわつきは簡単に消えてはくれなかった。


(私なんかじゃ、可愛くなった瑠夏ちゃんに、敵わないんじゃないかな…)


昼休みのざわめきの中で、私はひとり俯いたまま、冷めてしまったお弁当を見つめていた。

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