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オタク女子イケメンパラダイスに降臨!  作者: 暁月
始まり

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12/62

イケメンはごめんなさい!! 12

 店舗名『ベルフルール』。


 その店は商業地区の大通りから一本奥に入った路地にあるアジアンショップ。その店の職人兼店長の草間さんが、お店との続き部屋になった作業部屋へと声をかける。

「瀬奈ちゃん、そろそろ執事坊ちゃんのお迎えの時間だろ?作業はそのくらいにして片付けの準備な?」

「はぁ〜い」

 お店の裏口から繋がる作業部屋の一つに私は居た。部屋は石造りで、壁には色とりどりの硝子の棒が色彩チャートの様に各棚に納められ、窓のある壁際には小さなガラス玉等が鈴なりで吊るしてある。

 部屋中央には個人テーブルの様な囲いをした机が並び、机の真ん中には小さなガスバーナーが設置してあった。

 その机の一つに座っていた私は手元のガスを止めて、今し方形を整えたガラスのチャームを早速窓際の空いているスペースへと吊るす。

 まだ高めの太陽の光がガラスに反射してキラキラと輝いていて、眩しくて思わず目をつぶってしまった。

「セナ〜!」

 ドンと軽い衝撃が右側から。

「あっ!()()()ばっかりズルい!」

 今度は左側からの衝撃。

「…………2人がすまない、セナ」

 草間さんが顔を出していた扉とは違う扉からハーフエルフの少年がすまなそうに顔を覗かせていた。

 ここ最近の日課になりつつあるハーフエルフの3人組と私。今はもう慣れたけど、何処から飛び出して来るかわからないので最初は心臓が疲れた。

「いや、うん、ビックリしたけど大丈夫」

「聞いてよセナ!()()()が僕の育ててたトマト勝手にムシって食べちゃったんだ!」

「はっ?あんだけいっぱい鈴なりになってるんだから1つくらい良いだろ?」

「良くない!セナに教えて貰ったトマトのピクルス作るにはいっぱい必要なの!」

「なっ!う………それは、ごめん」

「でもシャルだってこの前()が育ててる苺こっそり食べてただろ?」

「あっ!うう……美味しそうだったからつい……ごめん」

 どうやらこの店の裏庭にある畑で作っていた野菜での喧嘩らしい。草間さんが片手間で育てていた野菜達は、今はハーフエルフの子達が率先して育てている。草間さんが『開かずの仕事部屋』に(こも)るとせっかくの野菜がほぼ全滅してしまい楽しみにしていた3人はそれはそれは落ち込んでいたと、体験教室の他の生徒さんが言っていた。

 私の腰回りで始まった喧嘩は収束した。

「で?2人はいつまでセナに引っ付いているつもり?」

「「あっ!」」

 2人は顔を見合わせ私から離れていった。

「毎回毎回、騒がしくしてすまない。2人もちゃんと謝って」

「ごめんなさい」

「ごめん」

 3人のハーフエルフの子達が頭を下げて謝る中。私は膝を折りいつものように目線を合わせて頭を撫でる。

「うん、気にしないで?でも、ビックリするから急に現れるのはやめて欲しいかな?あはは」

 前回、他の生徒さん達と出来上がったばかりの器を運んでいる時。急に現れたこの子達にビックリした私は作品を落として壊してしまったのだ。私達が壊してしまった作品を作った生徒さんは『気にしないで良いよ』とは言ってくれたけど、壊れたモノは元に戻る事はない。案の定、ハーフエルフの子達は草間さんに説教され私は個人教室となった。

「あっ、()()()。紐が解けそうになってるよ?」

 リーフの首には瞳の色に近い薄い黄緑のグラデーションのかかったガラスの葉っぱのチャームと、点打ち花の絵がワンポイントで描き込まれた小さなガラス玉が一つ。

 その首から提げている紐が解けそうになっていた。

 リーフ、エバー、シャル。

 草間さんは、「1号、2号、3号』で呼ぶけれど私は彼らにそう名前をつけ、試作品の蜻蛉玉(とんぼだま)とガラスのチャームを彼等の色のイメージとして作り貰ってもらった。

 エバーは少し濃いめの緑の葉と、中央が深い青で周りに気泡を作りながらクリアガラスでコーティングした玉。シャルは薄い黄色の葉に、薄い桃色のガラスと色味の強いスプライトが入った玉。流石に番号呼びは抵抗があるので、素人が作った物だけど是非!と、押し付ける形ではあったが付けてくれているのは嬉しい。

 ちなみに名前はそのままイメージした色からとっている。

「あっ、ありがとう……」

 リーフは照れくさそうに目線を下げ終わるのを待つ。

「はい、出来た」

 結び終わってちょうど、お店側の扉が開き草間さんが顔を出した。

「瀬奈ちゃん、こっちに3人って…やっぱり居たか。お前らも迎えが来てるぞ」

「は〜い、じゃあまたねセナ」

「また」

「……また」

 3人と草間さんが居なくなると私は乾かしているガラス玉もとい、蜻蛉玉の出来具合をみた。

「自分で言うのもなんだけど、素人にしては良く出来た方だと思うんだけど……売るとなるとどうなんだろ?」

 セナは腰に手を当てて考えるが答えは出るはずもなく一度、お屋敷の皆に見てもらって意見を聞いてみることにした。

 何故、体験で入ったハズの工房で自由気ままな作品じゃなく売り手目線で見ているのかと言うと。

 もうすぐ感謝祭があると言う事で店長の草間さんは勿論販売側で参加するとのことだった。それは分かる。そして、空いてるスペースに作品を置かないか?と、誘われ断ったのだけど他の生徒さん達の作品も置くとのこと。なので個人的に興味があって作っていた蜻蛉玉とか小さなポイントチャームなんかを作ってみたのだけれど、意外と細かい作業は好きなのでやってみたが中々コレが面白くて、草間さんから小技を伝授されグラス作りの合間にコツコツと作っていたらそれが目に留まったらしい。

 幾つかを手に取り、一度持ち帰りたい旨をお店にいる草間さんに伝え作業部屋を後にする。

 作業部屋を出て一階カウンターの奥を覗くと、椅子の背もたれに頭を置き顔にタオルを載せ力尽きたように寄りかかっている草間さんを発見した。

「お疲れですね。間に合いそうですか?」

「……瀬奈ちゃんが俺を癒してくれたらフル充電するかも」

 顔にかけたタオルで聴き取りづらいが、そんな事を言っているならまだ大丈夫だろう。

「………看板しまってきますね」

「ありがと〜、助かる」

 草間さんは今、ある貴族の方からの依頼でもっか制作中らしい。個人情報なので詳しくはいえないが細かい指示がいっぱいあって大変だと毎日嘆いてる。

 私は店の外に出て、外に置かれた雑貨等を店の中にいれ腰丈くらいの黒板タイプの看板を店に入れ、最後に店周りの掃除をした。裏の工房の鍵を締め裏庭へと続く門を閉じ、店に戻ろうとしたのだか通りの方から普段とは違う喧騒が聞こえ気になり興味本位で近づいたのが行けなかった。

「あっ!あれは!!」

 何かの言い争いの中心にいたのは猫!

 いや、確か……獣族の中の一つ猫族!って、ネル君が言ってたかな?そんな事聞いたら是非!是非一度!拝ませて欲しいと思っていたのでついつい、まじまじと()を見てしまった。

「はわっっ!!」

 なんせ彼は立派な猫耳と尻尾を持っていたから!

 真っ赤な髪。アーモンド型の瞳は金。ピッタリとした服は細マッチョな感じの体型を顕にし、腰には短剣と長剣、長くて細い尻尾!!

「素敵♡」

 そんな猫猫しい彼をウットリした顔で見ていると。

「こら、浮気はダーメ!」

 視界を大きな手で塞がれ、最近良く嗅ぐお香の匂いに包まれた。

「あっ、草間さん!あそこに猫族の……」

 草間さんの人差し指が唇に触れる。

「シッ……執事坊ちゃんが満面の笑みで待ってるよ?」

 ネルの満面の笑みを浮かべ、ぶるっと一瞬だけ悪寒が走る。渇望していた猫族の姿をもう一度振り返って目に焼き付ける。

「……はい」

 ネルの教育の賜物だろうか後ろ髪惹かれつつセナはネルの待つ店へと足を向けた。

 路地裏へと消えて行く、そんな2人の後ろ姿を金色の瞳が凝視していたとは気付かずに。




 ***




 王城のある一画で各騎士団の代表達が顔を付き合わせていた。本日の議題は勿論。

「感謝祭が近くなり国内外からの往来が増えた事により商業地区内での近隣住民達とのトラブルが発生している。この件について黒の騎士団の方の担当だが、何か変わった事は?」

 本日の議長は赤の騎士団副団長。団長も副団長も女性で構成された騎士団のナンバー2は今日も凛々しく進行を進める。

「はっ!黒の騎士団は主に獣人族の者が多いので鼻と耳の良い者達に巡回させてますがなにぶん人手不足ですので、南の警邏隊にも要請を出し共同巡回しております」

 黒の騎士団からのその他細い報告を聞きながら若い男が。ボソリと呟いた。

「ふむ、南の警邏隊か……感謝祭が終わったら彼等を労わなければな。私の代ではまだ南と西の物達には会った事がないし……」

 男は騎士団の様子を一段上の上座から眺めていたが、進行を眺めるだけで口は出さない。が、独り言の様に思考が呟きとして漏れていた。

「やっぱり、彼らには美味い酒だろうか?確か以前父上から聞いた話しでは王城内のパーティーに呼んで……」

 男の次の言葉が紡がれる前に誰かの叫び声で打ち消された。

「おやめ下さい王子!彼らを呼ぶと王城が破壊されてしまいます!」

「そうです!特に南の警邏隊(ヤツら)は荒くれ者が多く口も態度もそれはもう!悪魔の様な者達の集まりですから王城へは絶対駄目です!」

 騎士団意外の各部署からの断固とした拒否反応を見るに、相当な荒くれ者達らしい。

「そっ、そうか褒美はまた考えるとしよう。続けたまえ」

 王子と呼ばれた者は進行を妨げてしまった事に詫びを入れ続けるように促す。

「……コホン、次は例の売人達ですが……」

 赤の副騎士団長は言葉を濁しかけ、チラッとここの席に居る筈のない人を見る。本来なら次の議題の担当は白の騎士団。副団長か団長が座る場所には何故か宮廷伯のエリアスがニコニコと座っている。

「あの、エリアス様。リアム様は?」

 本日の議長である彼女は、皆が疑問に思っていることを聞いた。

リアム()も副団長も不在だったので急遽私が代理で出席したのだけど、駄目だったかい?」

 麗しの天使の微笑みで問う。

「いえ、駄目ではありませんが……」

 赤の副団長が頬を赤らめるのと同時にガシャんと鉄の塊が机の上に置かれた。それは青を基調とした甲冑で机の上に置かれたのは下品に組んだ両足。

「アイツらを特別扱いしすぎなんじゃないですかね?エリアス様?白はそもそも副団長が行方不明だし、団長様も毎回この議会に出席はしてない。出席するのは毎回数人居る代理の誰かじゃないですかい?」

 青の騎士団所属。名前は確か……ドモンド・バレル。二人いる副団長の一人だったか?

「そうだね、彼は特に騎士団の他に末席ではあるけれど『13議会(エルダーズ)』の仕事もあるから忙しくさせてしまって申し訳ないと思っているよ」

 エリアスは困った顔で笑う。

「そんなに忙しきゃ白も他に仕事回せば良いじゃないですかい?」

「……()()()()()()良かったんだけれど()()無理だから」

「あっ……」

 青の騎士団の彼は何かを思い出し気まずそうにそっぽを向く。他、事情を知る何人かもやれやれといった態度で青の騎士団の彼を見ていた。

 彼、エリアスも『13議会(エルダーズ)』のメンバーで本当は今回そちらの仕事をエリアスが受けるはずだった。

「それに……特に今回ばかりは白騎士団の団長である彼が直接指揮を取らなくならなくて、白騎士の実力者の半数以上が出払ってしまっているんだ」

 すると、ザワザワと室内がどよめき出す。

(あの団長自ら行くとは、一体何が起きたのだ?)

(戦争か?どっかの馬鹿がリアム殿相手に仕掛けたとか?)

(イヤイヤ、あの方を知らぬ者などこの国はおろか辺鄙な田舎の国でさえ……)

「と、言うわけなので私の顔をたてて今回はリアム団長の代わりに私で許して貰えないだろうか?」

 エリアスの完璧すぎる天使の微笑みと、突然飛び交い出した白の団長の憶測や噂話で青の騎士団の彼は。

「ちっ…………次の議題に飛ばせ」

 ぶっきらぼうにそう言い放った。

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