イケメンはごめんなさい!!4
セナは頭を抱えベッドの中に潜り込んだ。
(なんで!なんでこんな事になったの!?)
3週間の療養もそろそろ終わりに近づいていたある日の午後。ネル君から衝撃の一言が放たれた。
「さて、今日の授業はここまでにしましょう。前回観た時も思いましたがだいぶ怪我の治りが早いようで安心しました。魔法の代わりの薬湯がセナ様の身体に合っていたようですね。それでは最後の診察をしますね」
「はい」
(あれ?もう3週間たったの?)
セナはパチクリとベッド横に座り診察の準備に入った少年執事を見る。
「少し失礼しますね」
そう言って、ネル君は最初は包帯グルグルになっていた左手を労わるように優しく持ち上げると動きの確認の為グーパーさせたり軽く回したりして痛くないかの確認をしてきた。
「これはどうです?痛くないですか?」
「はい、もう全然大丈夫です」
全治3週間。そこまで大きな怪我も無いように見えた私の体は実はバキボキに折れていたと知ったのは怪我から五日後の事だった。
「えっ?そんな状態なのに私全然痛くないんですが?」
「初日に医療魔法で骨自体は治してあるのでそこまで痛みはないと思いますが…セナ様の場合、外の世界の人間ですので魔法に対する抗体がまだなく拒否反応が出てしまいましてね。完全に治す予定だったのですが骨だけは何とか治してもらって後は本人の自然治癒能力に任せることになったのです」
「拒否反応、ですか?じゃ、何かしらの魔法を掛けられたりすると毎回でちゃったりするんですか?」
「いえ、この世界に来たばかりで体が順応していないだけですので少しづつ慣れていきますよ」
「ちなみに、魔法の拒否反応って熱とか出たりとかです?」
インフルエンザとか風邪みたいに熱が出て鼻水なんか出たりするのが拒否反応の症状な気がして、何となく聞いてみた。
「………そんな感じです」
ニッコリ笑ってネルは他に異常はないか私の体を確認しだした。
(えっ!今なんか間が………何!いったい最初の3日間は私どうなっちゃってたのか凄い気になるんですけど!)
「はい!他も異常なし!明日からは引き続きこの世界の事と、リアム様への対応を頑張って行きましょうね」
「えっ!?」
「この何日か勉強して、少しだけこの世界の仕組みに触れたセナ様ならリアム様との対面が必要不可欠な事だって分かるよね?大丈夫、対策は僕がしっかりしておいたから!今日はゆっくり休んで」
そう言ってネル君は部屋を出て行ってしまった。
「ちょっ、あっ………」
私の手は虚しく空をかいた。
***
まず始めに。
私は異世界に落ちました。
最近ブームになってる死んで異世界転生!
否。
異世界召喚!いざチート能力!
否。
悪役令嬢!恋する乙女ゲーム!
否。
ただただ、たまたま現世に開いていた次元の穴に落ちました。
次元の穴、つまりは異世界なのですけど見た目が変わった訳でもチート能力がある訳でも死亡フラグがある訳でもなく。
平々凡々がただの穴に落ちただけなのです。
まぁ、死にかけてはいたけど……。
けれど、この私が落ちた世界には魔法が普通にあって色々な種族……例えば魔族や獣族なんかもいてちゃんと人間種もこの世界で暮らしているそうです。
私の様にたまにこちらの次元に迷い込んでしまった人達の事をここでは"異世界人"と呼ぶんだとネル君から習いました。
この、私が落ちた場所はこの世界での中心部であり血の繋がりを大事にする王政国家であり魔力第一主義でもあるそうです。
う〜ん?私には魔力的なものが何なのかはオタク気質なので何となく分かるケド用は力の強い人が偉いお国みたい。そして、色々な決定権を持つ人達がいてその総称を【13議会】その中の一人が私を拾ってくれたここのご主人様のリアム様なのだと最初のお勉強で知り、その後この国の仕組みと歴史を知り、最後にこの国で生きていく為の最低限の知識を与えられた私が今の私の状態なのです。
リアム様が公務から帰って来るのが2日後。私とリアム様の対面の日なのだけど……。
「分かってはいるのよ…助けてもらったお礼も言わないといけないし、なによりもこの国にこれからお世話になるんだから最初の印象も大切………」
セナはやたらと高い天井を数秒仰ぎ見てから苦い物でも噛み潰した様な顔をしながら柔らかいベットへと倒れこむ。
「………既に変態と言う烙印を押されいる私のイメージを上げるにはどうしたら良いんだろう」