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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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27/62

イケメンはごめんなさい!! 24

 外は滝の様な雨が降っていた。

 時折聞こえる雷は少しずつ遠くなって行く中、シャルは隣で同じ様に手足を縄で縛られ布袋を被らされているであろうエバーに話かけた。

「ねぇ?今どの辺?」

 揺れる荷馬車の中、舌を噛まない様になるべく小声で喋る。

「………たぶん、南の方に向かってる」

「たぶん?エバーにしてはえらく曖昧だね」

 普段のエバーであれば感覚だけで自分の居場所を細かく特定出来るのに、今の発言は珍しい。かく云う自分も先程からリーフとの繋がりが途切れ途切れになっていた。

「そっちは?リーフと繋がってる?」

「うん、ギリギリ繋がってる」

 自分達が攫われたのは上城、そのまま南下し下城も通り抜けて森に入ったハズだ。そのくらいの距離であれば僕達の意識は共有出来る。

「………ギリギリか、俺も細い線1本ぐらいの感覚でしか把握出来ていないから何かあるかもしれないな……シャル、この荷馬車が目的地に着くまで保ちそうか?」

 シャルとエバー達を乗せた荷馬車はかれこれ1時間近く走っている。この嵐の様な雨の中を走っている為通常よりは速さを落としているとはいえ、麻袋に入ってコロコロと硬い荷台を転げ回るのは流石に身体中が痛い。

「場所、によるかもっっ!」

 石にでも乗り上げたのか一際大きく荷馬車が跳ねる。

「……大丈夫か?シャル」

 布袋と麻袋越しなので見えないが荷馬車が跳ねた瞬間、シャルの呻き声が聞こえた気がした。

「あの御者、後でボコるっ!」

 うん、どうやら大丈夫そうだ。


 最初、僕達が連れてこられた場所は商業地区の何処かの古びた空き家。昔は食堂か酒場か、そんな雰囲気の空き家に連れて行かれた。そこでは、僕達の他に女子供が数人。男達のリーダー的存在と思われる者が1人、壊れかけの椅子に座っていた。

 そいつは、攫って来た人達を一人一人確認し選別し終わるとまた僕達に布袋を被せ、1人1人麻袋にいれ何処かに運び始めたのが1時間前。

 ガタガタと乗り心地の悪い荷馬車が止まり、麻袋に入った僕達は荷台から降ろされる。袋詰めにされる前、一瞬だけだったが僕達みたいに連れ去られてきた数は多くなかったはずだ、僕達をいれてもせいぜい4.5人くらいだろう。

 順番にシュルシュルと縄が解かれ麻袋を開けていく音がする中、僕達の布袋が取り払われると誰かが舌打ちをした。

「おい!コイツ、口切れてんじゃねぇーかよ」

 男はシャルの顎をグイッと掴み口元の血の出具合を見てから、乱暴に布袋を再度被せられる。

「すいやせん、レイビットさん!!」

「チッ、コイツは俺が地下の医務室まで連れて行く。他の奴等はいつもの所に入れとけ。オラっ、自分の足で立てや」

 男に足蹴りをくらい、ぐいっと腕を掴まれたかと思うと手足の縄が解かれる。そのまま頭の布袋を外そうとしたが。

「それは外すんじゃねぇ、行くぞ」

 そう言われ、持ち上げた腕を降ろす。付いてこいと言われたがこんな布を被された状態じゃ歩ける分ない。

 男に腕を引かれて歩き出しかけた時、シャルは小石に躓きよろける。もちろんわざとだ。

「おい!ちゃんと歩け!」

 男は少し苛立った口調で言うが、シャルはプルプルと足を踏み出し亀の様に遅く歩く。

「……このままじゃ、歩けないよ」

 ほんの少し湿り気のある涙声でそう訴えれば。

「…………静かにしてろよ?」

 男はそう言って、シャルの布袋をはずし、歩き出した。チラッとエバーの方を見れば他の男達が、縄を外しているところだった。

 男は屋敷内ではなく屋敷の裏手に周り、一見するとただの納屋に見える小屋へと入っていく。中には地下へと続く階段があり暗く冷んやりとする通路の左右には簡素な樹で出来た扉が数ヶ所。そのまま一番奥まで連れてこられたシャルは扉横に掛けられている札を見る、札には『屋敷地下の医務室』。その扉の前で男は中に居るであろう人物に声をかけ中へと入る。

「先生、コイツちょっと治してやってくんねぇか?アイツら商品に傷つけやがってよ」

 部屋の中は質素なベッドに、小さな薬棚と机。そして、枯木のように痩せ細った老人が1人。

 これが医務室?医務室と言うよりも……

「傷?どれどれ、そこのベッドに座りなさいな」

 シャルは言われた通りにそのベッドへと腰をかけた。先生と呼ばれた老人は皺皺(しわしわ)のその手でシャルの顔をみる。

「ふむ、口を開けて」

「…………」

 大人しく口を開ける。老人は口の中をひと通り見て薬棚から草の入った小瓶を取り、その中の一枚をシャルの口の中に入れた。

「口の中を少し切っただけだね、舌も問題ない。化膿するといけないから念の為にこの薬草を噛んでおきなさいな」

 シャルはとりあえず頷き、口の中の葉を噛む。葉っぱ独特の青臭に吐き戻したくなるが、薬と言われてしまえば仕方なく我慢する。

 その後はまた地下を抜け、本来なら最初に連れて行かれる場所だったであろう部屋へと連れてこられた。


 そこは所謂(いわゆる)『監禁部屋』。


 小さな部屋の中に鉄格子で分けられたスペースがいくつもあり、その1つにエバーがいた。

「お前はコイツとセットだからな、同じ部屋だ」

 男はエバーのいる鉄格子の前に立ち、錆て嫌な音のする格子を開けその中にシャルを押し込んむ。外からこれまた年季の入った南京錠をかけて部屋から出ていってしまった。

「………シャル、どうだった?」

 シャルは鉄格子で分けられた檻の隅に座っていたエバーの隣に腰を降ろす。

「地下の出入り口は屋敷裏の納屋に一つ。窓もなく見張りも無し。普段は貯蔵庫にでも使ってるみたい、冷えた空気に微かな酒と食べ物の匂いと、人の気配が5かな」

 地下に数カ所あった扉の向こう側から微かに鎖の音と消毒液の匂いがしていた。地下に医務室があるのは、あそこに監禁されている人達が怪我や病気をしているからかもしれない。

「あと、医務室に皺皺のおじいちゃん先生がいた」

 監禁部屋の中で、見張りも居ないとは言えなるべく口は動かさずエバーにだけ聞こえるように今見てきたことを話す。

「5か…俺達を入れてこの部屋の4人と……多分、ここに連れて来られる間アイツらの会話からもう1人居るみたいなんだ」

「思っていたより多いね。この部屋に居る人数なら僕達だけでも何とか出来そうだけど、地下の人達が自分の足で歩けるか分からないから下手に動くのは危険だね」

「ああ、そうだな。念の為もう少し様子を見てからリーフと共有する」

「場所、特定できたの?」

「……王都から南、港街のヴァレッタだ。それより、その匂いさっきから何噛んでるの?」

 隣に居るせいか、先程から香ってくる知ってる匂いにエバーは怪訝な顔をしながらシャルを見た。

「ん?ただの清涼剤(メントール)だけど?」

 ニッと笑い先程口に放り込まれた葉っぱを口から取り出しエバーに見せる。最初は青臭い葉っぱの味だったが噛むうちに清涼剤(メントール)へと変わっていた。

「……いちいち見せなくて良い。俺はこれから屋敷周辺の索敵をかけるからその間にリーフと現状の共有を頼む」

「うん、分かった。あんまり無理しないでね」

 シャルがそう言うとエバーは頷き、大きく息を吐き目頭を一度押さえてからいつもの表情で集中に入る、自分達を中心にした半径100メートル周辺の索敵をかけていく。

 その間にシャルは部屋の中を見渡し、今日ここに連れて来られた人を観察した。僕達以外で()()に連れてこられたのは2人、その中の1人は向かいの檻に入れられた子供。檻の角で顔を伏せ泣いている。シャルはそっと檻の端まで近づき人1人がギリギリ通れるくらいの通路を挟んだ向かいの子に声をかけた。

「ねぇ、君もあの路地でアイツらに捕まったの?」

 子供は一瞬驚いたように体を震わせたあと、シャルの方に涙でぐちゃぐちゃになった顔を向けゆっくりと頷いた。

「……いつも行く、お店が雨で、グスッ、閉まってたの…だから代わりにあの路地裏の、グスッ………うっ、ママぁ〜」

 親が恋しくなってしまったのか、はたまた捕まえられてしまった恐怖のためか子供は更に泣き出した。すると、部屋の扉を激しく叩かれ外から静かにしろと怒声が聞こえる。

 シャルはチラリと背後のエバーを見たが、まだ索敵中のようだ。他に何か情報収集出来る物がないか部屋を見渡すがこれと言って何もないようだ。だが、先程から部屋の端から視線を感じていたシャルは諦めこちらに視線を向ける人物に話かけた。

「あのさ、さっきから何?僕が可愛いからってそんなに見つめられた所で何も出ないよ?」

 シャル達のいる檻の右隣を見れば、そこには成人をいくらか過ぎた女性がシャル達を可哀想な者を見る目で見ていた。この部屋の2人いるウチのもう1人だ。

「………あんた達も攫われたのかい?攫われたにしては随分と綺麗な顔してるじゃないかい。上城ってゆーより、もしかして商家いやお貴族様とかかい?」

 女性は少しダルそうにし背を檻にもたれ、少し開き過ぎでは?と、思う程の胸元が開いた小綺麗な服と厚塗りの化粧と香水を纏っていた。

「……いや、僕達はただのお店の店員兼雑用係だよ。それよりお姉さんは?綺麗な服着てるし綺麗……って、言うより可愛らしい顔してるから上城の何処かのお店の人か商家の娘とかなの?」

 シャルは普段より抑えめな可愛さで女性にそう答えた。

「はっ!あんた達みたいにお綺麗な顔をしたハーフエルフの子がただの裏方?そりゃ随分と良い店か、警戒心の強い店主なのか、それとも何か事情があるのか?だね」

 どうだい?とでも言うような顔でそんなことを聞かれるがシャルはいつも通り。

「さぁ?僕にはちょっと分かんないかな?」

 少し小首を傾げ、考えるふりをしながら女性の様子を観察した。言葉使いも乱暴で、身分の高い人間が好きではない事を隠すことがないのを見ると下城の高級娼館辺りの人間だろうか?

「ふん、そうかい。それよりあんた達気をつけなって、言ってももう捕まっちまったんだから気をつけようがないけど外に居るアイツらの雇い主は貴族様って話さ」

「貴族様?」

「アタイも噂でしか聞いてないけど、アイツらが国外に人身売買をするのに目を瞑る代わりに、貴族様のタイプの子がいたら献上するって話を聞いたんだよ」

 未だになくならない良くある話にシャルは話の先を促す。

「タイプの子?僕達みたいに綺麗で可愛い子ってこと?」

 シャルの言葉に女性はキョトンとした顔で驚き、そして失笑。

「ふふ、確かにあんた達は一般的な綺麗で可愛いんだけどね貴族様のタイプにはハマんないのよ」

「じゃあ、どんな子がタイプなの?」

「アタイが聞いた話だと……確か、獣人で赤い髪の子がタイプって聞いたけど?」

 獣人で、赤い髪?

「だから、あんた達はタイプじゃないってこと。これからアタイらは国外に売られて偉いさん達の玩具になるのか、奴隷か、本当に自身の身を切り売りされるのかはまだ分からないけど……」

 シャルの耳にはもう話は入ってこなかった。


 獣人で、赤い髪。

 貴族。


 そんな偶然はあるのだろうか?

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