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初恋が終わるまで  作者: 生ハム
高一編
10/43

ライバル


ある日の放課後。

その日、軽音部は休みだったが、部室の方からピアノの音が響いて来た。


(え…?ピアノ?)


軽音部にはピアノを弾く人なんていなかったはずだ。

そっとドアの隙間から覗くと、長く透き通るように薄い色の髪を揺らしながら、歌う女の子の姿があった。


(きれい…)


なんだか、渉に似てる雰囲気を感じた。


細いが鍵盤の上をすべるように走り、優しい伴奏と柔らかく透き通った声が部室に広がっていた。

私は思わず見とれてしまった。


しばらくすると、女の子がふと顔を上げて、こちらに気づいた。


(あっ…)


私は反射的に窓から離れ、逃げ出してしまった。


(な、何やってるの私!ただピアノ聴いてただけなのに…!)


胸の鼓動が早くて、落ち着くまでしばらく時間がかかった。この日は音楽部が部室を使う日だった。


------


次の日。

教室から廊下に出た私は、遠くに渉を見つけた。


「内田k…」


声をかけようとした時


「うっちー!」


私より先に、渉に駆け寄る女子生徒が声をかけた。

6組の教室から出てきたのは、


昨日、ピアノを弾いていた女の子だった。


彼女は渉に近づき、楽しそうに何かを話している。

渉も穏やかに相槌を打っていた。


私は遠くからその様子を見ているだけで、足が動かなかった。


やがて会話を終えた女の子は、振り向いて真っ赤な頬に両手を当て、嬉しそうに微笑んでいる。

それを見た6組の友達らしき生徒たちが、彼女に駆け寄る。


「瑠夏ちゃん、よかったね!」

「やったじゃん!」


(瑠夏…っていうんだ)


友達の言葉に照れくさそうに笑う瑠夏。

その表情を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと痛んだ。


(…そうか。瑠夏ちゃんも、内田くんのことが好きなんだ)


昨日見た、あの真剣な横顔と、今のはにかむ笑顔が重なり、私は立ち尽くしたまま動けなかった。

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