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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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44/61

イケメンはごめんなさい!! 39

 相変わらず変な女だとリアムは思った。

 先日も屋敷の図書室に資料を取りに戻った時、キャスターと戯れているのかと思い話かけたところ、外れた螺子を直しているのだと言いその後なんと表現したら良いのか分からない表情で立ちすくんでいた。

 次に見かけたのは屋敷裏の湖だ。

 雪華樹(せっかじゅ)製作の為の真珠貝をあの湖に放流している、飼育はアヴィに任せてある為過程の詳しくはアヴィに聞いて欲しい。その真珠貝の様子を見ようと湖へと向かった先に、百面相でもしているのか?とでも言う様な表情の保護対象者が(ほと)りで座っていた。

 何かに熱中でもしているのか、自分の存在に気づかない彼女に声をかけるか迷っていたがくるりと振り返り。

「馬鹿ーーーー!」

 挙句、馬鹿と罵られた。



 はぁーー。

 長い溜め息と共に、熱い珈琲を喉に流し込む。そんなリアムの様子を笑う者が1人。

「何?今度の頭の痛い問題はどこの団?」

 キラキラした長い金髪に、頭に花冠を載せた男がニコニコとしながらリアムに話かけてくる。

「………どこでもない」

 そう言うと、金髪の男。ラルミノ国宮廷伯であるエリアスがわざわざ隣に座りリアムの顔を覗き込んでくる。

 非常に面倒くさい男だとリアムは思っている、だがこの男とは何故か1番良く居る気がするのは何故だ?

「じゃあ〜誰に馬鹿なんて言われたの?この国で1番強い君に『馬鹿』だなんて言う人がいるなんて、信じられないんだけど?」

 キラキラと振りまく完璧な笑顔が心底面倒くさい、と思いながらも無視を決めこむ。関わると大概面倒事に巻き込まれてるのはいつも自分だ。

「えっ?無視なの?この私を無視するの?酷いよー」

 等と言っている。が、彼には情報通の風の妖精達が味方している為、変に隠し事は出来ない。まぁ、自分の屋敷には結界を張り、更にその結界ごと別の空間に存在させているので滅多な事がない限りは妖精と言えども侵入は出来まい。

「プライベートだ。たとえ君であろうと、土足で踏み込むのは如何なものか?」

 隣で肘を付いたままエリアスはニコニコとしている。

「ふ〜ん。……最近、東の国の20年物の古茶が手に入ったんだけど」

 エリアスは考える素振りをしつつ横目で不機嫌顔のリアムを盗み見ていた。その言葉を聞いたとたん、リアムのカップを持つ手が止まる。カップはスッとソーサーの上に静かに降ろされた。

「…………何が聞きたい」

 リアムは先程よりも長い溜め息を吐き出しながら隣に座るエリアスに視線を移し、何が聞きたいのか問う。

「もちろん、君の面白い話さ」

 上っ面の笑顔が少しだけ親しみを込めた笑顔へと変わる。

「………程々で頼む」



 ***



 リアムの1日は状況により常に目まぐるしく変化する。

 今日も今日とて、朝から晩まで忙しい。何故なら今は騎士団の殆どが出払ってしまっている事態に陥ってるからだ。ラルミノ国の王城には常駐の赤の騎士団、それ以外の騎士団員がほぼほぼ散らばっているとは……。

「討伐隊と感謝祭の警備や要人達の護衛。それに、貴族絡みの誘拐だと?ふざけているのか?」

 カッカッカッと靴を鳴らしながら誰も居ない廊下を歩く。今の時刻は太陽がまだ山の向こうにいる時刻だろう、普段であればこの時間でさえ騎士団の団員達で溢れかえっている廊下がこんなに鎮まりかえっているのは人手不足に陥ってるからだ。

 門兵ですら駆り出され、騎士団に残っていたのは黒の騎士団のマクシミリアンとその副団長のみ。

「もう一度鍛え直すか?」

 いや、リアムにはそんな時間すら今は惜しい。信頼性の高いある情報筋から得た情報によれば、今回組まれた討伐隊に居るとの事。その目当ての人物が危機察知をし逃げる可能性がある為急いで向かわなくてはならない。

「やっと見つけたぞ、ロッシュ!」




「ぶあっくっしょいっ!!」

 なんとも豪快過ぎるクシャミをするこの男。名前を―。

「ロッシュさん!!こっちに唾飛ばさないで下さいよ!!」

 クシャミの餌食になった騎士団員の1人が、ハンカチを取り出し飛ばされた唾諸々を嫌そうな顔で拭う。

「悪ぃ悪ぃ、何だ?誰か俺の噂でもしてんのかねぇ」

 鼻水をズズズと啜り、伸びっぱなしの髭に手入れのされてないボサボサの黒髪。褐色の肌に服の上からでも分かるくらいの筋骨隆々の逞しい身体。

 名前を、ロッシュ・ローデンステインと言う。リアムが探している人物である。

「ロッシュさん!通信宝珠からの連絡です!前方十時の方向に……!!?」

 後方から走って来た伝令の団員の頭をロッシュは鷲掴み、そのまま剥き出しの地面に押し付ける。突然の暴挙に、押し付けられた団員が抗議の言葉を発する前に何かが凄いスピードで上を通り過ぎていく。

「小型のワイバーンの襲撃ですっ!!」

「皆!頭を伏せろ!!持ってかれるぞ!!」

 狭い森の中を低空飛行で飛んでいくワイバーンの群れを躱し、ロッシュの合図で団員達は一斉に攻撃態勢を取る。

「狭い森ん中だ!照準はギリギリまで絞れっ!!」

 頭上スレスレを飛び去って行ったワイバーンの群れは森の中で旋回し、再度こちらに向かって飛んでくる。

「3!2!……撃てぃ!!」

 ロッシュの合図で、ギリギリまで絞った光の矢がワイバーンの眉間を貫いていく。

「撃ちもらし3体!!抜剣!!」

 光の矢の魔法を放った隊とは別の隊が素早く抜剣する。絶命しバラバラと上から落ちてくるワイバーンを足場にロッシュが先頭を走り、1体を豪快に真っ二つに切り裂く。

 残りの2体はロッシュの後ろを追いかけていた団員達が数人がかりで倒した。

「………で?通信宝珠が何だって?」

 何事も無かったかの様にロッシュは幅広な剣を肩に担ぎ、先程組み伏せた伝令を見た。背後では魔物の死骸の確認を他の団員達が行っている。なんとも即席とは言えない程統率の取れた行動に、新人の騎士達は感嘆の声をもらす。

「あ?気絶してらぁ。悪ぃ事しちまったか」

 ボリボリと頬を掻き、転がっていた宝珠を拾い上げた。ほんの少しだけ魔力を流せば宝珠は光り向こう側にいる相手と繋がる。

「もしも〜し。こちらロッシュ。伝令が気絶してるんで……!?」

 背後に違和感を感じロッシュは振り返る。だが、何もない。背後にいた団員達も何事かとロッシュを見るが、至って通常の作業をしている。だが、最初に動いたのは()の騎士団員達。

「っ!マジかっ!!」

 気づいた時にはもう遅い。

 風を切る重たい剣撃がロッシュを襲う。力には多少の自信があるロッシュでさえ両足の踏ん張りで地面にめり込む程だ。

「ぐっ!!」

 押し返す様に力を込めるがびくともしない。互いの押し返す力が均衡し剣同士がガチャガチャと鳴る。だが、次第に均衡は相手が優先になりロッシュの剣が嫌な音と共に剣身へと亀裂が入る。

「こんっの!馬鹿力!!」

 ロッシュは剣身が砕けると共に一本後ろに下がり、相手を睨みつける。

「ふん!お前相手に手加減など出来るはずなかろう!また逃げられるではないか」

 そう返すのは白の騎士団服を纏ったリアム。薄い紫の髪から覗く真っ赤な瞳はいつになく好戦的だ。

「またまた〜、まだ()()姿()のままではないですかっ!!」

 ロッシュは短剣を懐から取り出し、そのままリアムの顔面に向けて突き出す。リアムの方はロッシュの剣身が砕けた事によりそのまま勢いを殺すことなく剣を振り下ろしていた。

 振り下ろした剣圧が周りの土や砂を巻き上げる。

「……チッ、浅かったか」

 ロッシュの短剣はリアムの髪一本を切り落としただけで軽々と避けられていた。

「精進が足らん……目が覚めたら覚悟しておけ」

 リアムの剣が鞘に納まると同時にロッシュは膝から崩れ落ちた。その一瞬の攻防に新人騎士達はどよめく。

「拘束具を奴に!他は引き続き魔物討伐へと向かう!隊を組み直せ!」

 リアムが声を張り上げれば即座に行動を開始するのは白の騎士団。団員の1人が何処からともなく仰々しい程の拘束具を持ってくる。

「巻いたら奴は後方の部隊に回収させておけ」

「了解致しました!」

 手馴れた様子でロッシュは拘束具をつけられ、後方部隊へと連れて行かれた。

 その一部始終を他の騎士団の面々は恐々とした様子で見ていた。

「なぁ……一体何が起きたんだ?」

「………どれについてだ?ロッシュさんの事か?それともリアム様か?もしかしなくても何処からともなく現れた拘束具か?」

 何故、あんな拘束具が常備されてるのかは聞かない方が良いのかも知れないが。

「あ〜全部かな?」

「だよな?………だが俺も分からん」

 そんな途方にくれた様子の顔をした団員達の肩にポンと手が置かれる。

「………気にしたらあかんで。各騎士団、特色があるが白、黒、赤の特にリアム様率いる白の騎士団は格別変わっているからな」

 団員達の肩に手を置いた当人は、その変わり者の一角である黒の団服を纏っていた。狐顔のその男は糸目の様な細い目で、周りの新人団員達を見回した。

「最後のリアム様の攻撃だが、団ち……じゃなくて、ゴホン。ロッシュさんが打ち込んできた短剣を避けながら、リアム様の剣の柄がこめかみに一打そのまま剣身で膝裏を打ち、左手で更に首の後ろに手刀を加えていた。徹底的に頭を狙いに行ってるところがエグいけど……まぁ、相手がロッシュさんだからな」

 分かりやすいようにジェスチャーを加えつつ男の説明が終わると、周りから感嘆する声が聞こえてくる。あの一瞬でそんな事がとか色々。

「あの…もう一つ質問良いですか?」

「ん?オレで分かる事ならかまへんで」

「ロッシュさんってどこの所属騎士団の人なんですか?」

「そこかいっ!」

 ついつい突っ込んでしまった狐顔の男はその質問をしてきたまだ若い団員を見る。色は薄い緑色の制服だ、まだどの団にも所属していないカラーズの一員だと気づいた。だとしたらロッシュの事を知らない団員もいるだろう。しかも、騎士団の服すら着てなかったからなあの人。

「あの人はな……」

 続く言葉はリアムの声でかき消された。

「この討伐隊の指揮権をロッシュから私リアムへと移す。この討伐は今日中に終わらせる為各々迅速に行動せよ!行くぞ!」

「はっ!!」

 統率の取れ過ぎた白の騎士団員達は号令と共に隊列を組直す。行進する足音でさえも綺麗に揃い過ぎていて逆に『気持ち悪いな〜』と狐顔の男は心の中で思っていた。

「ほな、僕らも行きますか」

 前を行く白の騎士団達の『気』に圧倒され固まっている新人騎士達にそう声をかける。

 そして、リアムと白の騎士団達を先頭に禁止地区の討伐は始まった。団長であるリアム様を戴く白の騎士団達と、共闘で動いていた警ら隊の活躍は目覚ましく予定していた半分の時間で魔物討伐が終了した。

 今回の討伐で気になる点はいくつかあったが、それは後日にしよう。


 何故なら、今日は感謝祭最終日。

 連日の激務に晒されていた団員達に僅かでも休日を、との計らいの為だ。

 東砦騎士団本部。

 執務室にてリアムは濃いめの珈琲を口に運ぶ。昨日までの死屍累々と化していた部屋は塵1つなく片付けられていた。

「お味はいかがですか?リアム様」

 部屋には、リアムと恍惚とした表情で見つめるマクシミリアンの2人。

「ああ、丁度良い濃さだ。して、ロッシュの見張りはどうだ?」

「勿論万全の態勢で見張りをしています」

「拘束具はそのままに……制御装置が起動しているとは言え奴は()の騎士団元団長。力だけは馬鹿みたいにある上に前回のこともあるから油断はせずに」

 前回、ロッシュを騎士団内の地下牢に放り込んだのだが脱獄されていた。しかも、魔力を無力化する制御装置が牢内に張り巡らせてあるのにも関わらず。

 つまりは、馬鹿力だけで破壊し脱獄したと言うわけで頭の痛い事が起きていた。今回はそれを踏まえ、制御装置付きの拘束具を付けたまま放り込んである。

「心得ております……おでかけですか?」

 飲み終わった珈琲をソーサーに置き、真っ白な団服の上から上着を羽織る。

「今日はもう上がりだ。マクシムも余り無理はせずに」

「………はいっ!リアム様!」

 閉じた扉にマクシミリアンは頬を染め深々と頭を下げていた。

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