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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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37/61

イケメンはごめんなさい!! 32

 怪我の治りが早い事から、リハビリの為にお部屋から出る事を許されて数日。


「はい、それを飲み終わったら本日の授業は終わりです」

 ネル君特製の薬湯を一気に飲み干し、空になった器を銀盆に乗せる。

「今日も良い飲みっぷりですね。怪我の治りも思っていたより早いので今日の夜は診察しましょう。それで、異常がなければ完治ですよ」

 瀬奈はグイッと両腕を伸ばし、固まった肩や背中を伸ばす。

「あっ、じゃあ午後は授業無いんですか?」

 キラキラした瞳で瀬奈は机を挟んで対面に座るネルファデスを見る、そんな様子の瀬奈に苦笑したネルファデスは。

「そんな、キラキラした瞳で見られるのは少し残念ですが。今日の午後は自由です」

 “自由”

 なんて響きの良い言葉なのか、拘束されている訳でも部屋に閉じ込められている訳でもないのに“自由”にして良いと言われたら少し嬉しくなってしまう。

「やった♪ふふふ♪」

 瀬奈は鼻歌交じりに、今しがた勉強したばかりのノートを片付けて代わりに鞄を片手にそそくさと部屋を出て行こうとする。

「今日も図書室ですか?」

 ネルファデスも授業用に使ったノートと教科書を片付ける。

「はい!面白い本があったので今それを読み進めてます。あっ、この間貸して頂いた地図は助かりました」

 瀬奈は何かを思い出したように鞄を漁ると、先日ネルファデスが授業の時に持ってきたこの国の詳細が書かれた地図を返した。

「ありがとうございました」

「いえいえ、お役に立てたなら良かったです」

 再度、鞄を持ち部屋を出て行く瀬奈を見送る。すると、ネルファデスの左のポケットからこの屋敷の主人の声が聞こえくる。

 ポケットに手を差し込み、取り出したのは薄い琥珀色の小さな通信用の宝珠。

「……はい、はい了解しました。お気をつけてお帰り下さいませ」

 通信が終わるとまたポケットへと宝珠を忍ばせる。宝珠が出来るまでは魔法便でやり取りをしていた時が懐かしく思える。今では庶民でも安めの宝珠であれば買える時代になり、連絡スピードも速く大変重宝している。

「これを作った方には感謝ですね」

 さて、今日は何日ぶりかの屋敷の主人が帰って来る。夕食は要らないとは言われていないので、この後料理長に連絡を入れなければならない。今日、屋敷内でやる事を考えながらネルファデスも部屋を後にした。



 瀬奈は鼻歌でも聴こえて来そうな程の上機嫌で屋敷内の廊下を足取り軽く歩いていた。向かうは図書室。個人宅に図書室があるとか、大金持ちの人や漫画や本の世界だけだと思っていたけど実際にある事に驚いたのは言うまでもない。

「おはようございます。メリルさん」

 瀬奈は図書室に入ると1人の覆面メイドに声をかけた。

「おはようございます。セナ様、今日もあちらを使われますか?」

「はい!今日も使わせて頂きます!」

 そう言って、瀬奈が向かったのは図書室の隅にある小さな司書室。最初、見つけた時は驚いたけど中は目録や蔵書、本の管理等しっかり司書の仕事を誰かがやっていた形跡はあった。が、メリルさん曰く、自分がここにメイドとして来てから誰かが司書として仕事をしているのを見た事はないらしい。

 ならば、自分のスペースにしてしまえと瀬奈は数日前からこの司書室にいる事が多くなった。

 何故なら、数日前に自分の鞄が手元に戻って来たのである。ネル君の話によれば、私が落下した森は普段から次元の歪みはなくほいほいと空から人が降って来る様な場所ではないらしい。むしろ、他の場所とは違い結界すら張ってあるような場所なのだとか……。そんな場所だった為、調査にリアム様達が森に入ったところ私の落下地点周辺にこの鞄が落ちていたらしく、中身も殆どそのままの状態で私の元に帰って来たのである。


 そして、小さな個室の司書室へと入ると窓際に1つだけ置かれた机へ向かう。木製で出来た椅子を引き、鞄を机の上に置く。

「さて、今日も心の栄養補給をしなくちゃね♪」

 鞄から取り出したのは携帯とヘッドホン。それらをコードで繋いだら頭に装着!そしてプレイ再開!!程なくして曲が流れ始めた。

「…………………ああっ最っっ高♡」

 瀬奈は顔を上気させ、ウットリとした表情のままヘッドホンから流れてくる曲に耳を澄ました。

 そう、声優オタクの瀬奈が聞いているのは自分の好きな声優さんが歌う曲。その他にもドラマCD、ラジオ番組、その他諸々。その声優さんが出ている物であれば全て保存し、それをランダム再生で聴くのが瀬奈の心の栄養源!つまりは癒しだ。


「うふっ♡うふふ………」


 ニヤケきった顔を机に伏せて、目を瞑り耳に全神経を集中させること小一時間。まだまだ全然心の栄養補給は足りていない。だが!やらなくてはいけない作業が瀬奈にはあった、先程の鞄に手を突っ込み取り出したのはソーラータイプの充電器。それを机の上に置き、太陽光を浴びさせる。

「よし!いっぱい充電(ひかり)を浴びるんだよー。ふぅ、こんな事なら手回し用の充電器も買っておけば良かった。これじゃ、オタク道失格ね……」

 充電の為のセッティングを完了すると次は携帯とバッテリーを繋ぎ携帯も充電させる。まさか、通信機器や電気といった物がない世界に来るなんて誰も予想なんかつかないだろう。

 そう、魔法が発達したこの世界では電子機器なぞ不用品。明かりが欲しければ魔石ランプを使えば良いし、誰かとやり取りをするのであれば魔法便や通信用宝珠がある。だから、コンセントも無ければフリー通信が出来る電波すらない。携帯の右上にはしっかりと圏外マークが出ている。

 だが、声優オタクの瀬奈はその時の為の準備もしっかりとしていた。いつ何時でも携帯だけは何とか動く様に!充電満タンのモバイルバッテリー各種、何日か電気が使えなくなっても太陽光で充電出来る予備のソーラーバッテリー。

 なので、只今ソーラーバッテリーを充電している。大体、1時間で20%程の充電しか出来ないので満タンにするには随分と時間がかかる。とりあえず、幾つか持っている他のバッテリー達と交換しながら充電しているのだが……。この先ずっとこのソーラーバッテリーとはいかないだろう、早急に何か別の物がないか考えているが……中々に難しそうだ。

 図書室と言う事もあり、いくつか手に取ってみたが“電気”のでの字も見当たらない。

 ちなみに、文字は……読めた。

 これが異世界の力!と、内心思いつつ他に面白いものがないか充電の合間に読んでいたのだが。なんだか、面白そうなのを先日発見し今はそれを読み進めている。

「今日の問題は……」

 瀬奈は机に置いてある本を手に取り、可愛い猫のチャームの付いた(しおり)が挟んであるページを開く。

「ふむふむ、今日のお題は産地系かぁ〜…………えっと、ここの本棚かな?」

 瀬奈は開いた本とは別の本を取り、パラパラとめくり目的の項目がある欄で目を止める。そして、司書室から出て。

「5番棚、5番棚〜……あった!ここの………58は……」

 目的の本棚の前に立ち“58”と番号の振られた棚を探す。棚は随分と高く瀬奈の背の倍以上は高い、そんな時は可動式のステップ付きの梯子を本棚の前まで引っ張ってくる必要があるのだが……。

「うん?あれ?………うぐぐぐっ!!!」

 引っ張っても押してもびくともしない。ストッパーはちゃんと外してあるはずなのに全然動かず。

「あれ?何で動かないの?」

「セナ様、どうされましたか?」

 うんうんと唸っていると背後から覆面メイドのメリルさんが声をかけ、瀬奈は状況を説明する。

「分かりました、ネルファデス様にお伝えしておきますね。それで、セナ様はどの本をお取りに?」

「この棚の、58番って書いてある特産品や生産一覧の本を」

 瀬奈が欲しい本を述べるとメリルは人差し指を目的の本に向け、クィッと指を曲げれば本が魚釣りの時の魚の様にメリルの手元に落ちてくる。それを何度か繰り返して目的の本が全て集まると。

「わぁぁ♪魔法ですか?すごい!!」

 間接的に見た事はここに来てから何度かあったが、直接誰かが使っているのを見たのは初めてで瀬奈は拍手しながら感動の意を伝えた。

 あまりにも瀬奈が褒めるもので、メリルは次第に恥ずかしくなってきたのか体をモジモジとさせ始めた。

「私の魔法などただの生活魔法の一部とさして変わりませんわ。そんなに褒めて頂くものではございませんわぁぁ!!」

 いや、魔法がない世界の人間からしたら生活魔法だとて凄い事だから。それを言う前にメリルは恥ずかしそうに走って行ってしまった。

「あっ……。でも、そんな便利な魔法があるなら梯子は必要ないんじゃ?」

 ふと、疑問が生まれたが外から入る太陽光と自分の影の長さに瀬奈は急いで司書室に戻りソーラーバッテリーの位置を調整する。

「ふぅ、危ない危ない。影になる所だった」

 司書室のデメリットは窓の外に大きな木がある事だ。この木によって太陽光の当たる位置が変わる為、ちょっとずつバッテリーの位置も変える必要がある。

 光の当たり具合でいったら今借りている部屋でも十分なのだが、以外と人の出入りが多く落ち着かない。庭と繋がっている部屋の窓の外でも庭師やメイド達が働いているのを良く見かける。そんな中、自分の趣味と癒しに浸りきって発狂している自分の姿を客観的に見て……うん。ちょっと……と、なるので小さいながらも周りに人が居なくて個室の司書室は条件が良いのだ。

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