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歴史を紡ぐ物  作者: しろ組
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第五話 歴史的な新発見

第五話 歴史的な新発見


 セーシローとフンデンは、砂浜へ流れ着いた。

 先ず、セーシローが、意識を取り戻した。

 少し後れて、フンデンも、気が付いた。

 その直後、二人は、再会を喜び合った。そして、周囲を見渡した。しかし、一面砂浜で、“エバゴン”派の者の姿は無かった。

 そこへ、先の尖った棒のような物を持った褐色肌の一団が、現れた。そして、周囲を包囲した。

 セーシローとフンデンは、その場で、寝転がり、大の字になった。戦意の無い意思表示だからだ。

 少しして、肥えた男が、歩み寄って来るなり、セーシローへ、右手を差し伸べた。

 セーシローは、両手で、その手を掴むなり、起き上がった。そして、「ウキッキー」と、礼を述べた。

 肥えた男が、眉根を寄せながら、小首を傾いだ。その直後、「ぶひゃあ?」と、返答した。

 しばらく、二人は、身振り手振りで、やり取りを交わした。そして、互いに、感覚的に、“敵”じゃない事を認識した。

「ぶひゃ!」と、肥えた男が、踵を返すなり、歩を勧め始めた。

 少し後れて、周囲の者達も、続いた。

 最後に、セーシロー達も、付いて行った。二人で居るよりも、肥えた男に付いて行けば、安全な気がするからだ。

 一団は、海沿いに移動した。しばらくして、足場の悪い岩場へ差し掛かった。

 セーシローとフンデンは、苔や海苔に足を滑らせながらも、付いて行った。

 そこへ、近くに居た者が、掴まれと言わんばかりに、棒を差し向けた。

 二人は、すぐさますがり付いた。不慣れな地を進む事に、嫌気が差していたところだったからだ。

 一団は、ようやく、岩場を通り抜けた。程無くして、再び、砂浜へ出た。そして、右手には、松林が、広範囲に生い茂っており、その右奥から煙が上っていた。程無くして、松林へ進入した。間も無く、開けた場所へ辿り着いた。

 その直後、肥えた男が、歩を止めた。

 少し後れて、他の者達も、立ち止まった。

 セーシロー達も、つられて足を止めた。そして、周囲を見回した。少しして、四角錘の奇妙な形の家屋を目の当たりにした。自分達の集落では見た事の無い形状だからだ。

「ウキッ?」と、セーシローは、右手で指した。どうしても、気になって仕方がないからだ。

「ぶひゃ」と、肥えた男が、付いて来いと言うように、どや顔で、背を向けた。そして、その家屋へ歩き始めた。

 セーシローとフンデンは、顔を見合わせるなり、頷き合った。そして、後に続いた。なるようにしかならないからだ。

 間も無く、三人は、家屋へ入った。

 肥えた男が、奥まで行き着くなり、横たわった。そして、「ふわぁ〜」と、欠伸をした。

 セーシローとフンデンも、戸口の所で、座った。男のように、横になる訳にもいかないからだ。

 その直後、数人の恰幅の良い娘達が、見た事の無い生き物のぶつ切りの肉や岩場に貼り付いていた苔のような物を持って来るなり、肥えた男の前へ、並べた。

 肥えた男が、寝そべったままで、右手で、ぶつ切りを摘まんで、口にした。そして、「ぶひゃ!」と、勧めた。

「ムキ〜?」と、セーシローは、右手を伸ばして、苔のような物を取り寄せるなり、それを割いて、フンデンへ渡した。そして、自らも、恐る恐る口にした。食べられるか、どうか、半信半疑だからだ。次の瞬間、目を見開いた。口の中に、これまでに無い風味が広がったからだ。

「ぶひゃ?」と、肥えた男が、口許を綻ばせた。

 その刹那、「ムキャキャ!」と、セーシローは、頷いた。納得の味だからだ。こうして、歴史的な新発見尽くしとなるのだった。

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