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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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33/61

イケメンはごめんなさい!! 28

 使わなくなった携帯。

 否。

 異世界に来て使えなくなってしまった携帯。

 最初の何日かは動いていた。


 残りあと 1%………プツン。


 画面はブラックアウトし瀬奈は絶望した。

 そう、激しく絶望した。


 瀬奈は、いわゆる携帯電話依存症。

 何をするにも携帯を握っての生活だった。流石にお風呂や、トイレまで持って行く程の強者ではないけれどそれなりに依存している方だと自覚していた。


 何故なら。


 携帯には瀬奈のお宝がいっぱい詰まっていたから!!


 まずは本。特に漫画やラノベ系は電子書籍で読む!!本当なら新刊独特な紙やインクの匂いを堪能しながら読むのが最高なんだけど……私が中学生の時に本の重みで床が抜けた。

 床って本当に抜けるんだと今でもしみじみ思い出す。

 良く親が『いつか床が抜けるわよ』なんて言われた事がある同士は星の数程いるはず!!

 あれは都市伝説じゃなくて現実にありえるからね!皆気をつけて!!

 まぁ、自室じゃなくて庭の隅っこに建てた1人部屋兼趣味部屋だったんだけど……。

 それはとりあえず置いておこう。

 後はゲームアプリや音楽。写真なんかも整理しないで溜め込んでいた。


 いや。溜め込んでいたと言うのも違うかも知れない!自分の精神状態をクリアに保つ為にアレらは必要だったのだ!!



 それなのに………。

『ああ、無情』とはこんな時に使うのかもしれない。



 ブラックアウトしたままの携帯画面を見るも、平々凡々な顔をした自分の顔が画面に映るだけである。

 何となく携帯を上下に振ってみる。

 指でペチペチと叩いてみる。

 そんな昭和時代のブラウン管テレビ復活の儀式の様な事をやったとて、電池が復活する筈がない。

 分かってはいたがやらずにはいられなかった。

 瀬奈はベットに転がったまま大きなため息を吐いた。



「…………疲れた」





 夏前の少し湿った空気と、真新しい草の匂い。

 太陽は既に顔を出し空を明るく照らしていた。羊の様な雲がちらほらと空を優雅に歩いているがそのうち何処かに歩いて行ってしまうだろう。

「今日も良い天気になりそうね」

 瀬奈の朝は意外にも早い。何故なら夜更かししなくなった代わりに朝のランニングをするようになったから。

 むしろ前の自分より健康的になったと思う。

 今日の朝も使用人屋敷の簡易風呂に入り汗を流す。長い髪を乾かし、いつもの白いシャツにダブルベルトの黒のスラックスパンツに踵の低いパンプス。

 髪は作業の邪魔にならない様に頭の上で軽くまとめて、銀製のバレッタで留めていつもの私が出来上がり。

 ベルフルールに通いになってからこの一式が私の標準装備となった。地味で色気がなさ過ぎると一部からの意見もあったが遊びに行くわけでもないので私はこれで充分だと思っている。

 部屋を出る前に念の為に鏡でチェックしてから部屋を出る。

「あっ!エプロンっ……」

 一度出た部屋に戻り、部屋の入り口にある木製のポールハンガーに掛けてあった手提げ袋を手に取り食堂へと向かう。

 使用人屋敷の食堂は一階。小ぢんまりとしていて5、6人入ったらギュウギュウなのだがそもそも人があまり来ないのでいつも広々と使わせてもらっている。

 ちなみに使用人屋敷(ここ)は自炊。もちろん、本邸には料理人がいて美味しい料理が屋敷の主人が不在であっても食堂に行けば食べれる。食に対して無頓着な主人を唸らせる為に使用人用食堂で料理長が日々研鑽(けんさん)しているとか居ないとか………。

 この世界に来た時、大怪我をしていた瀬奈は治療の為、本邸で療養していた。もちろん料理人の美味しい料理を堪能させてもらった事がある。確かに美味しい!美味しいけれど、やっぱり食べ慣れた食事が恋しくなるのは仕方がないと思うのは私だけじゃないと思うの。

 ほら、海外に行ったら日本食が恋しい!!ご飯と味噌汁が飲みたい!!って良く聞くじゃない?

 海外に行った事がない私としたら状況は多少違えど、その心境が今手に取る様に分かる。

 が、運が良い事に、ここのお屋敷にも和食に必要な調味料は少ないけれど置いてあった。残念ながら米は流石に見当たらずネル君にお願いしてみたら次の買い出しの時に買って来てくれると約束してくれた。

 米、楽しみだな〜。

 にへっと口元が緩んでしまう。

 やっぱり王道中の王道。握り飯かな?シンプルに塩握りで食べたいかも。そんな事を考えていれば手前のコンロにかけた味噌汁が沸騰直前になり慌てて火を消した。

「さて、出来上がり〜…………熱っ!」

 行儀悪くお玉から直接飲もうとしたが熱すぎて断念。小皿に出来上がったばかりの味噌汁を少し流し味見をする。

「うん!塩加減も丁度良い」

 野菜のいっぱい入った味噌汁をお椀に注ぎ、かた焼きの目玉焼きと腸詰を数本。ペロッと平らげた瀬奈は今日も頑張るぞと意気込みながら本邸へと向かう。

 商業地区にある『ベルフルール』へはお屋敷の馬車での送迎と言う条件付きで通わせてもらっている。私としてはとても助かるのだけど、(ただ)の居候にそこまでしてもらうのは恐縮だと断った。けれど、保護期間中に何かあったらことだと言われ渋々頷き現在に至る。

 本邸へはほんの数百メートル離れているだけで使用人屋敷を出て数分歩けば屋敷の正面、石畳で出来た前庭にいつもの馬車が待っていた。

 今日の御者は青鬼さん。青鬼の面を付けた青年が送ってくれるらしい。話はした事がないが良く気がつく良い鬼さんだと瀬奈は常々思っていた。

(あっ、今度いつもの送迎のお礼に何か送ろうかな?)

 そんな事を考えながらいつもの様に挨拶をする。

「おはようございます。青鬼さん、今日も宜しくお願いします」

 以前、名前を聞いたがネル君の話によれば青鬼さん達の国では本名を名乗るのは禁止らしい。なので、面を付けている名前で呼んでいる。

 御者席で座っていた青鬼は瀬奈に気づき御者席から飛び降りいつも様に馬車の扉を開けようと取っ手に手をかける。が、何故か開かない。

(ん?どうしたのかしら?)

 青鬼の方を見ると何故か瀬奈の顔を見たまんま固まってしまった。

(えっ?何々?顔になんか付いてる?出る時に鏡みたけど見落としてた?)

 自分の手で顔に付いているゴミを払う様な仕草をしている瀬奈と、固まって動かない青鬼が顔を合わせたままでいるとこれまたいつもの少年執事の声が聞こえてきた。

「おはようございます。セナ様、青鬼……2人共どうされたんです?見つめあったまま動かなく…!」

 ネルファデスは青鬼の顔、と言うか面を見てそして瀬奈の顔をみて止まった。

「セッ、セナ様?随分とお顔の色が悪いようですが大丈夫ですか?」

「?。私は別にこれと言ってなにも?いつもと変わらないけど………」

 体調はいつもと同じ、朝ご飯もしっかり食べたしなんなら身体の調子は良い方だと思うけど。

「いえ、いえいえ。全然大丈夫そうには見えないですから!!青鬼の面より酷い顔色になっています!一度、お屋敷の中へ!!」

 慌てた様子のネル君に連れられ、瀬奈は屋敷内にある談話室へと連れて行かれた。

 一体どうしたと言うのだろうか?青鬼さんの面より青い?いやいやそこまで青くなってたらもう病気レベルなんじゃないかな?そんな風になってたら私でも心配しちゃうよ。

 流石にそれは言い過ぎ。はははっ、何て心の中で笑いながらネル君にグイグイと腕を引かれた私を部屋に押し込んだ後、一度何処かに行きまた直ぐに戻ってきた。手には淹れたばかりのハーブティーを乗せた盆と小さなペットキャリー。

「ハアハア、せ、瀬奈様。とりあえずこれを」

 差し出されたハーブティーを飲み。

「落ちつかれたらこの子で癒されて下さい!」

(いや、ネル君の方が必要なのでは?)

 なんて心の中で思いながら、差し出されたペットキャリーを開けると中には子猫よりは大きく、成猫よりは小さい猫がピョコンと顔を出しキラキラの瞳で瀬奈を見ていた。

「どうです!!疲れも吹っ飛ぶ可愛いさでしょ!!」

 ネル君の圧に私はコクリと頷いた。

「今にも倒れそうな顔色をしているなんて!瀬奈様が以前言っていた『萌え的癒し』が足りないに違いありません!!」

 そっ、そうね。確かに少し前にそんな事もあったわね。その時も何処から連れて来たのか怪我をした猫を連れてきたけど。瀬奈はチラリとキャリーから顔を出している猫を見る。明らかに以前とは違う猫だ。そもそも毛色がサバ白から黒になっているので顔を見なくても違う猫だと断言出来る。

「あっ!」

 見事な程全身真っ黒な黒猫がケースから転がり出てきた。小さくて丸くて毛も少しだけ長くまん丸お目目がまるで………。

 小さい頃に見たファミリー向けの某有名アニメ映画!勝手口を開けたら居るヤツ!!

「……真っ黒くろ××!!」

「はっ?」

「いえ、ゴホン……何でもないです」

 ついつい口に出してしまったけれど、見れば見る程似ているホォルムに瀬奈の顔は緩んでいく。まだちゃんと歩けないらしく時々コロンと転がりキョトンとした顔で辺りを見廻し、部屋の匂いを嗅ぎながら徘徊し出した。

「猫様のチェック入りましたね」

 私がそう言うと、ネル君が。

「ええ、僕の部屋から出すのは初めてなので」

「……前回の子は怪我だったけど、この子はどう言う経緯でネル君の部屋に?」

 ローチェストの隙間に頭を突っ込んで念入りに匂いを嗅いでいると思ったら今度は何かを見つけたのか急発進で走り出す。一体何処に走って行くのだろう?黒猫を視線で追いかける。

「この子はある人から頼まれて預かっている子です。もう少ししたら親が帰ってくると言う事ですが……僕の見立てでは当分帰って来ないでしょう」

 親?母猫のことかな?それとも飼い主さん?そんな質問が口から出る前に私とネル君の口からは。


「「可愛い……」」


 同時に出た言葉に私とネル君は顔を見合わせて笑ってしまった。何せ走り出した猫様はテーブルの足にぶつかり、ひっくり返った拍子に小さなピンクの肉球を上に向けて放心していたから。

 これを見せられて『可愛く無い』なんて言葉が出てくる筈がない!!

 私は以前から気になっていた事を聞いてみた。

「………ネル君も、私や颯人さん同様相当な猫好きですよね?」


「……バレてしまいましたか」


 ほんの一瞬だけ間があったが、やはりネル君も同志でしたか!猫ラブベストフレンドと書いて猫友と呼ぶ私と颯人さんの組織に新たな人員が1人加わった。

(成る程、それでベルフルールに通いで行く事に許してくれたんだね。むしろあの時はネル君のが乗り気だった気はするけど謎が今解けたよ)

 そんな呑気な解釈を瀬奈がしている横でネルファデスは。

(良かった。先程までの酷い顔色が『萌え的癒し』?と言うもので随分と良くなったようで安心しました)

 ほっと胸を撫で下ろす。こちらはこちらで萌え的癒しの意味が若干違ったままの理解ではあったが、2人は目の前にいる癒しの存在に顔を緩め過ぎるのであった。

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