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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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14/61

イケメンはごめんなさい!! 14

「………何か、用かよ」

 真っ赤な髪に頭に立派な猫耳を生やした獣人の彼は本日も艶々な尻尾を鞭の様にしならせながら正面に立つセナに声をかけた。

「こんにちは!猫様!今日も巡回ですか?」

 相変わらずキラキラした瞳で俺を見るこの女は『セナ』と、言うらしい。らしいってのはこの辺りを巡回中にこの女を呼ぶ街民を見かけるからだ。

「猫様って…お前、毎日毎日居るけど暇なの?」

 アーモンド形の金の瞳を半眼にしレイズは、休憩がてらメイン通りから裏路地に入った広場の木陰で涼んでいた。裏路地と行っても上城地区なので警邏隊の拠点である下城よりも上品で、綺麗な場所だ。広場には小さな噴水があり子供達が水を掛け合い遊んでいる。今日は少し日差しが暑い。ここの広場に小さなアイス屋があった事を思い出したレイズは、濃いめのミルクアイスを食べながらうんざりした顔でセナを見上げた。

 上城地区に送り届けた次の日、巡回中にバッタリと会い食い物を俺に渡し去って行った。

 次の日も、その次の日も現れる為少し巡回のルートを変えてみたが何故か現れる。

 そして今日で6日目、俺はもう驚かない。

「暇ではないですよ?むしろやる事がいっぱいあって忙しい!」

「じゃあ、帰れば……」

 って、言っても聞かないだろうけど。

「忙し過ぎて疲れた時は癒されたいでしょ?私は猫様を見てるだけで癒されるんです!」

 キラキラした瞳でそんな事を言うセナに若干引きつつも、何故かいつもの嫌な感じはしないので邪険にあしらう事が出来ないレイズ。

「相変わらず何言ってんのかわかんね〜な」

 カリッとアイスのコーンの部分を齧る。

「………なんだよ?」

 人が食べている所をジッとみるセナの視線がうるさい。

「冷たいの大丈夫なの?」

「はっ?当たり前だ…あ〜?ああそうか」

 不思議そうな顔で当たり前の事を聞いてくるセナに、昔どっかで同じ様なやり取りをした事を思い出したレイズはコイツが異世界人だと言うことも思い出した。

「………猫科の獣人だからって普通の猫と一緒にするな。俺は普通に熱いのも冷たいのも大丈夫だし玉ねぎだってチョコレートも食べる。ただ……」

「ただ?」

 アイスの最後の一口を口の中に放り込み咀嚼し飲み込む。

「暑さと湿気は苦手だ」

 プイッと背けたレイズの頬は若干赤くなっていたのをセナは見逃さなかった。

「…………あはっ…あはは」

「何で笑う」

 少し拗ねた顔が可愛いとは口には出さず。

「……いや、私も暑いのも湿気も苦手だよ。でもそれって他の人も同じだよね?」

「………そうだ、()()だ。俺は普通だから」


『大丈夫、それは大多数の人が持っている感情と同じだから。俺だって暑いのは平気だけど湿気は苦手かな?後、気圧の変化で頭痛も酷いんだ』

『気圧の変化で頭痛?』

『そうだな〜雨が降る前になると頭が痛くなる。ほら、痛たすぎて髪の毛がこんなにクルクルになってるだろ?』

『そのクルクルはどうだか知らないけど。ーーは雨が苦手ってこと?』

『そう、苦手』

 男は頬杖をついて俺を見て笑っていた。

『俺の属性魔法、火だから温めてあげようか?そしたらお前の周りの空気はカラッとするよ?』

『はは、辞めとく。カラッとする前に俺が丸焼けになっちゃうだろ?』

『……それは、ありえるかも』

 まだ、子供だったんだ。

『じゃあ、どうしたら良い?何か薬とか持ってこようか?』

『大丈夫。雨があがればそのうち治るよそれに"レイ"君が元気なら俺も元気になれるから』

『そんなんで良いの?』

『良いの』

 男の大きな手が頭を撫でる。

 暖かくて………。



「はい!今日はサーモンとチーズサンドの差し入れです!」

「!?」

 勢いよく渡された紙袋からはまだ焼き上がったばかりのパンの香ばしい匂いがした。

(やば、俺今少し意識飛んでたわ)

「……良い加減、俺に賄賂みたいに食い物持ってくるの辞めろって。そんな事したって駄目だからな」

 レイズは袋に手を突っ込み、まだ温かいサンドイッチを口の中に放りこんだ。さっき食べたアイスの冷たさは上書きされてしまったが、代わりに新鮮な野菜と魚の味それと濃厚なチーズが口の中に広がる。

 ついでに、狙われている大事な尻尾もセナの気持ち悪くワキワキと蠢く魔手から避ける。

「あっ!もう!野良猫には餌付けって、相場が決まっているのにおかしいな……」

 レイズは半眼でそんなふざけた事を言っているセナを睨みながら残りのサンドイッチを口に放りこみ、指に付いたチーズを舐め取り空になった紙袋をセナの手に載せた。

「誰が野良猫だ……それと、ごちそーさん。最近下城地区の辺りが危ねーから早く帰れよ」

 何故かポカーンとした顔をしたセナに背を向けてレイズは下城へと歩き出した。

「………食べて、くれた」

 取り残されたセナはフルフルと震え、喜びに打ち震えベルフルールへと駆け出していく。

 クローズのかかった店の扉を勢いよく開け放ち開口一番に草間さんの名前を呼んだ。

「草間さぁ〜ん!草間さんどこですかー!!」

 すると2階から軽やかな足取りでお目当ての草間さんが降りてきた。

「何々?どうしたの?」

「野良猫様がやっと私の手から食べ物を食べました!!」

 空になった紙袋と小さなガッツポーズで瀬奈は草間へと駆け寄っていく。

「へぇ〜、意外と早かったね♪餌付け作戦成功かな?で、美味しかったって?」

 草間さんは嬉しそうにニカッと笑った。

「はい!『ごちそーさん』って言って行っちゃいました!ツンツンのデレでした!むしろこっちがご馳走様と言うべきではないでしょうか!」

「うんうん♪」

「それと、今日は暑いからって木陰でアイス食べてました!」

 鼻息荒く、今日あった猫様情報を草間と共有していく。

「ああ〜、確かに。今日はちょっと暑かったからね」

「はい!それに玉ねぎやチョコレートも大丈夫だって言ってました!」

「俺達の世界じゃ、猫にはNGだから心配しちゃうよね」

「はい!!それと湿気が苦手だって言ってた時の顔が……」

「うんうん♪彼はツンデレの才能があるからね!僕らみたいな愛猫家には彼の行動全てが」

「「尊い!!」」

 二人で熱く盛り上がっているはずなのに、何故かブルリと悪寒が走った。



「で?お二人は何の話をしてるのでしょうか?」



 いつのまに居たのだろうか店の入り口からネル君が満面の笑みで二人を見ていた。

「……あれ?ネル君、きょ、今日のお迎えは早いですね〜」

 ギギギギギィと音がしそうな程、首が重い。

「ええ、明日から店長さんは作品の追い込み作業に入るようでしてお店の営業時間など諸々の話をする為にいつもより早めに伺ったのですが……」

 ネル君の満面の笑が怖い。

 怖すぎて直視出来ない!

「セナ様、明日はお屋敷から出ちゃいけませんよ?」

 サラリと言われた一言に思わずネルの顔を見た。

「ひぃ!!」

 案の定、笑っているのに背後に鬼が見えるようなオーラを放っているネルがゆっくりと近づいてくる。だが明日は、草間の代わりに露店場所の確認に行く予定があった。

「あの〜……明日は露店の準備があって荷物運びで忙しく……」

 コツリ、コツリと階段下まで歩いて来たネル。見た目は少年執事、普段はあざと可愛い仕草でセナを翻弄しているが。

「明日以降も禁止にしましょうか?」

「………いえ、大人しくしてます」

 今日は鬼ネル。大人しくしようと思います。

「それと、()()()()どこに行く気ですか?貴方との話はこれからですよ」

 ネルの手はガッシリと草間の服を掴んでいた。

「……ひッ!!」

 逃げようとしていた草間さんはあえなく捕まり、2階にある作品依頼を請け負う為の応接室に強制連行された。


「それでは、店長さん失礼します」

 2階の扉が閉まる音とともにネル君が応接室から出てきて階段を降りてくる。セナは草間の代わりに閉店作業をしカウンターの椅子で、2人が降りて来るのを待っていた。

「お話は終わったんですか?」

 ちょっと、長かったけど草間さん大丈夫かな?ちらっとネル君の背後を見ても草間さんが部屋から出て階段を降りてくる気配はなかった。

「ええ、お待たせしてしまいすみませんでした。それと、先日セナ様が試作品にと持って帰ってきた物ですが……まだ、ありますでしょうか?」

「作業場に行けばまだいっぱいあるよ?」

「もし宜しければ、何点かまた屋敷に持って帰って欲しいのです」

 予想外の申し出に私の頭の上にはクエッションマークがいっぱいだ。

「?私は構わないけど……」

 チラリと2階を窺う。

「店長さんにはご了承頂いてるのでお気になさらずに」

「そう?それならこっちに」

 それから私は、ネル君と一緒に作業場にある試作品と彼等をイメージして作ってみた作品をお屋敷へと持ち帰った。



 ***



 リアム邸、使用人屋敷一階の談話室の(すみ)でセナはせっせとガラスチャームの仕上げをしていた。

「セナ様、何してるの?」

 そんな談話室に顔を出したのは茶色と黒のツートンカラーの髪のアヴィ君。今日も頭の両サイド上からぴょこぴょこと跳ねた髪と、一体どうやったらそんなに泥が付くのだろうと疑問に思う程の上から下まで泥んこで元気そうだ。

 もうこの寝癖みたいなぴょこんとした髪はアヴィ君のデフォルトなのだと思うことにする。

「いつもお世話になっているメイドさん達に、(ささ)やかながらプレゼントを作ってるところだよ」

「へぇ〜」

 私の手元を良く見ようと覗き混んできたアヴィ君の頭は、途中で別の小さな手によって阻まれた。

「おはようございます、セナ様。アヴィ!貴方はまずはお風呂で綺麗にしてきて下さい。何をどうしたらそんな水撒くだけで泥だらけに……それにいつも言ってるでしょう……」

「ご、ごめんなさい〜」

 ネル君のお小言と泥を飛ばしながら走って部屋を出て行くアヴィ君。そのアヴィ君を捕まえてお説教するネル君の姿はリアム邸の見慣れたいつもの朝。

 今日も平和だなと、セナは思う。

「申し訳ありませんセナ様、アヴィがいつもいつも……」

「あはは、気にしてないよ。毎日元気で良いと思うよ?あっ、ありがとう」

 テーブルに温かいコーヒーが置かれた。いつもより少し早めに起きたので濃い目のコーヒーを入れてもらった。

 うん、香ばしい良い匂い。

「それなら良いのですが……それと、()()もお願いしてしまって申し訳ございません」

 ネル君が示す()()とは、昨日『ベルフルール』から持って帰ってきた試作品達だ。試作品と言ってもほぼ完成はしている。今は仕上げの金具やチェーンを付けているところだ。

 側には色とりどりの液体が入った小瓶が一緒に置いてあり、細かいメモ書きまで付いている物もあったりする。

「そんな……気にしないで。私が好きで作った物だったから、むしろありがたいかも?」

「かも?」

 コテンッと可愛らしく首を傾げるネル君の時々現れる少年仕草に癒されつつ。

「うん、ちょっと作り過ぎて置く場所どうしようか困ってた所だから」

 試作品の蜻蛉玉やガラスのチャームは、簡単な物なら作りやすい。まだまだ素人のセナは凝った作品が作れないため、必然的に量が増えてしまったというわけで。小さいながらも置く場所に困っていたのは本当なので今回の申し出はセナにとってとても助かったのだ。

「でも、本当に良いの?」

「ええ、かまいません。先日セナ様が持って帰ってきた作品の数点を、アンジェリカが興味本位でいつもの小瓶に付けたら人気が出てしまったと、聞いておりますので」

 そう、あの試作品達は何故か一部界隈で人気になったそうだ。この屋敷のメイド長のアンジェリカさんはサキュバスの魔族、数ヶ月に一度開催される魔女達の集会(サバト)で媚薬を売っているそうなのだか、その時の幾つかの小瓶にワンポイントチャームとして私の作った作品を付けたらその日のウチにアンジェリカさんの媚薬は完売したらしい。元々アンジェリカ(じるし)の媚薬は効能も抜群で人気があるらしく、今回の()()()()のチャームは独占欲の強い彼女達の口から噂が広がり、個人的に注文してくる者も居るとか居ないとか。

 そんな中、リアム邸のメイドさん達はアンジェリカさん崇拝者の集まりと言っても過言ではなく今回の人気の裏で『一番近くにいる私達が、アンジェリカ様の初めてを持っていないなんておかしい!』と、謎の抗議が密かにあり。今日に至る。

 ちなみに此処に置かれた小瓶達はメイドさん達の為にアンジェリカさんが自ら調合した液体の入ったマイ小瓶。チャームはアンジェリカさんが個々に選んだらしく、皆一様にソワソワしながら出来上がりを待っている。ソワソワと言っても顔が見えないので、漂う雰囲気だけでの判断だけど。

 ちなみ、屋敷のメイドさん達は覆面の様に布で顔を覆って居る人が多い。

 ガチャりと、唐突に談話室の扉が開かれ入って来たのは話題のアンジェリカさん本人だった。

「ねぇ、セナ〜追加でコレもお願いして良い?」

 渡されたのは小瓶と幾つかのチャーム。

「うん、良いけど……本当にこれで良いの?」

 渡されたのは、虫を模したチャーム。蝶やてんとう虫など可愛らしい系と何故か毒草の形のも混ざっている。

「ちょっとある人から頼まれた物だから、見分けつくよーにしたいらそれでお願い」

 空いてる椅子が近くになかったのか私の座ってる椅子の肘掛けに座り、寛ぎはじめた。

 肘掛けと言っても布張りなので座る分には問題はないのかもしれないが。

「うん、分かった。急ぎ…とかじゃないよね?」

「大丈夫、一番最後に回しちゃってかまわ………痛っ!」

 軽い良い音がした。

「アンジェリカ、そんな格好でウロウロしないで下さい。それに、そこは座る場所ではありませんよ」

 叩かれたのは綺麗な形のアンジェリカのお尻。

「えー、使用人屋敷内だから良いじゃない」

 アンジェリカさんはお屋敷内で見かける時はしっかりメイド長らしくしてるんだけど、コッチの使用人屋敷にいる時はラフ……と、言うかもうほぼ裸みたいな格好でいる事のが多い。最初はそのギャップに驚いたが今はもうコレも慣れつつある。それに、今日はちゃんと前ガン開きの白いシャツにかろうじてパンツを履いてる。

「それと、セナ様にちゃんと朝の挨拶をして下さい。一応貴方もここの……あっ、待ちなさ!!」

 ネル君が止める暇はなかった。

「!?」

 柔らかい唇が私の唇に触れる。

「おはようセナ……あら?アタシがこの間あげたリップクリームは?」

 何のことないアンジェリカ流の挨拶。女性限定ではあるけれど。室内に居るメイドさん達が羨ましそうに見ているのには気づかないフリをする。

「……使い心地が良かったのでこの間使いきってしまいました」

 指でフニフニと私の唇を確認するように触る。

「ふ〜ん?このリップいまいちね、この前のとはちょと匂いが違うけど……きゃん♡」

「貴方には少しお仕置きが必要ですね!行きますよ!……それではお騒がせしましたセナ様」

 ほぼパンツ姿のアンジェリカさんのパンツを掴み、引きずりながら笑顔で部屋を出て行くネル君。

 室内に残されたのは数人のメイドとセナのみ。

「今日も良い天気になりそう」

 お屋敷から見える王城を背に眩しい太陽が登ってきた。

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