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イケメンはゴメンなさい!!

「わぁ〜…色々と凄いですね〜……」

 私の最初の一言はこれでした。

 煌びやかな室内に煌びやかな貴族風のいで立ちをした男性達に私はそう呟いた。

 一人は深緑の髪の男性というより少年。大きなクリクリの栗色の瞳が今日も変わらず何を考えているのか分からない光を宿しているが、安定の少年特有の可愛さでカバーしている。

 その横に長い白髪を緩く編み込んで首に巻いている男性が部屋の中に置いてある水槽の魚達を興味津々で眺め、その様子を心配そうに茶色と黒のアシメ風の髪色のまだ幼さの抜けてない青年が見守っている。

 そして、彼らの奥には誰が見ても高価だとわかる豪奢な椅子に一人の男性が静かに座り月のない空を見上げていた。

 その男性は私に気づき立ち上がる。

 綺麗な銀髪とワインレッドの瞳が印象的な男性。

 彼らの主人であるその人は、

「さて、揃ったようだな。行くぞ」

 静かにそう告げ歩きだした。


 目を閉じれば今でも思い出す。

 あの忘れ難い程の美しい光景を。


 でも、あの日。

 私は行くべきでは無かったと思う。


 いまさら後悔しても遅いけど、もし過去の私に何か伝える事が出来るなら「それは絶対にいっちゃダメ!……もし行ったらその日から貴方の苦難の始まりよ‼︎」と。


 そう、私『紅野瀬奈くれのせな』は只今苦難の真っ只中なのです。




 時は遡り半年程前。

 大学生時代の友人と久々にご飯に行った帰りに私は不慮の事故に遭い「死」んだ筈だった。

 そう…猛スピードの車に跳ねられ空高く飛んだ私の体はそのまま落下して硬いアスファルトに叩きつけられる筈が、いつまで経っても来ない衝撃に恐る恐る目を開ければいつの間にやら高い空から急降下中でした。


 ああ、あの時は流石の私も焦ったわね。


 その後、一月はまともにベットから起き上がれない生活を送り今はやっと外に出してもらえる様になったのだけれど……。


 私はベットを降りて大きな窓の近くへと向かって歩き出す。素足の足の裏でフカフカのカーペットの感触を楽しみ自分の足で歩ける喜びを実感しながら窓の外へと目を向けた。

 目に映るのは高く青い空と、深緑の深い森。

 庭には庭師の青年が水撒きをしているのが見える。

(あっ。目が合った…)

 元気に手を振る青年に私も控えめに手を振り返す。

 庭の端には大きな温室が見えるがそこはまだ行ったことがないので何があるのか分からない。

 私は森の向こう側へと視線を向ける。けれど薄い透明な膜みたいなものがあってボンヤリと何かがあるのが分かる程度、その中でも一際大きな何かは王城だと聞いた。

「王城…ね」

 私はため息を一つこぼし外から聞こえる庭師の青年の叫ぶ声で森の先に向けていた目線を庭に向けた瞬間。


 パァーン!


 窓の外側で大きな水の塊が水風船のように弾けた。

「………」

 一歩間違えたら大惨事になりかねないであろう水の塊が目の前の窓の外で霧散して行く様子を私は内心ドキドキしながら見ていた。

「大丈夫ですか?セナ様?前回の事もありましたのでセナ様のお部屋周辺に防御用魔法を張らせて頂いていたのですが…あの者には後ほど厳重注意をしておきますね」

 と、背後に執事服をきっちり着こなした緑色の髪の少年が心配そうな顔で私を見ていた。

「え、あ…はい」

 相変わらずの突然の出現にビックリしながら返事をすると、少年は一本花を差し出し。

「リアム様からでございます」

「あっ…ありがとうございます」

 私が受け取ると少年は静かに部屋を出て行き、私は受け取った花を花瓶へと挿す。その花瓶にはいつの間にか色とりどりの花でいっぱいになっていた。

「……う〜ん困ったな」

 私は意を決して部屋を出ると、このお屋敷の主人のいる部屋へと足を向け歩き出した。

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