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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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28/62

イケメンはごめんなさい!! 25

「なるほど、人数は?………分かった。こちらでも準備をするから一度切るけど無茶はしないように」

 リーフは魔石を置き、今2人から伝えられた状況を颯人にも伝えた。

「―2人からは以上。颯人、騎士団本部に連絡を頼んで良いかな?」

「ああ、構わない……でも、どうやって見つけたのか聞かれると思うけど本当に良いのか?」

 ハーフエルフの3人が何故か騎士団を避けている事を颯人は知っている。何故、避けているのか理由は知らないが今回の事で3人の身元がバレる可能性は高い。なので確認の為に聞いてみた。リーフは一度黙るがすぐに口を開く。

「……良くはないけれど、私の中の核が誰かの手に渡ってしまう危険性を考えたら身バレはしょうがないよね?私は私のオリジナルだけど、あっちの2人は君と彼の情報を元に作ってるから()()は緊急で回収しないと」

 緊急で回収。そんな不穏な台詞に颯人は眉を僅かに上げる。

「………向こうで何かあったのか?」

 リーフはシャルからもたらされた情報の中に『獣人、赤髪、貴族』と、言う情報を共有した。だがまだ確定ではない、先程の颯人への報告の中にも敢えて言わなかったのは騎士団に連絡を入れた際に、混乱させる様な不確定要素が混じらない為でもあるが……。

「……いや、少し気になる事があるだけ」

 向こうの状況を聞く限りでは、限り無く黒に近い。それでもあんな人間の名前など口にしなくて良いのならばしたくは無い。

「そうか、じゃあ俺は騎士団に連絡を入れてくる」

 颯人はそう言うと、2階の応接室へと引っ込んだ。騎士団へは宝珠で連絡を入れるのだろう、一般的な通信用宝珠であれば市民でも買える値段だ。特に、商業地区に店を構えている者であれば必需品かもしれない。わざわざ手紙のやりとりや、相手方に訪問する時間のコストを削減出来るのはありがたい事だ、この技術を作った人間に一度会ってみたいとリーフは常々思っているのだが難しいだろうか?

「さてと、2人から次の連絡が来る前に私はこちらで調べ……いや、念の為に私の本体にも起きて頂きましょうか」

 リーフは目の前に置いてあった魔石を手に取り、古代エルフ語でブツブツと呪文を唱えていく。

 薄い緑色の魔石は淡く輝きはじめ、一度その輝きが強くなり一瞬だけ辺りを真っ白な光で満たした。光が収束した魔石を見ると金色の鎖でぐるぐる巻きにされた状態でリーフの手の中に収まっている。呪文を唱えながら両手に力を込めると金色の鎖はホロホロと音もなく崩れ、粒子となって霧散した。

 魔石自体の見た目は何も変わってはいない。キラリと光る魔石にリーフは話かける。


「おはよう。(マスター)



 あれからどのくらいたっただろうか?2杯目のお茶が緩くなり始めた頃、トントントンと階段を降りて来た颯人の顔を見てリーフは。

「騎士団への連絡、随分と時間かかったみたいだけど……何かあったの?」

 ここ何日か、徹夜続きで疲れた顔をしていた颯人だったが2階から降りてきた顔は更に生気まで吸い取られたような顔をし、今にもパタリと倒れそうな顔の中に怒りも見える。

「あんた……、いったい何やったんだよ」

 颯人の口からは恨みの感情を乗せたそんな台詞にリーフは可愛く小首を傾げる。最近、セナの護衛係のアヴィの真似をしてみた。

「何のことかな?」

「……俺に、騎士団への連絡頼んだのはこう言うことかよっ!」

 颯人に“あざと可愛い()()()”は無駄な行為だとは分かっていたが全く触手が動かないのも何だか癪だと感じながらもリーフは、颯人が何故こんなに怒っているのか。

 ……見当が無いわけでもない。

「……それは、(リーフ)ではなく(マスター)がやらかした事なので彼に言って欲しい」

 全て悪いのは(マスター)なのだから。

「うぐっ……。クソがっ!起きたら覚えとけよ!」

 人差し指をビシッとリーフの鼻先に突きつけ、リーフの中の彼に届けるような捨て台詞。

「……随分と懐かしい口調だけれど、『ベルフルール店主の颯人さん』の顔が剥がれているよ」

「ふんっ!知るかっ!」

 なんとも子供みたいに頬を膨らませて顔を背けてしまった。やれやれ、実は本体である(マスター)を先程起こしたことはまだ内緒にしておこう。

「……颯人。君が騎士団からの追及と言う名の説教を受けている間にあちらの2人から連絡が入った」

 何処か不服そうな顔の颯人は無言でリーフの方へ体を向ける。怒ってはいるが話は聞く体勢にほんの少しだけ口角があがってしまう。

「その前に、騎士団の方では何と?」

「……今、別件で人手が居ないから少数精鋭の部隊を港街のヴァレッタにある騎士団の駐屯地まで転移魔法で送ってくれるそうだと」

「それじゃ、悪いけどもう一度騎士団に連絡してもらえるかな?」

 何を?と、颯人は顔で問いかけ。

「場所はヴァレッタの閑静な貴族街にある―」

 リーフが口にしたある貴族の名前を聞いて颯人の纏う空気が一瞬で変わった。先程までの可愛い怒りとは違う。

「颯人、気持ちは分かるけど今飛び出した所で間に合わないよ」

 チラッと視線だけで颯人を見る。一瞬で膨れ上がった『殺気』を自身の中に戻すかのようにゆっくりと息を吐いたり吸ったりしている。

「分かってるっ……」



 ***



 同日、港街ヴァレッタのある貴族の屋敷にて。

 ドスンドスンと重たい足音を響かせながらこちらに歩いてくる誰かが部屋の前で止まる。突然、監禁部屋の扉が開いたかと思ったら大男が片手に何かを持って入ってきた。キョロキョロと部屋の中を見回し誰も入って居ない檻の前に立ち、手にしていた何かを無造作に中へ放り投げる。ソレは床をそのまま滑り壁代わりの鉄格子にぶつかり止まる。

「………っ」

 ソレは小さな呻き声を発してそのまま動かない。

 人?だろうか。痩せていて小柄な体型をしているのでまだ子供かもしれない。それに殴られたりでもしたのか、黒く固まった血と真新しい血が頭から足先まで全身にこびりついている。

 男はその檻に鍵をかけ、次にシャルとエバー達のいる檻の前に立ち下卑た笑を浮かべ。

「次はお前達だ、出ろ」

 ジャラジャラと腰にぶら下げた鍵束の中から一つ鍵を選び錆びついた南京錠の鍵穴へと差し込む、鍵の外れる鈍い音と続いて檻の鉄格子の扉が人1人分が通れる隙間だけ開き男は早くしろとでも言う様な顔で2人が出て来るのを待った。

 逃げられない様にわざと狭くしているのか、シャルは仕方なく体を横にしながらその隙間を通る。だが通る時自然と男の方に体の正面を向けるか背面を向けて通り過ぎるかの二択だが、勿論後者の背面を向けてに決まっている。男のネットリとした視線と背中に感じる生暖かい体温に悪寒を感じながら隙間を通り抜ける。

 続いてエバーもシャルと同じ様に通り抜けようと体を横にした瞬間、男は途中で扉を閉め格子と扉に挟まれる様に抑え付けた。

「……つぅ!」

「エバー!!ちょっと!何すんの!」

 すかさずシャルは男へ掴みかかろうとするが男は先程と同じ、下卑た笑のままシャルを見た。

「連れて行くのはお前だけだ。こっちは……許可が出たら俺が可愛がってやるから大人しくしとけ」

 そう言うと男は扉に挟んだままのエバーの匂いを背面から舌舐めずりしながら嗅ぐ。頭、首筋、背面から嗅げる所全てを堪能した後はそのまま檻の中へと押し戻された。

 その拍子に床へと頭をぶつけ、一瞬だけ意識が飛ぶ。

「エバーっ!」

 シャルは男を睨み付けた。

「これ以上、エバーに乱暴なことしないで!したら僕が許さない!」

 男はニタニタと笑ながら。

「気が強いのも……捨てがたいが、こっちはご主人様のだからな〜残念」

 口から出る涎を啜りながら男は引きずるようにシャルを部屋から連れ出した。扉が閉まりきる前、隣の檻の女性がこちらを見て『大丈夫』と言っていたのが見えた。



 取り残されたエバーは、女性の声でハッと意識を取り戻し辺りをキョロキョロと見回したがシャルは既に連れて行かれた後だった。とりあえず、念話で無事を伝えた後先程から聞こえていた声の主へと視線を向けた。

「ねぇ、君大丈夫?意識ある?」

 隣の檻の女性は、大男に放り込まれてから身動きしないソレにずっと話かけていた。エバーも彼女の近くまで行き、ソレの様子を観察した。

「!?……良かった、あんた直ぐに目さめたんだね。あんたと同じ顔の子に大丈夫とは言ったものの声かけるくらいしか出来なくて……ごめんね」

 申し訳無さそうな顔で謝罪の言葉を口にする彼女の瞳を見て、エバーはそんな事はないと首をふる。

「貴女が声をかけてくれたお陰で直ぐに目が覚めたのは事実だ、心配してくれてありがとう」

 エバーはほんの少しだけ口角をあげ礼を言った。

「!!?あっ、えっと、……」

 何故か顔を赤くしてワタワタしている彼女を横目にエバーは状況確認を再開。

 部屋の中は貴族の屋敷だと言うのに随分と暗い。外がまだ夜だからと言うのもあるかもしれないがそれだけではない気がする。

 エバーは屋敷全体の索敵からこの部屋の中の索敵へと切り替えた。エバーの見えるのは周りの人や物だけではない、索敵したい範囲を上から覗き込むように開始し誰かが通った足跡、小石や葉の一枚までも索敵する事が出来る。精度は確実だがデメリットとして、細かければ細かいほど範囲が狭くなると言うのが難点。

「…………」

「ねっ、ねえ?黙り込んじまったけど大丈夫かい?」

 隣でワタワタしていた彼女の顔はまだ若干赤いが心配そうにエバーの顔を覗き込んでくる。

「……大丈夫、少し考え事してただけだから。それより、あの子は君の声に反応してるの?」

 女性は辛そうに目を伏せて首を振る。

「全然、…さっきから声はかけているんだけどね。それにここからじゃ暗すぎて良く分からないんだよ」

 確かに、普通なら暗すぎて見えないかもしれない。だがエバーには見えている。倒れ動かないソレの背中には透明でキラキラと光る羽が一枚と、もう片方は引きちぎられた様な跡の残る羽の残りが一枚。小柄で透明な羽を持つ種族と言ったらこの世界には一つしかいない。


『妖精族』だ。


「うっ!ゴホッ、ゴホッ……!!」

 身動き一つしなかったソレは、咳き込みながらそのまま大量の血を吐いてしまった。

「ちょっと!あんた大丈夫!?……誰か!誰か外に居ないのかい!」

 女性は外の見張りへと声をかけるが返事はない、今はシャルを連れて移動してるはずだから扉の前には誰も居ないのだ。

 叫ぶ女性を横目にエバーは今にも出血多量で死にかけている()に話かける。

「……一般的なポーションではないが、俺の持っている回復薬を飲むか?」

 けして大きくはないだが彼には聞こえる声でそう問う。妖精族は警戒心が他の種族に比べて強い。何故ならその愛らしい見た目と、強くない魔力のせいで鑑賞用として捕らえられることが多いからだ。一時は種の絶滅寸前まで狩られ数を減らした事もあった。

 数が激減した妖精族は人知れずこの世界から姿を消した。何十年かに一度、目撃情報として上がってくる幻の種族として一般的には広まっている。

 ヒュー、ヒューと浅い呼吸を繰り返す彼にもう一度エバーは問う。

「俺のことは信用しなくても良い」

 エバーは血だらに染まった彼の顔から放たれる、鈍い光を灯した瞳から視線を逸らす事なく続ける。

 妖精族の特徴として、もう一つ上げるなら『自然回復力』。頭と体が離れない限り病気や怪我で死ぬ事はない。時間が立てば元通りの体に戻るのが妖精族。

 医務室に連れて行かずここに放り込んだのはそれを知っているからだろう。


 だが、俺は彼が妖精族だと知ったうえで聞く。

「俺が作った回復薬を飲むか?」

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