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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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36/62

イケメンはごめんなさい!! 31

 瀬奈の叫び声を聞いたネルファデスは急いで瀬奈の居る部屋に戻る。

 部屋の扉は開いていて、そのまま飛び込む様に部屋の中へと入り状況を確認した。


「…………これは、何事ですか?」


 部屋の中には、ほぼ下着状態の瀬奈とびしょ濡れのリアムの2人がお互い不服そうな顔でネルファデスを見ていた。




「成る程、セナ様は私が来ると思っていたから濡れた服を脱いで待っていたところ、私ではなくリアム様がおられた事に驚き投げつけてしまったと」

 コクコクと頭を上下に振る瀬奈。今はネルファデスが持ってきた予備の患者衣を着てベッドの影に隠れている。出来ればまだ怪我人なのでベッドの中で大人しくしていて欲しいのだが、本人が嫌がるのでそのままにしている。そして、リアムはと言うと。

「………お前が代わりに部屋に持って行けと言うから持って行ったらこのザマだ」

 ネルファデスは苦笑しながら主人の身なりを整える。

「そうですね、私がリアム様に頼んでしまったのがいけませんでした」

 リアムの言い分では、屋敷内を移動中忙しそうに小走りで走っていたネルファデスに声をかけたところ『すみませんリアム様、これをセナ様の部屋に持って行ってもらえませんか?』と、返答されタオルと櫛と水の張った桶を渡された。なんの疑問も持たず瀬奈の部屋を訪れたリアムは部屋の中で下着姿の瀬奈と汚れた服を目にし『成る程、ネルの薬湯を頭から被ったのか……』そよそよと開けっぱなしの窓から入ってくる風を楽しんでいるのか、一向に背後に立つリアムに気付く様子はなく仕方なく持って来た桶でタオルを浸し絞る。

『……少し冷たいか』入ってくる風は暖かいとは言え、まだ水は冷たい。タオルを両手で包み込み魔法で熱を加えてから瀬奈に差し出した。

「あっ、ありがとう」

 瀬奈はそのままタオルに顔を埋める。

(……頭の薬湯も早く拭いた方が良いな、少し粘りがあるから櫛で梳かしながらやらないと)

 リアムは桶と櫛を見て、溜息を一つ。上着をベッドの上に置き水に濡れないように腕を捲り瀬奈の髪を手慣れた所作で梳きはじめた。

 その後、リアムに驚いた瀬奈は手近な物を投げ飛ばしはじめ挙句に水の入った桶がリアムに命中したのである。


「お待たせしましたリアム様。この後は騎士団の方に行かれるのですよね?」

 リアムは椅子から立ち上がり、タオルをネルファデスへと返しベッドの端に置いてあった上着を手にとる。

「ああ、その後。一度こっちに戻ってから城に上がる私の分の夕食は準備しなくて構わない」

「分かりました、お戻りは深夜ですね。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「ああ、それと……」

 チラッとリアムはネルファデスではなく、未だにベッドの影から威嚇をしている瀬奈を見た。色目使いで良い寄って来るよりは良いかもしれないが何故あんなにも自分を威嚇しているのか不思議だ。

「そこの変態女。露出に興味があるのは良いがもう少し肉を食べた方が良い」

 そんな台詞を言い残しリアムは部屋を去って行った。

 ネルファデスは何とも言えない顔で主人の背中を見送り、部屋に残された瀬奈は無言でベッドに戻る。

「あの、セナ様……」

 恐る恐る名前を呼ぶが。

「ネル君!」

「はい!なんでしょう?」

 逆に自分の名前を呼ばれた。

「私!気にしてないから!」

 瀬奈はここ最近で1番力強い声でネルファデスにそう言い放つ。

「そっ、そうですか」

「私!平均より少し小さいだけで気にしてないから!」

 それは随分と気にされてるのでは?なんて言葉は光の如き速さで頭の中を駆け抜けた。代わりに別の言葉が出てくる。

「セナ様。一つ宜しいですか?」

「………肉より魚が好きです」

 一度、ネルファデスは咳払いをし瀬奈へいつもの笑顔を向ける。

「セナ様の食の好みは料理長に伝えておきます。それよりも、大事な事です」

「大事な事?」

「はい、大事な事です」

 ゴクリと瀬奈は唾を飲み込んだ。

「今、セナ様の患者衣を探しに出た時に気付いたのですが………異世界から身一つで来られたセナ様にはこちらで生活する為の物が一つもありません」

「!!? そ、そう言えば………確かに」

「こちらに来た時に着ていた服はボロボロになっていって了承を得ず処分してしまいました」

 バッと頭を下げるネルファデスに瀬奈は気にしなくて良いと声をかける。

「うん、状況的に考えたら服はしょうがないよ」

 たぶん、血だらけの上に途中森の中も落下したから引っ掛けて穴だらけのはずだし。

「ですので………」

 ?最後が聞き取れなかった。もう一度、聞いてみる。

「ですので、セナ様の服が1枚もありません」


「………!!?」





 そして、現在に戻る。


「これはどうでしょう?色味も抑えてあって少し幼い感じのデザインですが……」

「うん、そうねーこちらの皆さんは発育が宜しいみたいでーうふふふふ」


(セッ、セナ様の目が笑っていない……)


 自分の服が1枚も無い瀬奈の為に、ネルファデスが屋敷のメイドさん達に声をかけ集めてくれた服は皆それぞれ華美な物からシンプルで上品な物まであり、普段着としても違和感なく着れそうなデザインの物が多数あったのだが………。

 皆、発育が良過ぎるせいで瀬奈には合わない物ばかりだった。そう、胸元だけがガバガバなのだ。

「ハァー。羨ましくないとは言わないけれど……ここまでくると落ち込むわねせめてブラウスとかスラックスとか……」

 ふと、ネルファデスを見て瀬奈は。

「あっ、ネル君のサイズより少し大きめなら丁度良いかも!」

 ガシッとネルファデスの両手を手にとりキラキラした瞳で訴えてみる。

「えっ!流石にそれは…男性物ですし……」

「大丈夫!着れない服より着れる服が欲しいので!お願いします!」


『着れない服より着れる服』


 確かに、患者衣のみではこちらも困る。メイド達に買いに行かせても良いのだが本人の好みもあるだろうから、今は応急処置として提供するしかないだろう。


 後日。

 瀬奈の怪我の治りは意外と早く、完全復帰とは行かないが部屋を出る事が許された。

 そして、男性物の使用人服が支給されたのは言うまでもない。


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