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【4巻3/10発売】聖女が来るから君を愛することはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?  作者: 宮之みやこ
第三部

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第173話 PM21: 20

◆――PM21: 20


「ハァ、まったく……!」


 おおきなためいきがきこえる。


 だれ? ……パパ?


「う……ん……」


 きこうとおもってうごいたら、だれかがハッといきをのむおとがした。


「パパ……?」


 いって、わたしはぱちっとめをあけた。


 ……ふしぎ、もうぜんぜんねむくないかも。いっぱいねたから?


 ねころがったまま、わたしはおへやのなかをみた。


 ……ここ、どこ?


 おへやのなかには、ろうそくがいっぱい。

 それから……すぐそばに、おとこのひとがいた。


「ひゃっ!」


 だれ! パパじゃない!


 わたしはいそいで、べっどのはんたいがわににげた。

 てであたまをかくしてぶるぶるしていると、ひくいこえがきこえる。


「起きたか」


 ……? あれ……?

 そのこえ……きいたことがある。


 わたしはどきどきしながら、おとこのひとをじぃっ……とみた。

 ちょっとくらくて、みえにくいけど、わたし、このひとしってるかも。


 えっと……たしか……。


「……らうる……おじさん?」


 わたしがいうと、おとこのひとはぴくっとした。


「……ほう。私の名前を覚えているのか」


 きかれて、わたしはこくんとうなずいた。


 だってこのおじさん……なんかいかあったことが、ある。

 ショコラはこのおじさんのこと、


『不審者よ! 何考えているかわかんないし、近づいちゃだめよ!』


 ってすごくきらってたけど、アイは、ほんとはそんなにきらいじゃないの。


 おじさん、かおはこわいんだけど……たまに、たすけてくれるから。

 おたんじょうびのときも、まいごになったアイを、たすけてくれたから……。

 それにだっこしてくれたとき、ちょっとパパににてるなあっておもったの。

 ママにきいたら、『エーメリー公爵ラウル様は、パパのお兄ちゃんなのよ。だからアイの伯父さんということね』っていってたから、おぼえてる。


「おじさん……ここ、どこ……?」


 わたしがきくと、おじさんのかおがすごくこわくなった。

 それは、まえのパパが、アイをぶつときのかおににていて。


 ! このひとは、こんなふうにきいちゃいけないひとだったかも!


 そうおもったら、からだがすっごくつめたくなった。


「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 たたかれる!


 わたしはいそいでぎゅっとちいさくなって、あたまをかばった。


「もうきかない! もうきかないから!」


 わたしがぶるぶるふるえていると、おじさんのこまったこえがきこえた。


「ち、ちがう」


 それからおおきなてが、わたしのあたまにふれてくる。わたしはびくっとした。


「っ……!」


 ぼんぼんっ、ぼんぼんっ。


「……っ……。…………?」


 ぼんぼんっ、ぼんぼんっ。


 ……こ、これ……あたま……たたかれてるの……?


 ぼんぼんっ、ぼんぼんっ。


 でも……べつにいたくないよ……。……もしかしてぶたれてるわけじゃ、ないの?


 どきどきしながらみてみると、おじさんはすごくこまったかおで、ずっとわたしのあたまをぼんぼんしていた。


「すまない。こんな風に怖がらせるつもりではなかったのだが……」


 そういってるときも、おかおにぎゅっとしわがいっぱいで、ちょっとこわい。


「ラウル様」


 そこに、ちがうこえ。


 あっ! さっき、アイにあまいおみずのませてくれたおにいちゃんだ。


 おにいちゃんはおへやのすみっこにいたみたいで、しずかにちかづいてくる。


「顔が怖いです。眉間に皺を寄せるのをおやめください」

「む……こうか……?」


 おじさんがムムム……といいながらがんばってるけど、ぎゃくにかおがぴくぴくして……それはそれでちょっとこわい。


「……」


 それをみたおにいちゃんは、なにもいわなくなっちゃった。

 かわりに、ふぅ、とちいさくいきをはいて、わたしのほうにやってきた。


「それから、子供を撫でる時はこうです」


 いって、おにいちゃんがわたしのあたまをなでる。


 なでなで……。そのては、ママみたいにやさしい。おにいちゃんは、て、ちょっとちいちゃいんだねぇ。


「む……そうやるのか……」


 こんどは、おじさんがアイのあたまをなでる。

 さっきのぼんぼんとちがって、こんどはちゃんとやさしい。


 …………もしかしてさっき、アイをなでてたの?

 あんなにぼんぼんしてたのに?


 あたまのなかに、はてながいっぱい。


 でもきいたら、おこられちゃうかも……。


 そうおもってたら、おじさんがアイのあたまからてをはなした。


「……それから、先ほども怒っていたわけじゃない。ただ……君にどう話すべきか、悩んでいた」


 ……おこってたわけじゃ、ないの?


 わたしがじぃっとみつめると、おじさんのかおがまたこわくなった。

 びくっとする。


「ラウル様、顔」

「ハッ……」


 おにいちゃんにいわれて、おじさんはごしごしとかおをこすった。


「……すまない。私は生まれつきこうなんだ。感情表現が苦手で、父にもよく『お前は面白みのない人間だな』とよく言われた。そのせいで母にもいらない苦労をかけた……」


 そういったおじさんのかおは、なんだかかなしそう。


「……おじさん、だいじょぶ?」


 アイがきくと、おじさんはちょっとだけ笑った。


「大丈夫だ。もう諦めている」


 ……ほんとうに……?


 わたしがじぃっとみていると、おじさんがつづけた。


「それより、すまない。私の力不足でヴァルター侯爵の暴走を止められなかった。先ほど闇魔法を払うための聖水を飲ませたが、もう気持ち悪くないか」


 さっきのんだおみず、せいすいだったの?

 だからあたまがすっきりしたのかな。


「うん、だいじょうぶだよ。それより……」


 ヴぁるたーこうしゃく……って、だれだっけ。


 わたしはいっしょうけんめい、おもいだそうとした。


 ヴぁるたー……ヴぁるたー……うーんと……。

 あっ!


 それからぴんとくる。


「さっき、おめんかぶってたひと!」


 ばしゃからおりたときに、しろいおめんをかぶってたひと。

 おめんでかおはみえなかったけど、おおきなからだとか、かみのけが、みたことあるなっておもってたの。


「そうだ。……よく覚えていたな。仮面をかぶっていたのに」

「うん。だって、あんなにふとったひと、ほかにしらないから。……あっ」


 わたしはあわててくちをおさえた。


「? どうした?」


 おじさんがふしぎそうにきいてくる。

 わたしはちょっときまずくなった。


 ……どうしよう、いってだいじょうぶかな。


「…………おじさん」

「なんだ」

「あの…………ママに、いわないって、やくそくしてくれる?」

「何やらよくわからんが……君が嫌なら、約束しよう。君のママには言わない」

「あのね……おみみかして」


 わたしがいうと、おじさんはちょっとぎょっとしたようだった。


「む……。そ、そんなに近づいてもいいのか?」


 っておにいちゃんにきいてる。


「ラウル様から近づくのは問題ですが、聖女様が言っているのなら問題ないかと」

「わ、わかった」


 それからこわいかおで、アイにおみみをちかづけてくる。なんでかしらないけど、ぜったいにわたしをみないようにしているみたい。


「あのね……」


 わたしはこしょこしょささやいた。


「ほんとは『ふとってる』って、ひとにいっちゃ、いけないんだよ……」


 まえにね、「あのひと、ふとってるねぇ」っていったら、こまったかおのママに「しー……」てされたの。

 それでね、ほかのひとの、たいけいのことをいうのは、あんまりよくないことなんだって。

 いわれたほうは、かなしいかもしれないんだって。だからおもってても、くちにださないでねってママにいわれたの。


「……ああ、なるほど」


 おじさんはうなずいた。


「確かに、人の外見についてあれこれ言うのは良くないことだ」


 う……そうだよね……。


「ま……ママにないしょにしてくれる?」


 わたしはしんぱいになって、もういっかいきいた。


「大丈夫だ。誰にも言わない。ここだけの秘密だ」


 ほっ。

 よかったあ……。


 きっとママはおこんないんだけど、それでも、アイがいっちゃったって、しられるのやだったの。


「すぐにでも君をここから逃がしてやりたいのだが、さすがにこの屋敷の中では分が悪い。せめて私が、君の父親ほど剣を使いこなせていたら……」


 きみのちち……。


「パパのこと?」


 わたしがきくと、おじさんはうなずいた。


「そうだ。君の父親――ユーリは、この国一番の剣の使い手だからな。……彼はすごい。あれだけの腕前がありながら、頭もとても賢い。何より、穏やかでいながら、ちゃんと人の上に立つ王の素質がある。……同じ父を持っていながら、私とは大違いだ」

「? そうなの?」

「ああ。……私には、何もないからな」


 そういったおじさんは、またちょっとさみしそうなかおをしていた。


「勉強も、剣術も、どれだけ頑張ってもせいぜい中の上。何より致命的な口下手で……王位継承戦に負けるのもしょうがないというものだ」

「ラウル様、それは」

「慰めはいらん。事実だ」

「……失礼いたしました」


 おにいちゃんがなにかいおうとしたけど、おじさんにとめられて、すぐにしずかになった。

 わたしはこまった。

 だって、おじさんのつかうことばはむずかしくて、ちんぷんかんぷんだったのだ。


 ちゅーのじょーってなに? おーいけーしょーせん……?

 どれもよくわかんないけど……。


「アイはおじさんのこと、きらいじゃないよ?」


 そういったら、「……ははっ」ってこえがきこえた。


「そうか。嫌いじゃない、か」


 ……あ。おじさん、わらってる。

 ずっとこわいかおだったけど、わらうとちょっと、パパみたいだね。

 アイ、そっちのほうがすきだなぁ。

 それに……。


「おじさん、なにもなくないよ。ちゃんとあるよ。つぼみ」

「……? つぼみ?」

「うん」


 わたしは、おじさんをじっとみた。

 じぃぃいっとみた。


 そしたらね――おじさんのからだがぽぅってひかって、おじさんのなかに、おはな、あるのがみえた。

 それはたてにながくって、くきに、いっぱいつぼみがくっついてる。

 らべんだーのおはなを、すっごくおおきくしたかんじ?


「しかも、もう、ちょっと、さきかけてるね」

「……? なんの話をしている?」

「あのね、ちょっとまっててね」


 わたしは、てをぱんってあわせた。


「よいしょっ!」


 それからぱっ! てゆびをひらくと――あ、よかったあ。

 おじさんのおはなが、わ~~~ってさいていたの。


「なん……!?」


 おじさんは、すごくびっくりしている。


「ラウル様!? どうされました!?」


 おにいちゃんがはしってくる。


「い、いや……! なんだこれは……!?」

「あのね! おはな、さいた!」


 わたしはうれしくなってにこにこした。


「アイの、〝さいのうかいか〟だよ」


 もう、なんかいもつかったから、アイもこのことば、おぼえたよ。


「〝才能開花〟……? もしや、聖女の使う〝スキル〟のことか……!?」

「うん」


 わたしがうなずくと、おじさんも、おにいちゃんも、びっくりしたみたいだった。


「ラウル様、まさか……!?」

「ああ、どうやらそのまさかのようだ。今までぼんやりとしていたものが、今ははっきり見える! これは……!」

「あのね、おにいちゃんのさいのうはね――……」


 そのときだった。


 おにいちゃんがとつぜん、ハッとしたかおになる。


「何か来ます!」


 さけんだおにいちゃんは、バルコニーのほうをみていた。

 わたしとおじさんも、バルコニーをみた。

 バルコニーにつづくまどのむこうには――おおきなおおきなくろいかげがあった。

 そのおおきなかげをみて、わたしはさけんだ。


「ショコラ!」

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聖女が来るから君を愛することはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖女が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?
― 新着の感想 ―
口下手コミュ障のいい人…。 助けに来てくれていたのか。 アイの力でコミュ障治るか果たして。 …筆談とかはダメだったんか? しかし、大丈夫か。ショコラ、誤解しない?
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