クラス召喚
貴族たちが見守る中、王候補の三人は壇上を降りて用意された椅子へと腰かけた。
これからこの三人で王位を争うわけだが、それを始める前に一つまだやらなければならないことが残っている。
「鈴木、お前どっちに付く?」
一緒に召喚されたクラスメイトの佐藤が話し掛けてきた。
どうやら、さきほどのオリヴィアの発言で、彼女を選択肢から外したらしい。
この王選は彼ら王候補と俺たち召喚者が組んで進めることになっているので、オリヴィアは人を引き込むのに苦労するだろう。
佐藤の格好は召喚された時のブレザー姿だが、これは俺たちも同じ。
この世界に来てから一ヶ月、普段は訓練用の服を着ていた俺たちだが、国の重鎮が揃うこの場において、俺たちが召喚者であると国の人々に覚えてもらうためだ。
「俺は……勝てる方がいいな」
「そりゃそうだ」
そう答えると、佐藤は虚を突かれたのように目を大きく開き、笑って見せた。
「なんせ、俺たちの命運はあの三人にかかっているわけだしな」
一転して真剣な表情を作る佐藤。彼の胸元にはこの世界で渡された勲章が飾られていてそこには星が五つある。
俺は佐藤の勲章を見つめながら、なぜこうなったのか、原因を思い出していた。
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一瞬、部屋が光に包まれたかと思ったら気が付けば見たこともない場所にいた。
周囲には同じ教室にいた同級生が立っていて、困惑して周りをキョロキョロと見ている。
その数は全部で十五人。男が七人、女が八人だ。
さきほどまでは俺たちは教室で昼食を摂っていたはずだが、机も椅子もなければ弁当もなくなっている。身一つでどこかに移動させられたかのようだ。
「何これ? 手品かなにか?」
「ここ、どこだよ?」
建物の中なのか、蛍光灯ではない不思議な白い光が浮かび部屋を照らしている。
地面には魔法陣のような物が描かれていて、俺たちはその上に立っていた。
「静粛に。召喚者諸君」
バルコニーの手すりに右手を乗せ俺達に声を掛けてきたのは恰幅の良い男だった。
見た目は四十を超えているが、刺繍が入った派手な色の服を着ている。胸元には勲章が飾られており、星が四つ輝いていた。
「私はサントブルム王国の大臣のズンポイ。ここは君たちが住んでいた世界ではない」
突然告げられた言葉に何人かは胡散臭そうな者を見るような視線をズンポイへと送る。
「諸君らは、我が国が300年振りに行う儀式のために召喚されたのだ」
ズンポイはそう言うと、俺たちに説明を始めた。
内容を搔い摘むと、
・最近、諸外国の勢力が増している
・強力な血筋の家系が力を失っている
・異世界人は例外なく優れた能力を持つので重用する
・一ヶ月の訓練後に王候補を選ぶ儀式があるからそこで自分が支持する王を選ぶ
最初は乗り気ではなかった俺たちだが、元の世界では得られない待遇に何人かは段々と乗せられていった。
俺の他にクラスで人気者の佐藤大吾と、学校一の美少女と呼ばれている田中美恵は警戒しているのか険しい表情を崩さなかった。
だが、結局のところ帰る手段が見つからず、俺たちはズンポイの言うとおりにするしかなかった。
それから一ヶ月が過ぎた。
王国のサポートもあったお蔭か、俺を除くクラスメイトたちは次々と能力を開花させていった。
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