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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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13/61

イケメンはごめんなさい!! 13

 レイズ・カメリアはストーカーに合っていた。

「………………」

「………レイズ、アレ良いのか?」

「…………………………」

 自慢の細長い尻尾が激しく左右に揺れる。頭から生えているモフモフの三角の耳がピクピクと周りの音を拾うように忙しなく動いていた。その度に何を言っているかわからない単語での叫び声が耳の良いレイズにはしっかり聴こえていた。

「……………チッ、気にするな。あーゆうのは構うと余計にメンドーになる」

 いつもの綺麗なアーモンド型をした金の瞳は現在半眼である。そう、彼は先日セナが見かけた赤毛の獣人その人であった。

「……まぁ、レイズが言うなら俺は構わないけど………本当に大丈夫か?」

 自分より遥かに先輩であり、仕事の仲間の彼は心配そうにレイズを見る。今回の仕事『感謝祭中の街の巡回強化』は黒騎士団からの依頼であり勝手な事をすれば警邏隊(けいらたい)の皆にも迷惑をかけてしまう。警邏隊に入ってまだ日が浅いレイズは尻尾を一振りし仲間の彼に別の話題で話しかけた。

「……………だ、大丈夫。それより3日後、黒騎士の奴等と今回の仕事の追加依頼だったか?何か話合うんだろ?」

「ん?ああ、そう言えばそんな事をリーダーが言ってたな。……今回はちょっと西の奴等とも共同になるかもしれないからいつもより荒っぽくなるかもしれない」

 男はチラチラと後ろを気にしながら歩いていく。建物や人混みに紛れながらまだ付いて来る女に少し警戒しているようだ。

「西と共同?そんな事したらこの街ぶっ壊れんじゃね?」

 細い眉が若干眉間に寄るが瞳はしっかりと前を向き異変がないか警戒するレイズ。

「いや、リーダーの話じゃ西と南を跨いでる森が最近騒がしいらしい」

「森?森って禁止地区になってるあの森か?魔獣が出るから西と騎士団の奴等が巡回駆除してるんだろ?」

 自分達の街中(テリトリー)で悪巧みを画策してる輩ではなく『禁止地区の森』と聞いて、レイズの警戒は少し緩んだ。

「そうなんだが、最初西側の森付近で目撃情報があってな目撃だけならたまにあるが、最近はこっち南側でも目撃情報があがってきてる。被害はまだないが魔獣達が境界ギリギリまで出張ってきてるらしいんだ。普段人気のない場所だが感謝祭で人の出入りも多いからな万が一のこともある」

 境界とは街に近い森の部分に張られた魔獣避けの結界のことで、どんな?と訊かれると専門外の俺にはさっぱりだ。だが普段あまり人里近くの街、しかも境界ギリギリまで魔獣が降りてきているのはおかしい、森で何かがおきている事は間違いないだろう。

「じゃ、討伐隊でも組むのか?俺が入ってからはまだ一度もなかったから……少し楽しみかも」

「お前ね〜、そんな不謹慎な事リーダーの前で言うなよ?」

男は呆れ口調でレイズをみる。

「大丈夫、俺、口は固いから」

 レイズは機嫌良さそうに口笛をふきながら男の少し前を歩く。

(口は固くても………尻尾がな〜)

 男はレイズの尻尾の先だけ揺れる様を見て溜め息が出る。獣人は体力や筋力、俊敏性。それに耳や嗅覚と優れた者が多い。その為、魔法を使うより体術や武器を使う戦いを好むのだが、獣人の血が濃ければ濃いほど好戦的で尚且つ感情が表に出やすい。レイズなんかは特に獣人の血が濃い為、尻尾や耳に直ぐに出てしまう。

 本人の前では言わないがある意味、素直で分かりやすい。

「おい、レイズ」

 ガシッと男は前を歩くレイズの肩を掴んだ。

「ん?」

()()なんとかしろ」

 男は顎で少し離れた建物からこちらを見ている女を顎で指した。

「……………」

「大丈夫、なんだろ?」

「……チッ、分かったよ。このままメイン通りの巡回に出てる奴等と合流する」

 舌打ちしながらもレイズはくるりと進行方向を変えた。メイン通りまで行きそこで撒くらしい。

「うん、偉いぞーレイズー」

 わしゃわしゃと真っ赤な髪を掻き回してやった。警邏隊に入団する前から知っている弟分のレイズの成長に男は喜びを表現したつもりだったが。

「わっ!ヤメロ馬鹿!」

「えっ?お前コレ好きなんだろ?」

「は!?誰がそんなこと……!!?」

「きゃああ♡」

 女の悲鳴と、コロコロと皮付きのトウモロコシが転がってきた。転がってきたその先には女がキラキラした目で俺達をみていたのだった。

「尊い…………」


 ***


 初めて見かけたのは喧嘩の仲裁をしていた所だった。二度目は体験教室の生徒さん達とお昼の買い出しに行った時。そして現在、ハーフエルフの三人が畑で作った野菜のトウモロコシを近所に住む教室の生徒さん達に配っている時だった。

「あっ、アレは!あの時の!!」

 遠目でも分かる派手な真っ赤な髪と、ピンッとした猫耳。あの時の彼である。

 生徒さんの話では南地区を巡回警備する『警邏隊』の一人だと教えてもらった。

 どんどんと遠ざかる彼。

(巡回警備してるってことはお巡りさんみたいな人ってことよね?)

 一瞬の躊躇いの末、セナは残りのモロコシ達を抱えて尾行を開始した。後に彼女はこの時の事をこう語る。


『猫好きは猫の姿を見たら追いかけてしまうものなのよ』


 尾行を開始してすぐ。

「やぁ、今日も店長さんの所に来てるのか……い?セナちゃん?」

「すみません!少し急ぎの用事ができまして」

「えっ?あ、そう?気をつけてね?」

 セナは顔見知りになった近所のおじさんに挨拶しながらサササッと人混みに紛れて行く彼を追った。



(どっ、どうしよう良く考えたら……コレって、ストーカーだよね?つい、野良猫を追いかけるノリで来ちゃったけど)

 セナは前を歩く彼から目を離さず、人混みや建物の影からそっと付いて行った。

(でも………人型の猫……尊い!!)

 鼻息荒く追いかける彼女の姿はまるで………。


「はぁ〜……何か、変なのが付いて来てる」

「えっ?なんですか兄貴!」

「……唯の独り言、気にすんな。で?こっちは異常なしか?」

 レイズは気にせず街の巡回中の一人と言葉を交わす。入団時期は自分とあまりかわらないが何故か兄貴と呼ばれている。

「はい、感謝祭は2週間後なんでまだまだ人やトラブルの数は通常運転っス!」

「分かった、引き続き街の巡回頼むな」

「はい!お疲れッス!」

 今は感謝祭の準備期間中の為いつもの倍、街の巡回組を増やしているが多分まだ増えるだろう。その為随時情報の収集と交換をしている。少し人疲れしたレイズは仲間と離れ、次は別の巡回組の方に足を向け歩き出した。

(あっ!また移動!?お店から随分離れちゃったけど……)

 チラッと人混みの中聳え立つ時計台を見る、時刻は昼より少し前。セナはまた真っ赤な髪の彼を追いかけた。

(大丈夫、大丈夫。まだ時計台見えてるしいざとなったらアレを目印に帰れば良いんだから)



 商業地区の時計台。

 煉瓦作りで四方から時間が分かる文字盤にお昼になると鐘が鳴る。私の世界では一般的に知られている時計台はメイン通りの中央に位置し、東西南北へと幅広の道が伸びている。

 時計台から上、王都寄りの地区は上城(かみじょう)、下を下城(しもじょう)と分ていて更にそこから細分化されている。

 草間颯人が店長を務める『ベルフルール』は上城に店を構えていた。その店のカウンターでは、椅子に座り座禅の如き姿勢で座る颯人の姿があった。

「ねぇ?セナは?」

 ハーフエルフの三人組の一人、3号が颯人に話かけた。

「ん?お昼のお弁当を頼みがてら君らの作ったモロコシ達を配りに近所に行ったけど?」

「……そう」

 少し考えた後スタスタと店の外に歩いて行く3号を横目に。

(自分達以外の誰かを気にするなんて珍しいね〜)

 颯人はフッと笑を浮かべた。


 細くて長い、真っ赤な尻尾がバシバシと周りに居る仲間達にぶち当たり散らかしていた。

「あの、兄貴なんかあったんッスか?」

「んあぁ〜?」

 呼び掛けた仲間の一人はレイズの不機嫌丸出しの顔に怯え一歩下がる。

「コラっ、レイズ。怯えさしてどうする」

「…………チッ!」

 舌打ちとともに頭を軽く叩かれた。

「ははは、すまんな。引き続き下城の巡回を頼む」

「はい!お二人共、お疲れっス!」

 走り去る仲間の一人。そしてさっきから不機嫌丸出しのレイズの態度と、こちらをずっと見ている女性が一人。

(気配とか何もないから普通の人間だと思うけど……それにしてもなんか…圧が凄いな)

 隣のレイズを見れば歯軋りまでしている。これまでもレイズの見た目に興味を持った者は一定数いた。中にはその()()()見た目のため『愛妾』に、なんて言ってくる者もいてその度に暴れ回っては追い払っていたのだが。

(警邏隊の一員になってから落ち着いてきたし少しは自覚してきたのか?)

「………ジェイ、次は歓楽街の方だろ?さっさと行こう」

「ん?ああ、そうだな」

 自覚し、少し大人になったんだと思っていたのだかどうやら違っていたらしいと気付くのはもう少し後のこと。


 そして現在。

 モロコシを挟んでセナと彼等は対峙していた。

(し、しまったぁ〜!遠くから眺めてるはずがこんな良く分からない所まで付いてきた挙げ句!モロコシバレした!)

 セナはせっせと転がした皮付きのトウモロコシ達を拾い集める。

(せっかく、あの子達が作った物なのに〜傷は……良し!付いてない大丈夫!)

「おい!女!」

 猫の彼が音も無く近づいてセナに話しかけた。

「!!?」

「ちょっと面かせやぁ」

 細い眉は吊り上がり、金色の瞳は鋭く輝いている。

「はっ!はいっ!」

(怒ってる顔!尊い!猫の部分と人の部分のバランスが最高!)

「おい!さっさと立て!」

 残りのモロコシを拾い、スクっと立ち上がり猫の彼をキラキラの瞳でセナは見つめる。

(ヤバッ!近くで見たらもっとヤバイ!コスプレイヤーさんも顔負けの美人なツン顔!!これは……確かに思わず写真撮りたくなっちゃうかもな〜後で草間さんにジャンクショップ的なお店がこの世界にあるのか聞いてみよ!……それにしても)

「付いてこい!」

 くるりと背を向けたレイズの背後からまたもや悲鳴。一体今度は何だと振り向く。

「尊っっ……っ!」

 女は顔を赤らめ俺の下半身、特に尻から生えてる尻尾を恍惚とした表情を浮かべ見ていた。

 右に左にと振って見れば視線で追いかける、次第に息を荒くしながらブツブツと言っているが聞こえない振りを。

「ああっ♡触りたい、あのモフモフの細い尻尾で叩かれたい♡」

 聞こえてきた言葉にレイズはゾワッと身を震わせ女から少し距離を取った。

 レイズと女性が商業地区の方に戻って行くのを確認しながらジェイは歓楽街に続く階段を登って行く。

「まぁ〜、害はなさそうだからいっか」


「ああっ!どうしよ!目の前で尻尾が揺れてる!!」

 セナは人混みを避ける様に上手に歩く真っ赤な髪と猫耳、そして鞭の様にブンブンと揺れる尻尾に釘付けになっていた。

「ああっ!触りたい!触りたい!触りたい触りたい触りたい……ブツブツ」

「だぁー!うるせぇ!黙って歩け!何なんだお前は一体!あと、ちょっとでも俺の尻尾(ソレ)に触ったらブッ飛ばす!!」

 巡回中に会った女はずっとこんなだった。いつもの奴等とは違う感じがしたので付いて来ているのは分かっていたが放っておいたのだが、やっぱりいつもの様に撒いて来るべきだったとレイズは今後悔している。

「えっ?私?私は紅野瀬……」

「名前なんか聞いてねぇ!黙ってついてこい!」

 青筋を額に浮かべ鼻息荒くプイっと、そっぽを向いて歩いて行くその背中にセナは目を輝かせながら追いかけた。尻尾に夢中になり過ぎていつの間にか遠く見えていた時計台が、通りを抜けた瞬間にさっきまでの静かな路地裏が嘘のような喧騒と人の活気の中、いつもの見慣れた大きさで現れた。

「あれ?時計台?いつの間に……」

「ここまでくれば分かるだろ?」

 どうやら、あそこからわざわざここまで送ってくれたらしい。

「………もしかして、送ってくれたの?」

「……次の巡回組の報告のついでだから送った訳じゃない」

 聞き慣れない言葉にセナはキョトンとした顔をした。

「巡回組?」

「は?何言って……あっ、あ〜なるほど。お前、もしかして異世界人か?」

 レイズは少し考えそう聞いた。

「うん、そうだけど……どうしたの?」

「あっ……いや、何でも無い。上城地区は向こう側だから気をつけて行けよ」

「?うん、送ってくれてありがとう。コレ、良かったら貰って?迷惑料として渡すのは失礼かもしれないんだけど、私他に何も持ってなくて。あっ、お店の子達が作ったトウモロコシなんだけど……食べれる?」

 少しだけ申し訳なさそうに見上げる女にレイズはやはりいつもとは違う違和感を感じていた。

 だからだろう、いつもなら見ず知らず、しかもほぼ初対面に近い人間から物を貰うことはあり得ない。特に食べ物は。

「……ああ、迷惑料な。ありがたく貰っていく」

 パッと紙袋を受け取ったレイズはあっと言う間に人混みに消えていった。

「瀬奈ちゃ〜ん!」

 自分を呼ぶ知る声に振り返り、セナは通り向こうに見慣れた人影を見つけて、走り寄った。

「瀬奈ちゃん!何処に行ってたの?中々帰って来ないから俺、心配したよ〜」

 人影は草間さん。チャラい感じなのに以外とガッシリとした体型で人混みから頭一つ分飛び出るくらいの高身長の為、遠目からでもすぐにわかる。

「ごめんなさい。ちょと冒険したら道に迷っちゃって」

「もしかして、下城の方に行っちゃったの?」

「下城?」

 さっきの彼も『上城地区』とか言ってたような。

「……商業地区はこの時計台を中心にして、ここ今俺達が立っているメイン通りを線としたら、王城側にあるのが上城地区。上城の商業地区を挟んで貴族街がありその向こう側が王城なんだ、だから上城は貴族のお客様も多くて上に行けば行く程上品な店が多くなる。そして、反対に下城地区は歓楽街や賭場もあったりしてちよっと治安が悪いんだ。だから、危ないから次は気をつけてね」

「はい、……ごめんなさい」

 ニッと笑った草間さんはポンポンと私の頭を触り、人混みで逸れないよう手を引いてお店に戻った。

 店に戻るとハーフエルフの子達は鬼の形相で草間さんに脛蹴りをし、私の手はどこから持ってきたのか綺麗な水盆の水で丁寧に洗われた。

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