王候補の選択
『それでは、そろそろ誰を次の王に推すか決めてもらいたいと思います』
ズンポイの言葉でクラスメイトたちが移動を始める。
俺と佐藤がその光景を眺めていると、全員が王候補の前に立った。
「ありゃ、今のところ第一王子が有利か?」
佐藤に言われて、王候補の前にいる人数を数えてみる。
ローウェルの前には七人のクラスメイトが立っており、アマンダの前には六人のクラスメイトが立っている。
召喚時に教室にいたのは全部で十五人だったので、選択をしていないのは俺と佐藤だけになっていた。
『そちらの二人、そろそろ決めていただけませんか?」
ズンポイがそう言うと、クラスメイトたちも、貴族連中も、王候補たちも全員が俺たちに注目していた。
「さあ、鈴木。行こうぜ」
「あ、ああ……」
俺は佐藤に誘われるままに進む。俺たちが選ぶのはアマンダだ。
どうせ支持するなら美少女の方が良い。同じ考えからなのか、アマンダの前には男が四人と女が二人並んでいる。
「ふっ、賢明な判断ですわね」
佐藤がクラスメイトの後ろに並び、俺が並ぼうとしたところ……。
「ぐっ……」
急に視界がブレた。
「おい、どうした鈴木?」
地面に膝をつき、吐き気をこらえる。
視界が定まらず、絶えず揺れ動く。目の前の佐藤が何重にも見えた。
「なんだ……これ、吐く……」
仮にも王候補の前で嘔吐してしまうというのはまずい。
混濁しつつある意識の中でそう考えた俺は、どうにかしてアマンダの傍から離れた。
「えっ? 治った?」
距離を取りすこし経つと、さきほどまで感じていた猛烈な吐き気は消えていた。
怪訝な目で佐藤が俺を見る。
他のクラスメイトもアマンダも俺の勲章を見ると興味を失ったかのようにつまらなそうな顔をした。
その表情を見て、俺は決意する。結局、アマンダを支持したところで俺の扱いは変わらないと気付いたからだ。
「悪い、佐藤」
俺はアマンダの列から離れると、真ん中のローウェルの列へと近づいた。
「ほう、星一つの割には冷静な判断が出来るようだな」
アマンダから鞍替えしたように見えたのだろう。ローウェルの機嫌よさげな声が聞こえた。
少なくともさきほどのアマンダの視線からは良く扱われないであろうことを察した俺は、ホッと息を吐き列に加わろうとするのだが……。
「ぐっ……」
腹部に激痛が走り、その場に膝をついてしまう。
「なん……だよ……これ?」
この一ヶ月の訓練の中でもここまで強烈な痛みを感じたことはない。
俺は激痛に耐え、這いながら列に加わろうとするのだが、
「ふん、無様な」
ローウェルは虫を見るように俺を見下した。
段々と意識が遠のいていく。激痛が酷くなり、思考が混濁し始める。
ローウェルが俺を罵倒する声が聞こえ、周囲はクスクスと笑っている。
無様と思われようと、自分の目的を果たすためにはローウェルにつくしかない。
痛みがひどすぎて麻痺しているのか、自分が今何をしているのかすらわからなくなった。
やがて限界が訪れ、力尽きる寸前で、
『…………では私が、その召喚者をもらいますね』
最後にその言葉を聞くと、俺は完全に意識を失った。