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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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40/61

イケメンはごめんなさい!! 35

 瀬奈は見慣れた天井を見て大きな溜息を吐く。その天井も先日卒業したばかりだと言うのにまた逆戻りしてしまった。

「はぁ〜、自分が情けなくて恥ずかしい……」

 両手で顔を覆ってゴロゴロと恥ずかしさに悶えたい所だが、体が痛すぎて動かない。

 まさか、少し走っただけで筋肉痛になってしまうだなんて思わないじゃない?

『その日にくる筋肉痛はまだ若い証拠』とは、良く聞くけれど実際に筋肉痛になってみるとショックが大きいのは自分の中ではまだ学生の頃と同じだと思っているからだろうか。

「……幾ら怪我で動けなからってここまで筋肉が落ちるものなの?私も、もう若くは無いって事なのかな……」

 元の世界にいた時も毎日ではないが割と体を動かしている部類であった瀬奈は、明日から走ろう!と、心の中で決心したのだった。


 あれから数日。


 瀬奈の朝は早い、太陽が登る前に軽く朝食を食べストレッチで体を温めてから湖の周りを走る。

「はあ、はあ、はあ……」

 流れ出た汗をタオルで拭い、喉を潤す為に自分で作った蜂蜜入りレモン水を流し込む。

 今日も山向こうから少しずつ太陽が登ってきて、眩しい光に目をすぼませ瀬奈はポケットに入れた携帯の充電を見てから再生ボタンを押す。

 耳に付けたイヤホンからは聴き慣れた音楽が流れ始め、瀬奈はまた走り出す。

 そんな様子を遠目の屋敷内から見ていたネルファデスは首を傾げた。

「あの、緑色の服は何処から?」

 気になったのは瀬奈が上下真緑のこの屋敷では見た事がない珍妙な服を着ていたこと、瀬奈の持ち物の中にもこちらに来た時に着ていた服とも違う服装に隣に立つの人物へと話かけた。

「あれは、メイドの誰かからの贈り物ですね」

 ぴょこぴょこと特徴的なツートンカラーの髪に犬耳の様にクルリと反り上がった寝癖が両サイドの頭で揺れている。

 犬耳みたいなその髪は本人曰く『産まれた時からの寝癖です』だそうだ。

「贈り物?」

「詳しい事は僕も聴いたわけじゃないので分からないですが、アンジェリカさんの所のメイドがセナ様に差し上げているのを見かけました」

 アンジェリカのとこのメイドと言うと、何人かがセナ様と話されていたと思うのだが……。ネルファデスは覆面をしているメイド達を思い出すがアンジェリカの趣味なのかたまたまなのかは置いておいて身長、体型、声質も皆似ていて見ただけでは実際のところ見分けがつかない。

 ただ、皆それぞれ自分の好きな匂いの香水を使っているようでネルファデスの場合はそれを嗅ぎ分けて名前を呼んでいる。

「誰が送ったのか調べておきますか?」

「………いえ、そこまでは調べなくても良いでしょう。引き続き宜しくお願いします」

 アンジェリカのメイド達なら問題はないと判断し、そう答えた。

「了解です………あっ!」

「どうしました?」

 ネルファデスの位置からでは高台の向こう側は見えない、何かあったのかと隣のアヴィを見るが。

「今日も何故か奇声をあげているみたいです」

 アヴィは淡々といつもの報告を聞いた。最初のうちは何事かと思っていたネルファデスとアヴィだが、瀬奈のその行動は習慣的に起こる一種の性癖の一部ではないか?と、認識していた。

「その報告はしなくても宜しい」

「了解です。……あっ、戻ってくるようですよ?」

「分かりました、アヴィ貴方は後日セナ様に紹介しますからそれまでは……良いですね?」

「分かってますって、それではいつもの仕事に戻ります」

 アヴィはそう言って()()()()()()の仕事へと戻って行く。

 軽やかな足取りで去っていくアヴィの背を見送り、そしてもう一度高台の方を見れば瀬奈が小走りで戻って来るのが見えた。

 この後、彼女は部屋に戻り使用人屋敷の風呂で体を清めた後は自分で作った軽めの朝食を食べるだろう。

 ネルファデスは腕時計で時間を確認し、本日のコーヒー豆をどれにするか頭の中で考える。屋敷の主人がお茶に対してのこだわりが強いせいか、執事であるネルファデスも主人に習いお茶以外の飲み物でも自分の独自のブレンドを極めていた。

「今日は少し濃いめにしておきましょうかね」

 ネルファデスはアヴィとは逆に歩き出し、帰ってくる瀬奈の為にブレンドしたネルファデス特製コーヒーを持って本日の授業の準備を始めた。


 それから数日後、アヴィと顔を合わせを済ました瀬奈は商業地区でたまたま入ったお店『ベルフルール』に生徒兼臨時のバイトとして向かう事になった。



 ***


 使用人屋敷の食堂兼厨房にて。瀬奈は何かと良くしてくれる覆面メイドの1人、メリルと朝食を共にし今は食後のコーヒータイムを取っていた。今日はメリルに渡したい物があったので丁度良かった、部屋から持って来ていた袋をメリルへと差し出す。

「この間は服貸してもらって助かったよ、ありがとうメリルさん。お礼にお菓子買ってきたんだけど休み時間にでも皆で食べてね」

 そう言って、瀬奈はカラフルな包装で包まれたお菓子を差し出した。先日、ベルフルールの常連さんが持って来てくれたのだけれど美味しかったのでお店の名前を聞いておいたのだ。いつもお世話になってるメリルさんや他のメイド達に何かお礼をと思っっていたので、美味しい物が見つかって良かった。

 常連さんによれば最近オープンしたばかりの店で、人はまだまばらだと言う。けど、人気店になるのは時間の問題だろうと言っていたのでその前に買えて良かった。

「こんなにいっぱい、ありがとうございます。セナ様のお役に立てたようで何よりですわ、あの服はセナ様に差し上げるつもりでしたのに……」

 覆面で表情は分からないが、メリルさんの声は少し残念そうだった。

「いやいや、そこまで親切にしてもらうなんて申し訳ないよ。貸してくれただけでも随分助かったし、今度お店の常連さんが安い服が置いてあるお店を紹介してくれるって言ってたし、それに貰った緑色のジャージは重宝させてもらってるからぜひ受け取って欲しいな」

 そう、瀬奈にとってはあの見慣れた上下緑色のジャージはメリルが瀬奈にプレゼントした物だった。昔、異世界人から買った物らしいんだけど何故それを買ったのかの経緯の方が気になる所ではあるが服のレパートリーがない瀬奈には、たとえ学生時代のジャージにしか見えないジャージでも大変ありがたい代物だったのだ。

「そうですか?」

 メリルさんには故郷に妹がいるらしい。歳の近い妹で仲が良かったそうだ、その妹に私が少し似ているみたいでつい世話を焼きたくなってしまうのだと、以前言われたことがある。

「ありがたいことに、ネル君からもこの間の草むしりでお給金貰ったし、自分のお金で選ぶの楽しみだから本当に気にしなくて大丈夫だよ。でも、気にかけてくれてありがとう」

 ニッコリと自然に笑えているだろうか?こちらに来てから笑っていないことに気づいた。と、言うか初めてベルフルールに行って同じ異世界人で同じ日本の颯人さんに会った後の帰り道、ネル君に『今日は楽しそうで何よりです』と言われて気付かされた。

 気を張ってないつもりでいたけれど、無意識に気を張っていたことに。

 メリルさんとは食堂で別れ、瀬奈は自室に戻りベルフルールに行く準備を始めた。

「さて、今日は確か店番のお願いされてたし……調べたい事もあるから屋敷の図書室で本を借りて……これもメモ代わりに持って」

 瀬奈は携帯と日光浴中の充電器を手提げ鞄に入れていく。そして、別の充電器を机の上に置き日光浴させておく。

「ヨシっ、今日もいっぱい光を浴びるんだよ〜」

 そう言って、部屋を後にしネルファデスの待つ屋敷正面へと向かった。

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