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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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45/61

イケメンはごめんなさい!! 40

「ウー!!ングッグッ!!バッボフフッ!!」

「えっ?何ですか?良く聞こえませんが?」

 東砦騎士団本部。地下牢。普段ならば犯罪者等を収監して置く場所であるその一室にロッシュは転がされていた。

 通常の牢屋とは違い、牢のあちこちに札としめ縄で覆われた異質な牢屋の前に立つのは黒の騎士団現団長であるマクシミリアン・ヴィルヘルム・ハノーヴァだ。

「今回の制御装置は東の巫女様直々に書いて下さったそうですよ?貴方が前回破壊してくれたお陰で私は一瞬肝を冷しましたがね」

 ニッコリと微笑を浮かべ拘束具で動けなくなった元上司であるロッシュに笑いかけた。

「ですが、貴方のお陰でリアム様からのお願いを頂けたことは感謝はしていますよ?それに、()()()拘束具の方にも制御装置付けていますので逃げられませんから」

「んんんっ!んぐぐんー!!」

 ロッシュは嵌められた口枷をギリギリと噛み、マクシミリアンを睨み付けていた。

「………五月蝿いですね」

 マクシミリアンはそう言って腰に下げている剣に手を伸ばす。スラリと抜き、月光に照らされキラリと光を放つ細身の剣はレイピアと言う。

 その細身の剣を牢の隙間から入れ、そのままロッシュに向かって振り下ろした。



 ***



 感謝祭最終日。

 商業地区に建ち並ぶ店は午前中のうちに営業を終了した。

 もちろん、露店も例外なく午前中で大体の露店が店じまいとなっている中瀬奈達も最後のお客様を見送り片付けに入る。

「セナ、僕とリーフはお世話になったご近所さん達に挨拶してから戻るから先に店に戻ってくれる?」

 シャルが箱の中に最後の商品を入れ、それをヨイショと持ち上げて瀬奈の隣に立つアヴィへと手渡した。

「僕が持って行くの?」

「当たり前でしょ?女性に重たい物持たせてどうするのさ。後、これとこれと……これもお願いね」

 シャルは他にも色々と重たい荷物を入れた箱をポンポンと、アヴィの持つ箱の上に積み上げていく。

「ねぇ?ちょっと多くない?」

「気のせい気のせい」

 あっという間にアヴィが見えなくなる程高く積まれた箱。瀬奈はと言うと、小さな手提げ鞄1つ。

「さっ、流石にこれじゃあアヴィ君に悪いよ。私も1つくらい持つね!」

 店まではそこまで遠くないとは言え、これでは流石にアヴィが不憫過ぎるので1番小さい箱を手に取った。

 颯人さんをはじめ、ハーフエルフの3人は女性に対して過剰な程の気遣いを見せる為瀬奈は少々困っていた。

「それじゃ、帰ったら颯人に宜しく伝えて」

「うん、分かった」

 リーフとシャルは籠を持って中を確認する。これから、世話になったご近所さん達にお礼の品を配るらしい。

「残りはまた明日に片付けだね。2人共!今日は楽しんで!」

 瀬奈達とは逆方向に歩いて行く2人にそう声をかけると、2人も瀬奈に。

「セナも!やっと元気になったみたいで良かったよ今日は楽しんで!」

 お互いに手を振り合ってそれぞれ歩き出す。時計台の針が正午を指すと大きな鐘の音が響き渡った。

「あっという間の7日間でしたね」

 前を歩くアヴィは、荷物で前が見えないはずなのに器用に人波を避けて歩いている。きっとどこか別の場所に目が付いているのでは?と疑いたくなるほど器用に避けて歩くものだから、ついつい歩きやすいアヴィの後ろを歩いてしまう。

「そうだね、色々とあった感謝祭ももう終わりなんだーって思うとちょっと寂しいよね」

 瀬奈は時計台を中心に建てられた櫓を見上げた。今は筒状の物がいっぱい櫓に積み込まれている最中のようだ。夜になったらカウントダウンと共に一斉に花火が打ち上がると颯人さんが言っていた。間近で上がる花火は中々見れないから面白いとも言っていたので瀬奈は内心楽しみにしている。

「寂しいですが、次は王城で夏の舞踏会がありますよ?」

「ぶ!舞踏会?!」

 聞き慣れない単語に瀬奈は驚く。それこそ物語の中のイベント行事ではないか。

「そうですよ。この感謝祭が終われば本格的な夏がこのラルミノ国にも訪れます。結界を張って暑さ等の調整はしているとは言え、暑いもんは暑いんです」

 そう力説するアヴィ君。たぶん、暑いのが苦手なんじゃないかと瀬奈は推測した。けれど『暑いもんは暑い』それには激しく同意しかない。

「なので、王城で舞踏会が開かれるんです」

「…………?」

 暑い中、更にあのヒラヒラなドレスで踊っている方がよっぽど暑いのでは?言葉には出さずとも顔にはそう書いてあったのだろう。アヴィは瀬奈のそんな顔を見てクスリと笑った。

「すみません、言葉が足りなくて。夏の舞踏会と言ってもセナ様が想像している様なキラキラしたものじゃないと思いますよ?」

 アヴィは一度言葉を切ってから、何と説明すれば良いのかを考える素振りを見せる。

「セナ様が想像したのは多分、貴族達が集まって踊る様な舞踏会ですよね?」

「うん、そうだけど……違うの?」

「王城で開かれる舞踏会は幾つかあるんですが、夏だけは違うんです。分かりやすく言ったら避暑地ですね」

「避暑地?」

「城内の庭に大きな湖があるんですが、そこに真っ白な雪の樹を立て湖も一面氷で覆われるんです」

 その様子はまるで冬の景色みたいだと瀬奈は思った。

「その湖の周りで涼む期間を夏の舞踏会と呼んでいます。この期間中は、僕達みたいな一般の人でも入る事が許されるんですよ」

「確かに、とても涼しそうね」

「はい!それはもうと〜ても冷たくて涼しいんです!頬に触れる氷がもうなんとも言えない!!」

 ウットリとした顔のアヴィを横目に、瀬奈は夏場のアイスリンクを想像する。上からは夏の暑さ、下からは冬の冷たさ。

「なんか余計に蒸されて暑そうだけど……」

 そんな話をしていたら、ベルフルールに到着。店の正面には『close』の札。2人は裏口の方に周り扉を開ける。

「お帰り〜露店の方、殆どやってもらっちゃってごめんね。すっごく助かっちゃったよ」

 店内には颯人とエバーの2人が片付けをしている。露店から持って帰ってきた商品を2人の隣りに置く。

「これで全部?」

「うん、これで全部。リーフとシャルは挨拶周りして来るから少し遅くなるって」

 持ち帰った商品と、売上の入った袋をエバーに渡した。

「分かった。セナもご苦労様」

 受け取った袋の中を確認する。その中から数枚の硬貨を取り出しエバーは瀬奈に差し出した。

「えっ?何?数が違ってた?」

「違う。お小遣い」

 真顔のままのエバー。冗談は言っていない雰囲気におもわず隣の颯人を仰ぎ見る。

「瀬奈ちゃん今回頑張ってくれたから、俺達からの気持ちだと思って受け取ってくれると嬉しいかな?」

 いつもの軽い笑顔のままニッと笑う。

「それに、この後の祭り楽しんで行くんでしょ?」

「……その予定ではありますけど………」

 この後、アヴィと共に夜の感謝祭を一緒に回るつもりだ。特に今日は特別に花火まで上がるのであれば見てみたいと瀬奈は思っていた。その間にちょっとした屋台で買い物をしようと思って、小遣いはしっかりと財布に入っている。瀬奈は2人から貰った小遣いを見る。小遣いとしては明らかに多過ぎる硬貨に指を伸ばすが。

「瀬奈ちゃんの作った商品の売り上げもあるからさ、今日は楽しんできて。それに」

 声量を落とした颯人の声が耳元の近くに落ちてくる。

「この間2人の事で心配かけちゃったし……今日はなんだか朝からご機嫌みたいだから」

 大きな手が瀬奈の頭をポンポンと叩く。

(ご機嫌……そんな顔に出てたかな?)

「そうそう、迷惑料だと思って受け取っておいて」

 エバーもそう言いながら瀬奈を扉の方までグイグイと押しやる。

「それじゃ、行ってらっしゃい」

「あっ!ちょっと、待っ」

 パタリと鼻先で扉が閉められた。扉の向こうでは颯人とエバーの声が微かに聞こえている。手の平の硬貨を握りしめて瀬奈は。

「アヴィ君!」

「はいセナ様」

「今日は楽しみましょ!」

「はい!僕も初めてなので楽しみです!」

 2人は裏口から大通りに向かって歩きだした。

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